【第二部】第六十章 仲間との合流
――“セラーレの森”・南側出口――
当初入ってきた場所からはズレているが、森を抜け南側に出られた。既に追っ手は一人もおらず、このまま逃げ切れそうだ。
「アレン、どっちだ?」
「え~っと……とにかく真っ直ぐだ! 細かい方向転換は、追って伝えるから!」
当初森に来た時はだいぶ暗くなっていたので、あまり地理に自信は無いが、とにかく南に行けばいいだろう。今はとにかく、森から距離を取りたい。
「主様。レイン達に<念話>で連絡を取ってみたらどうでありんしょう?」
「稲姫、天才か……」
アレンが感覚で指示していることに気付いたのだろう。稲姫がフォローしてくれる。<念話>のことを失念していた。早速、指輪型のアーティファクトを起動して<念話>魔法を発動し、レインに呼び掛ける。
◆
(レインさん)
(……アレン! 無事なのね!? ――みんな、アレンから!)
(アレン! 大丈夫!? ルーヴィアルは!?)
(おお! 無事だったか、アレン!)
(心配してたよ。今どこにいるんだい?)
(ご主人! 怪我はないにゃ!?)
(我が君、早く会いたいのじゃ!)
レインが皆に念話を繋げたのだろう。一気にやかましくなる。
(ああ! 俺もルーヴィアルも稲姫も、皆無事だ!)
(ああ。一時は死ぬかと思ったがな。――とにかく、大勝利だ!!)
(馬が夢に出そうでありんす……)
アレンもルーヴィアルと稲姫に念話を繋げる。これで全員揃った。
(今俺達は、“セラーレの森”を南から出て、そのまま南下してってる。みんなは今どこに?)
(僕らも馬車で南下してるところだよ。じゃあ、待ち合わせしようか)
(追っ手はまいてるはずだけど、まだ心配だ。もう少し離れた場所で合流したい。そっちで場所を指示してください)
アレン達は、エーリッヒ達の誘導に従い、合流場所へ向かった。
◆
「ルーヴィアル!!」
「サンクエラ!!」
二人が抱き合い、再会を喜ぶ。アレンの方でも――
「我が君! 心配だったのじゃ!!」
「――わぷっ!」
「は、離れるでありんす!!」
「にゃはは!! ご主人達が無事でよかったにゃ!」
例の如くアレンは青姫に抱き付かれ、顔に胸を押し付けられる。そして、稲姫が全力で引き剥がしにかかる。皆にも怪我は無さそうで、アレンは安堵した。
「赤ん坊も無事か?」
「もちろんにゃ!!」
赤ん坊は琥珀の腕の中で、キャッキャと喜んでいた。ホームに着くまでは、何かあっても大丈夫なように、琥珀が抱いて帰るとのことだ。サンクエラは盲目だから、やはりここは琥珀に任せた方がいいだろう。
「アレン。お前、すげぇ槍持ってるな」
「……凄い力を感じる」
「ふふふ……今回の戦利品! “神槍グングニル”です!!」
アレンがドヤ顔で槍を掲げて見せる。
「お、俺にも持たせてくれよ」
「いいですよ」
ラルフがソワソワしてるので持たせてあげた。
「――お、おぉ!? 持ってるだけで力が湧いて来るぞ!?」
「装備者に<身体能力強化>が付与され、目標を定めて投擲すれば“必中”! しかも、“一角獣”の結界すらたやすくやぶる破格の貫通力!! これは名品ですよ!」
「それは“神託武器”だからな」
アレンが“神槍グングニル”をラルフに自慢していると、ルーヴィアルとサンクエラが近寄ってきた。
「この槍を防ぐなんて……あなた達が本当に無事でよかったわ」
「サンクエラのおかげだよ」
「え?」
アレンはサンクエラに事の経緯を説明する。サンクエラとの“信頼”が築けていたことで<結界>を使える様になり、ジェニスの“神槍グングニル投擲”を防げたのだと。
「私の力が役に立ったのね! よかった!!」
「うぅむ……サンクエラに手を出されたような、複雑な気分だ……」
「し、“信頼”を築いただけだよ! それを言ったら、ルーヴィアルとだって!」
ルーヴィアルとの間にも信頼が築けていたので、<侵食>と<複製>を使って“神槍グングニル”の模倣品を作って“一角獣”達を撃退したのだと伝える。
「そうだったな。では、恋愛感情以外でもいいということだな……?」
「そうそう! ……浮気じゃないからな!?」
ようやくルーヴィアルも納得してくれた。
「水を差す様で申し訳無いけど、続きはホームに戻ってからにしよう。追っ手はいなさそうだけど、念には念を入れよう」
「俺達もいいか?」
「ええ、今更ですよ? 僕達しかいませんし、気にせず来てください」
「ありがとう!」
ルーヴィアルとサンクエラがエーリッヒに頭を下げる。よしてくださいと慌てるエーリッヒがどこか珍しく、皆で笑い合った。
――その後は幸いに追っ手なども無く、皆で無事に“青ノ翼”ホームへと帰還するのだった。




