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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第二部】“旅立ち”編
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【第二部】第五十八章 対“一角獣”戦 ②

――“セラーレの森”・結界領域中部――



「貴様ら! 断じて許さん!!」


 “神槍グングニル”を構えたジェニスがアレンに襲い掛かってくる。


「アレン! 退くぞ! “ソレ”とまともにやり合うな!!」

「わかった!」


 アレンは<肉体活性>で跳ね上げた身体能力を活かしてジェニスの槍を躱し、跳ね飛ばされていた剣を拾う。そして、軽やかに跳躍するとルーヴィアルに飛び乗った。



「待て! 逃げるのか!!」

「二人とも、しっかり捕まっていろ!!」


 ルーヴィアルが急発進してジェニスから距離を取る。南に進路を取り、退却する算段だ。ルーヴィアルが生み出していた<一角獣(ユニコーン)シャドー>三体も追随(ついずい)した。


「逃がすと思うか!!」


 ジェニスがルーヴィアル達に向け、“神槍グングニル”を振りかぶった。



「あ奴め!! 結局使うのではないか!!」

「どうする!! アレ、絶対ヤバいぞ!!」

「アレは“神槍グングニル”! 投擲されれば“必中”で避けることは叶わん!!」


 全速で急離脱しつつ、ルーヴィアルが答える。“必中”ってどんなチートだよ! アレンと稲姫は戦慄(せんりつ)する。


「俺の<一角獣シャドー>で結界の三重壁を張る! ――だが、それでも勢いを殺し切ることは出来んだろう!!」

「わっちの<魔素操作>でも、アレは無理でありんす!!」


 “一角獣”三体分の結界を抜けるってどんな貫通力だ! それと、稲姫の言う通り、アレは物理だから<魔素操作>じゃどうしようもない! 


「ぬぁぁ~っ!」


 アレンは頭をかきむしりつつ――ふと、あることを思いつく。


「ルーヴィアル! 結界がもっとあれば大丈夫かもしれないんだな!?」

「ああ! おそらくは! だが、俺には三体分が限度だ!!」


 そうか。なら――“()()との信頼”が築けてることに賭けるしかない!!



 ジェニスは“神槍グングニル”を振りかぶると、そのまま投擲の構えを取り――全力を込めた。“神槍グングニル”の持つ<身体能力強化>の恩恵を受け、莫大な力がそこに集中する。


 溢れる力の波動で周囲に葉擦れの音が鳴り響く。



「決して逃がさん! ――喰らえっ!!」


――そして、全身全霊の一投が放たれた。



 放たれた“神槍グングニル”は、アレン達との間にある木々や岩などの障害物を(ことごと)く貫通し、追尾しながら急迫した。


 ルーヴィアルが三体の<一角獣シャドー>を自分の背後に一直線に並べて<黒い結界>を重ねて展開した。したのだが――


「ぬぅ!! 思っていた以上に強力だ!!」


 ルーヴィアルの焦りの通り、結界が次々と割られていく。一枚、二枚、そして――


 破砕音を立てて三枚目の結界が割られた。万事休すかと思われ、稲姫がぎゅっと目を閉じた瞬間――



「――<結界>!!」


 白い結界が現れて“神槍グングニル”を受け止め拮抗する。稲姫が顔を上げると、アレンが“神槍グングニル”の前に手を突き出していた。


「――と、ま、れぇ~~~~っ!!!!」


 結界にクモの巣状にヒビが入る、そして――



「――グゥッ!!」


 結界が割られ、“神槍グングニル”がルーヴィアルの脇を(えぐ)った。ルーヴィアルがバランスを崩して横転する。


 アレンは地面に叩きつけられる寸前、<肉体活性>を発動し稲姫を抱えて飛び退いた。そして――


「稲姫!! ルーヴィアルの治療を!!」

「わかりんした!!」


 稲姫は両手をかざし、脇を抉られ流血するルーヴィアルを<治癒>で癒していく。


「――生き残った、のか?」


 ルーヴィアルは信じられないという様に稲姫の治療により完治した自分の脇腹を見る。そこにはもう、怪我の痕も無い。


「ああ。防ぎ切ったんだよ、俺達は!!」


 アレンは地面に刺さっていた“神槍グングニル”を手に持ち振ってみる。


「これ、“身体能力も強化してる”みたいだ。……ほんと、ズルい武器だな」

「それをどうするんだ?」


 ルーヴィアルの問いに、清々しい笑顔でアレンが答える。


「戦利品として頂いていく!!」


 “神槍グングニル”を掲げてご満悦だった。



「――有り得ないッ!!」


 その一部始終を見ていたジェニスは驚愕に取り乱す。<黒い結界>を三枚破るまでは予定通り。だが、最後に展開された強固な<白い結界>によって、()()()()()()()()()()()()()()


 “一角獣”でもない“人間が結界を張ったこと”。その結界が“自分達のものよりも強固だったこと”、これらが普段冷静なジェニスを混乱たらしめる。


 そして、あろうことかその人間は、“神槍グングニル”を掲げて喜んでいる。――“一角獣”一族に与えられた宝である“神託武器”を。


 ジェニスの頭の中で、何かがプツンと切れる音が聞こえた。


「ふ、ふふふ……ふははははっ!」


 ジェニスの身体が光に包まれる。そこには――


「面白い! 面白いぞ、人間!!」


 (たくま)しい体躯(たいく)をした純白の“一角獣”――獣化したジェニスが、(よど)んだ目で笑みを浮かべてアレンを見据えていた。


「地獄よりも辛い責め苦を味わわせてやろう……。――皆の者!! 私に続け!!」

「「「ハッ!!」」」



 ジェニスが隊員達を引き連れ、全速力でアレンに向かい駆け出した。



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