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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第三部 “中つ国動乱”編
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【第三部】第三十四章 朱雀との会話

――西の街道――



「まずは急に襲い掛かった非礼を詫びよう。――なに、ちと其方らを賊の一味と勘違いしたのじゃ」


 朱雀がどこからか扇子を取り出し、口元に当てて優雅に笑いながら言う。――全然悪いと思ってなさそうだった。しかし、そんなことよりも、神楽には聞き捨てならないことがあった。


「いやいやいや。賊ってアレか? 青龍をさらった奴らと間違えたってことか? 冗談じゃないぞ!」


 青龍をさらった“マスカレイド”。奴らを追い掛けて青龍を取り戻そうとしている神楽達にとって、これ程不名誉なことはないだろう。先の青姫同様、神楽は全力で否定した。


「むしろ俺達は青龍を取り戻すために奴らを追っているんだ。そもそもなぜ――」

(あい)分かった。だから勘違いを詫びたであろう? 其方らの事情は、そこの青姫からとく聞いておる。まずは、其方らも名乗ってはくれぬか?」


 憤る神楽の言を中断させ、朱雀が神楽達に名乗りを求める。神楽達は思うところはあれど、各自自己紹介していった。


「ふむふむ。一度には全員を覚え切れぬが、――其方が青姫の想い人か?」

「そ、そうはっきり言われるとこそばゆいんだが……」

「うむ! そうじゃぞ! 素敵じゃろう?」

「離れるでありんす!」


 照れている神楽に抱き付く青姫を、稲姫が引っぺがしにかかっている。神楽達にとっては見慣れた光景だが、それを見た朱雀が目を見開いた。


「本当に妖獣と人間が仲(むつ)まじくしておるのじゃな。にわかには信じがたかったのじゃが……」

「素敵ですの!」


 朱雀の隣に“鳥人”の女の子が並び、喜んで神楽達を見ていた。手の代わりに羽。足は鉤爪。だが、それ以外は人間の少女だった。見たことのない妖獣に、神楽達の視線が集まる。


 皆に見つめられ鳥人の少女がきょとんと首をかしげている。気を利かせて朱雀がフォローに入ってくれた。


「これ、名乗らんか」

「あ、そういうことですの!? “ピノ”ですの!」

「ピノは神界からこちらに来た“鳥人(ハーピー)”での。訳あって余が保護しておる」

「そうだったんだな。よろしくな」

「よろしくですの!」


 元気のいい少女だった。愛嬌もある。彼女となら、すぐに仲良くなれそうだなと神楽は頬を緩ませるのだった。


「またご主人が女の子をロックしてるにゃ」

「……危険」


 琥珀やレインから冷たい視線が注がれていることに気まずくなり、神楽はコホンと咳払いして話を再開した。



「青姫はどこまで説明したのかな? 俺は何を話せばいい?」

「聞きたいことは色々あるが、そうじゃな……ここではなんじゃ。白虎の誤解も解いておいた方がよいじゃろうし、ここから西にある“白虎の聖域”に行かぬか?」


 朱雀からの提案だ。場所を移して落ち着いた場所で話をするのは歓迎だが、ここから西だと目的地である“東の洞窟”とは反対方向だ。大幅なタイムロスとなるだろう。


 しかし、そもそも人間と妖獣の戦争を回避するために青龍を奪還しようとしているのだ。ここで朱雀達と話し、戦争を思いとどまってもらえるなら、これこそ最優先ではないか。


 神楽は朱雀の提案に頷いた。


「わかった。白虎の管理する地に無断で入り込んだお詫びもしたいしな」

「では決まりじゃな。馬車で今から向かうのでは時間がかかろう。神楽よ、其方と共に行く者を数人選べ。余が運んでやる」


 朱雀は尊大に見えて、細かな気遣いができるみたいだ。流石に全員は無理なので、神楽は同行してもらうメンバーの名を数人挙げることにした。


「エーリッヒさん、琥珀、青姫。一緒に来てくれるか?」

「うん。交渉事なら僕もいた方がいいかなと思ってたんだ」

「もちろんにゃ!」

「うむ! わらわは飛べるから、運んでもらわなくても結構じゃ」


 皆の承諾が得られたので、このメンバーで向かうことにする。


「主様主様。わっちもついて行きたいでありんす」


 神楽は稲姫から袖をくいくい引っ張られた。

 

「人数的に大丈夫かな……朱雀、どうだろう?」

「全部で四人か……皆、それ程重そうではないし、大丈夫じゃろう」


 朱雀の承諾が得られたので稲姫も同行することに。


「ではラルフさん、レインさん。申し訳ないですが、ここで留守番お願いできますか?」

「まぁ、こうなると思ってたぜ。わかった」

「……むぅ。私もついて行きたかった」


 ラルフがため息混じりに、レインが唇を(とが)らせて不満げに言う。だが、さすがにこれ以上は朱雀も運べなさそうなので、我慢してもらうほかなかった。神楽は二人に礼を言い、同行するメンバーを連れて朱雀の前に並んだ。


「では、早速行くとするかのぅ」


 朱雀の身体が眩い光に包まれる。光は膨らみ、やがて、最初に会った時と同様、巨大な鳥の姿が現れた。当初は身体に炎を(まと)っていたように思うが、今は特に纏っていない。どうやら、意識的に切り替えられるようだ。――怒らせないよう注意しよう。


「背に乗るがいい」


 朱雀に言われるがまま、神楽達は朱雀の背に乗った。毛がふさふさで、触っていると気持ちいい。


「では飛ぶぞ。しっかりつかまっておれ」


 朱雀が空に飛び立ち、青姫とピノも続く。


「おお!」

「こ、怖いでありんす!」

「にゃはは! 楽しいにゃ!」

「まさか空を飛べる時が来るなんて! 二人に自慢できるよ!」


 初めての空を飛ぶ感覚に興奮する四人。――稲姫はぎゅっと目をつむり、神楽の腰に両腕を回してしっかりとホールドしていたが。



 そうして、神楽達は“白虎の聖域”を目指し飛び立った。



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