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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第三部 “中つ国動乱”編
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【第三部】第三章 雷牙と共に

――ガラート村――



「あ! 稲姫ちゃん! 琥珀ちゃん!」

「――わわっ!」

「みんな、元気にしてたにゃ?」


 ガラート村に馬車で乗り付け降りると、村の子供達が駆け寄ってきた。稲姫と琥珀がワイワイと囲まれている。稲姫はしっぽをつかまれそうで、ふりふりしてかわしている。



「アレン。少し見ぬ間に随分と大所帯になったな」

「雷牙。元気そうで何よりだ」


 狼の形態で雷牙が近寄って来ていた。雷牙は初めて見る他の皆を見回す。


「ふむ……我を見ても驚かないか。其方と同じく、妖獣と共にある者達なのだな」

「ええ。うちには青姫がいましたからね」

「慣れっこだな」

「……仲間」

「ふむ。そなたが雷牙か。――なるほど、なるほど。確かに、頼りになりそうじゃな」


 雷牙に“青ノ翼”の面々と青姫が挨拶をする。雷牙は光に包まれると人に化身し、皆と握手を交わした。続いて、馬車から残りの二人が赤ん坊を抱えて降りて来た。



「これは……何とも珍しい。“幻獣”の方々か?」

「ああ。“二角獣”のルーヴィアルだ。縁あってアレン達と行動を共にしている」

「私は“一角獣”のサンクエラ。――この子は、スペルークスよ。よろしくね」


 雷牙が目を見開き三人を見る。やはり雷牙からしても、彼らは伝説上の存在なのだろう。“青ノ翼”や青姫に対してしたように、握手を交わした。



「まずは旅の労を(ねぎら)おう。――我の家まで来てくれ」


 アレン達は雷牙に付いて家へと向かった。


――雷牙の家――



「雷牙。家あったんだな」

「うむ。村の者達が、善意で用意してくれてな」


 雷牙の家はこの村の他の民家同様の造りをしていた。部下の妖狼達も一緒に休めるようにか、結構広めに造られている。今もチラホラと起き上がり、こちらに寄ってきていた。



「では、そこらに座っていてくれ。茶を用意しよう」


 レインが手伝いを申し出てくれて、雷牙と一緒に皆の分の茶と茶請けを用意してくれた。皆、感謝をして一服つき、場が温まってきた頃――


「それで、今回はどの様な要件で立ち寄ったのだ? ただの観光という訳でも無さそうだが――」

「ああ。実は――」


 アレンは事の経緯を雷牙に説明した。



「ふむ……馬鹿げた話よ。何だ、その“マスカレイド”とかいう輩は。私欲で戦乱を引き起こすなど、愚か極まりない!」

「そうだな。もういつ戦争に入ってもおかしくないだろう。だから俺達は、急いで“中つ国”の隠れ里にいる楓達――同胞と合流するつもりだ」

「アレン達はどちらに付くのだ?」


 雷牙からふと疑問が発せられた。他の皆もアレンを見ている。――そうか、それは話してなかったな。


「人間と妖獣、どちらにも付かないよ。――言っただろ? 俺や一族の在り方を」

「うむ。“妖獣と人間の共存”だったな。だが、戦争に加わるのであれば、立ち位置を決めねばなるまいよ」

「俺達は、“戦争の原因を排除する”ために動く。今回の場合、人間側――“マスカレイド”が青龍を襲って拉致したことが原因だから、その奪還になるな」

「ついに奴らと戦えるにゃね」


 琥珀が意気込む。<闘気解放>しなくても、戦意がオーラになって具現化しそうなくらいの気迫だ。


「あいつらは絶対許さないでありんす!」

「うむ! ――今度こそ、しでかしたことのつけを、払わせてくれようぞ!!」


 稲姫と青姫も負けてはいない。“和国”で因縁のあるアレン達にとって、“マスカレイド”は仇敵なのだから。



「ならば、我も行こう」

「え? いや、それは悪いよ。戦争になるんだぞ? 流石に巻き込めない」


 “青ノ翼”やルーヴィアル達を巻き込んでおいて、何を今更という感じではあるが、事が事だけに「うん、ありがとう」と即応できることでもない。


「なに、其方達にはこの村を救ってもらった恩義もある。――『其方達が困った時には駆け付ける』と言っておいたであろう? 今こそ、その時よ」

「それは凄く有難いが……いいのか? “白巌”とかは大人しくしていられるのか?」


 雷牙達が抜けたら、村が困ったことにならないだろうか。


「奴もあれ以来、大人しくしておる。たまに村に来ては、子供達とじゃれあってるくらいだ」

「あいつが……」

「死んでも懲りなさそうだったのに、どうしたんでありんしょうね?」


 琥珀と稲姫が意外そうに驚いている。――稲姫の白巌に対する評価は相変わらず辛辣だった。


「それに、我らは眷属間で“共感覚”がある。この村に眷属をいくらか残す。何か異常があればすぐに知れようぞ」

「それは便利な力だな。<念話>みたいなもんか」


 それならとアレンは受け入れる。雷牙に手を差し出した。


「なら――すまないが、雷牙。俺達に力を貸してくれ」

「もちろんだ。気兼ねせず我らの力を使ってくれ」


 雷牙がアレンの手を取り握手を交わした。



 そうして、雷牙の同行が決まる。眷属の一部を引き連れ、一緒に“中つ国”に向かうことになった。



「買い出しもすみました。――まだ日もありますし、皆が良ければ早速出ましょうか」

「雷牙達は準備大丈夫か?」

「問題ない。それ程持って行くものも無いからな」


 雷牙は村の人達に挨拶をすませると名残り惜しまれながらも送り出され、馬車に乗り込んだ。他の眷属達は周囲の警戒をしながら随行するとのことだ。有難い申し出だった。



 そうして、アレン達はガラート村を出立した。そして、更に東を目指すのだった。



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