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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第三部 “中つ国動乱”編
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【第三部】第三十七章 白虎の聖域にて②

――“中つ国・西・白虎の聖域”――



「青龍をさらったと思われる集団には俺達も借りがある。――三年前の“和国人妖戦争”の発端となった襲撃事件の加害者が奴らで、被害者が俺達“御使いの一族”と、共に暮らしていた妖獣達だからだ」

「何!? お前達は青龍をさらった奴らに心当たりがあるのか!?」

「何故今まで黙っておった!! それで、奴らは今どこにいる!?」

「お、落ち着いてくれ! 順を追って話そうと思ってたんだ! 黙ってた訳じゃない!!」


 神楽の言葉に場がざわつく。必死に迫る白虎と朱雀をなだめて神楽は話を続けた。


「奴らは皆、怪しい仮面をつけている。それと、“妖獣を封印することのできる石”を持っている。また、奴らの中には、特に強力な力を持った奴がいる。恐らくはそいつが青龍をさらった実行犯だ」

「どの様な奴なのだ?」

「“相手の門を閉じて力の供給を断てる”。それと、“妖獣を身の内に取り込む”ことも。――もしかしたら、“妖獣の封印石”も奴の力を応用した物かもしれないな。俺達も奴のその“封印”ともいえる能力に太刀打ちできなくて敗れた。恐らくは青龍も――」

「馬鹿な! 人間ごときの扱える能力ではないぞ!?」


 話を聞いた白虎や朱雀達の反応も当然だ。それ程常識外で異常な能力なのだ。――だからこそ、神楽達も過去に敗れた。


「事実だ。実際に戦った俺達が保証する。――って、敗けた俺達が言うのも情けないけどな」

「本当にそいつは人間なのか?」

「人間の姿はしていたが――いや」


 神楽は、ふと蘇る記憶に意識を向けた。老成した、他人を落ち着かせる懐かしい声だ。


『わからん……他に混じりけはあるが、儂らと同じ妖獣の気配も感じる』


 これは“(ミズチ)”だ。誰に聞かなくても、神楽は自然とそう確信できた。


「“蛟”が言っていた。混じりけがあると。妖獣の気配も感じると」

「俺達と同じ気配を持つ人間だと? ――ならば、“半妖”か?」

「そこまでは分からないが……そうかもしれないな」


 白虎達が黙り込む。今までの情報を飲み込んでいるのだろう。神楽は少し間を置いた。



「なるほどのぅ……。どのようにしてその様な強大な力を得たのかは分からぬが、一筋縄ではいかぬ相手のようじゃ。青龍が遅れを取ったのも無理はなかろうよ」


 朱雀は一旦そこで言葉を区切り――


「こちらからも情報提供をしようか。余は事後に“青龍の聖域”を確認してきた。そこには、巨大な妖獣同士の戦闘跡があったわ。――どうやら青龍が戦ったのは、人間だけではないようじゃ」

「人間だけではない? その跡は確かに妖獣のものだったのか?」

「断定はできんが恐らくな。――それも、あの跡は、青龍と同じく龍族のものかもしれん。青龍の胴体が地に刻んだであろう跡と形状が似ておったのじゃ」

「何? それは俺も初めて聞いたぞ!」

「そうだったかのぅ。言い忘れておったのかもしれぬ。許せ」


 朱雀からの有難い情報提供だ。ということは――。神楽は思考をめぐらせる。


「“妖獣を操って戦わせている”?」

「うむ。余らもその様に考えておる。――それか、其方らの様に、妖獣が自らの意思で共にあるのかもしれぬがのぅ」

「冗談はよせ。自ら我らに牙を向く妖獣はおらぬだろう」

「可能性の話をしたまでじゃよ」


 妖獣が自らの意思で奴らと共にあるなんて、神楽は欠片も信じちゃいない。しかし、奴らが“妖獣を操って戦わせている”。これはあるんじゃないだろうか。でもどうやって……いや、そうか!


「“妖獣を封印した石”に何らかの細工をして支配下に置いている。そこから妖獣を出して命令通りに戦わせているって考えれば繋がるな」

「きっとそうにゃよ! ご主人、()えてるにゃ!」

不埒者(ふらちもの)でありんす!」

「待て待て。朱雀の言葉を借りる訳じゃないが、まだ可能性の一つだ」

「ええ。でも、いい着眼点だと思います」

「しかしそうなると、奴らは“龍族”を支配下に置いていたのかのぅ。――っ! ――まさか!!」


 青姫が何かに気付いた様に顔を青褪(あおざ)めさせる。神楽も“龍族”と聞いて思い当たることがあった。――いや、“忘れてはならない”ことがあった。


「――“蛟”か。いや、これも可能性の話だが」

「――っ! あいつら!!」


 蛟を奴らの支配下に置かれている。まだ可能性だが、そう考えただけで琥珀が激怒してしまう。無意識だろうが、<闘気解放>してしまっている。白虎の後ろに並ぶ妖虎達が色めき立った。


「琥珀! 抑えろ!!」

「――っ! ごめんなさいにゃ……」


 神楽に怒鳴られ、ようやく琥珀は我に返る。周りを見て事態を察し、慌てて<闘気解放>を解いた。


「中々見事な“闘気”だった。俺達の仲間に加えたいくらいだ」


 少し気まずくなった空気を白虎が気を遣って和ませてくれる。――いや、半分は本気なのかもしれないな。ともかく、神楽は話を続けることにした。


「推測ではあるけど、点と点が繋がった気がする。朱雀、情報提供ありがとな」

「いや、こちらも有益な情報を聞いたからその礼じゃ。――だが、肝心な情報が足りぬ。“奴らの居場所”に心当たりは無いのか?」

「そこが本題だな。地図はあったかな……」

「持ってますよ」



 エーリッヒが荷物から地図を取り出し、近くにある平たい岩場の上に広げてくれた。皆が地図の周りに集まるのを確認すると、神楽は説明を始めた。



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