【第三部】幕間 青龍への襲来
【時を遡ることしばし】
――“中つ国”東・“青龍の聖域”――
「来たか……」
「やぁ、待たせちゃったかな、ごめんね。――君が“青龍”で間違いないよね?」
“中つ国”に存在する妖獣達の中でも、特に強大な力を持つ四体は“四神獣”と呼ばれる。
“東の青龍”
“西の白虎”
“南の朱雀”
“北の玄武”
“中つ国”に暮らす妖獣達にとって、“守護神”として崇められている存在である。
新暦786~789年に人間と妖獣の間で大きな戦争――“中つ国人妖戦争”があり、以来、不要な争いを避けるため、人間と妖獣の間で不可侵の約定が定められた。
以来、約定を違えた者は、妖獣、人間問わず、厳しく罰せられてきた。この聖域――青龍の住処まで踏み込んだ人間は、誰一人としていなかった。
◆
「如何にも。我が青龍だ。――して、貴様らは何故約定を破り、ここに参った?」
「君をもらい受けに来た! ――で、伝わるかな?」
青龍に相対する少年は余裕の態度を崩さない。その少年だけでなく、周りの者達も仮面をつけており、胡散臭いことこの上ない。少年の馬鹿にした返答も相まり、青龍の悪かった機嫌が、更に低下し底を割った。
「余程死にたいと見える。――確かに貴様は、それなりに力はある様だが、我には及ばん。力の差が理解出来んか?」
「君に僕の何がわかるっていうのかな? ――それに、戦力はこれだけじゃないんだよね」
少年が手を上げて合図すると、取り巻きの一人が、赤い大きな石を少年に差し出す。少年は石を手に取り――
「これは、“封印石”って言ってね。君達妖獣を取り込んでおく、“檻”の様なものさ。これは特にうちの“博士”の自信作でね。――まぁ、見てみてよ」
少年が何事かを呟くと、“赤い封印石”が輝き、中から“巨大な龍”が飛び出した。
◆
「――“和国の龍”か。憐れなものよ。こ奴らの傀儡に成り下がったか」
「“支配”するのにだいぶ苦労したよ。でもその甲斐あって、僕の一番のお気に入りさ!」
少年は、ぽんぽんと龍の背を手で叩き、自慢げだ。――それを見た青龍が、おもむろに立ち上がった。
「我の眷属を汚すか。――ここまでの侮辱を受けるのは、何百年振りか……よい、相手になろう」
「そうこなくっちゃ! ――せいぜい楽しませてよね」
激怒した青龍が大音声の咆哮を上げる。少年達仮面の集団――そして“和国の龍”との激闘が繰り広げられた。




