表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第二部】“旅立ち”編
113/494

【第二部】第五十七章 対“一角獣”戦 ①

――“セラーレの森”・結界領域中部――



「話には聞いていたが、これ程とはな……」


 ルーヴィアルから(つぶや)きがもれる。


「だから言っただろ? 『稲姫の<魔素操作>は強力だ』って」


 ジェニスから放たれた<光子線(フォトンレイ)>は眩い輝きを放ちつつアレン達を襲ったが、到達する前に全て霧散した。


 今も全周囲から他の隊員達による<光子線>を受けているが、その全てが同様に霧散し、アレン達に届くことは無かった。


 稲姫が<魔素操作>の応用で自分達の周囲に限定して分解領域を展開することで、光属性の魔素を収束して放たれた<光子線>は、領域に触れた瞬間その(ことごと)くを()き消されたのだ。分解された光属性の魔素は、稲姫に吸い込まれる。


 もうこれは技だろう。アレンはこの領域を<魔素分解領域>と呼ぶことにする。



「おのれ……! 珍妙(ちんみょう)な技を!!」


 必殺のつもりで放ったのだろう。ジェニスが苦々し気にアレン達を睨む。周囲に散らばっている“一角獣部隊”の隊員達も、驚愕からざわめいていた。


「じゃあ、次はこっちの番だな」


 アレン達が反撃を開始した。



「蒼炎!」


 アレンがそう叫び手を突き出すと同時、ジェニスや周囲の隊員達を蒼炎が飲み込む。だが――


「あ~……。やっぱり<結界>は破れないか」


 ジェニスだけでなく、他の隊員達も結界を張って防いでいた。サンクエラから『“一角獣”は<結界術>が得意』と聞いていたから予想通りではあるが、こちらも有効打を与えるのは難しそうだ。騎乗しながらじゃ、<肉体活性>も使い道がな……。


「ふん……所詮は人間。口だけか」


 ジェニスが嘲笑(あざわら)い、他の隊員達も余裕を取り戻す。アレンがカチンと来た時――



「俺に任せろ。――アレン、“この領域”は闇属性の魔素を通せるか?」

「ん? ああ、稲姫、できるよな?」

「できるでありんすよ」


 ルーヴィアルが何かするようだ。稲姫が<魔素分解領域>を調整し、闇属性の魔素を通る様にする。すると――


「出でよ、<一角獣(ユニコーン)シャドー>」


 ルーヴィアルの呼び掛けに応じる様に、地面から三体の影が盛り上がり、馬の形態を取る。黒馬なので“二角獣”だと思いがちだが、角が一本だ。これは、ルーヴィアルの言う通り――


「おのれ! またも外法(げほう)を用い、我らが同胞を(はずかし)めるか!」

「ふん……ただ<複製(ふくせい)>しているだけだ」


 激昂するジェニスにルーヴィアルが淡々と答える。


「さて、返礼といこうか」


 ルーヴィアルの意思に従う様に、<一角獣シャドー>の角先に、漆黒の光が収束する。そして――



「ぐぁぁっ!」

「ひ、ひぃっ!」


 <一角獣シャドー>から放たれた黒い<光子線(フォトンレイ)>が、周囲を取り囲む隊員達を襲う。


 出力が高いのだろう。隊員達の張っている結界を突き破って蹂躙(じゅうりん)している。隊員達は足をもつれさせながら逃げ惑うしかなかった。


「おのれっ!!」


 ジェニスはやはり別格なのだろう。結界で<光子線>を受け止めつつ、剣を構えてこちらに歩み寄ってくる。接近戦をしかけるつもりのようだ。


「じゃあ、いっちょタイマン張ってみるか!」

「気をつけろ、奴は近接戦も得意だ」

「主様! ファイトでありんす!」


 アレンはヒラリとルーヴィアルから飛び降り、双剣を鞘から抜きつつ、向かってくるジェニスに歩み寄る。そして――


「<肉体活性>、――<蒼炎剣>、<紫電剣>」


 <肉体活性>で身体能力を跳ね上げ、双剣に炎と雷を宿した。



「そんなこけおどし!」

 

 ジェニスがアレンに斬りかかってくる。だが――


「――ぐぁっ!!」

「さすがにここまで接近すると結界は張れないか」


 アレンが左手に持つ紫電剣でジェニスの直剣を受けると、ジェニスが感電して痙攣(けいれん)する。伊達に雷を(まと)っている訳ではない。アレンは、隙有りとばかりに右手の蒼炎剣でジェニスに斬りかかる。


「ぐっ!!」


 間一髪のところで痙攣を脱したジェニスが緊急回避で蒼炎剣を(かわ)す。しかし、既にアレンは懐に潜り込んでいる。紫電剣で袈裟懸けに斬りつけるが――


 硬質な音が鳴り響き、アレンの紫電剣が弾かれた。――そう認識した瞬間、アレンは嫌な予感を感じ、急ぎバックステップで距離を取る。



(こら)え切れず使ったか」


 ルーヴィアルがそう呟く通り、アレンがジェニスに視線を戻すと――


「おのれ! 人間如きに“この槍”を使うことになろうとは!!」



 “神槍グングニル”を構えたジェニスが、怒気も(あら)わに覇気を(みなぎ)らせていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ