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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第三部 “中つ国動乱”編
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【第三部】第二十六章 青龍拉致時の状況

――“中つ国”人界西部・隠れ里・春と楓の家――



「異常に気付いたのはうちで一緒に暮らしてる妖獣だったの。――って言っても、その時は東の青龍の聖域付近にいたんだけどね」

「どうしてそんなところに?」


 そんなところに何の用がと思い神楽が尋ねると、楓は、しら~っとした視線を神楽に向ける。


「“神璽”を探してたのよ。お兄ちゃん、青姫ちゃんに探すよう頼んでたでしょ? 青姫ちゃんから話を聞いて、村の有志の人達が今も探してくれてるのよ」

「お、おぅ。そうだったか……」


 まさか、自分の過去の発言がここまで人を動かしてるとは思ってなかった神楽は少し引いてしまう。確かに、シーラーに対抗する手段として蛟から提案されたから青姫にお願いしていたみたいだし、大事なことだったんだろう。


 青姫の方を見ると、うんうんと嬉し気に頷いている。てっきり青姫だけが動いているのだと思っていたけど、他の者とも協力して上手くやっていたみたいだ。――今度、何かお礼しないとな。



「話を続けるね。それで、その妖獣――彼は東の青龍の聖域付近を探っていたみたいなんだけど、夜、聖域から大きな戦闘音が聞こえてきたんだって」

「それが、俺達の里を襲った奴らと青龍の戦闘音?」

「うん。恐る恐る聖域の方に様子を見に向かったらしいんだけど、道中、青龍の眷属達の死体が散乱しているのを見て怖くなって、聖域から少し離れた草むらに隠れて様子を(うかが)ってたんだって」

「よく逃げなかったな」


 直接聖域に行かないまでも、近くに隠れ潜むのも怖かっただろうに。神楽はその妖獣の勇気を称賛する。


「彼はうちの諜報員で、気配を消すのが得意だったみたい。ともかく、そのまま彼が隠れ潜んで聖域の様子を探ってくれていたおかげで、青龍を襲撃した奴らの正体がわかったのよ」

「戦闘音が止んで聖域から出てきたのが、例の、俺らの里を襲った奴らだったと? 仮面でも被ってたのか?」

「うん。その通り。――お兄ちゃん、せっかく私が言おうと思ってたのに……」


 あ、何だか楓がふてくされてしまっている! 言わせてあげればよかったな。神楽は楓をなだめつつ続きを促した。


「お兄ちゃんの言った通り、聖域から出てきたのは仮面をつけた集団でね。――しかもその中に、長老や団長の仇の奴もいたみたいなの」

「どうしてそいつだとわかったんだ?」

「あの時の戦い――奴らが長老と団長を殺して、お兄ちゃんと稲姫ちゃん、蛟さんを捕らえていった戦いは、団長の指示で暗部が何人か張り付いて見てたのよ。その暗部の一人が彼だったの」

「なるほど……それで知っていたのか。奴の事を」


 あの時の戦いを見ていたのなら奴――シーラーのことを知っていてもおかしくないだろう。団長は最悪の事態も見越して暗部を配置していたということだ。流石だな。



「じゃあ、青龍はそいつらに連れられていったんだな?」

「いえ、そうじゃないの。――ううん。そうなんだけど、何て言えばいいか……。お兄ちゃん、“妖獣を封じ込める石”って知ってる?」


 楓の要領を得ない発言に疑問を感じながらも、神楽は聞かれたことについて考えてみる。


「そんな石……。――あっ! あったな!」

「わっちが閉じ込められた石でありんす!」


 そんな石は知らないと答えようとしたところ、神楽には一つだけ思い当たることがあった。稲姫も同じことを思いついたようだ。――というか、その稲姫こそが石に閉じ込められた張本人だった。


 そう。エクスプローラー養成学校にいた頃、俺達は仮面の集団に襲われた。奴らの目的は稲姫だったようで、稲姫は奴らの指揮官の持つ薄青い石に取り込まれ、危うく連れ去られるところだったのだ。


「あ! うちが砕いた石にゃ?」

「そうそう。あの時は助かったよ」


 琥珀が言うように、その窮地を救ってくれたのは琥珀だった。稲姫の目ざめを感知して俺達のところに言葉通り駆け付けた琥珀は、稲姫が取り込まれた石を蹴り砕いてくれたのだった。


「そう言えばあの時、稲姫が中にいるって知ってたのか?」

「遠目に見て気付いてたにゃ」

「助けてくれてありがとうござりんした琥珀ちゃん。――でも、わっちまで蹴り砕かれてたらと思うとゾッとするでありんすよ……」


 稲姫があの時の恐怖を思い出してか、ぷるぷると震える。


「にゃはは! 結果オーライにゃ! それに、なんとなく大丈夫そうな気がしてたにゃ!」


 琥珀が楽しそうに笑って言うが、稲姫はちょっと不満そうだ。頬をぷっくり膨らませていた。


「知ってるなら話が早いわね。――青龍は、あいつの持つ大きな石の中に閉じ込められて運ばれたみたいなの。あいつが上機嫌に『青龍がようやく手に入った』と石を掲げながら言うのを彼が聞いたみたいだから、間違いないでしょう」

「スゴいぞ楓! めちゃくちゃ有力な情報じゃないか!」


 思った以上の手掛かりを手に入れて、神楽が思わず歓喜の声を上げる。楓もドヤ顔だ。――実際に成果をあげたのはその場を見ていた妖獣な訳だが、細かいことは気にしない。


「で、その後奴らはどこに行ったんだ?」

「それなんだけどね……」


 楓は急に顔を暗くして、言い辛そうに告げた。


「彼、奴らを途中で見失ったみたいなの」



 神楽は目の前が真っ暗になった。



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