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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第二部】“旅立ち”編
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【第二部】第五十四章 ダークホースの参戦

――“セラーレの森”・結界内の洞窟――



「サンクエラ、調子はど――」

「主様! 今は“おっぱい中”でありんすよ!」

「……アレンは来ちゃダメ!」


 出産後のサンクエラの様子を確認しに来ただけなのだが、間が悪く、赤ちゃんの授乳中だった。乳房に吸い付く赤ん坊をチラと見るだけで、アレンはすぐに稲姫とレインに追い出されてしまった。


「サンクエラの裸を見ようとは、いい度胸だ……」

「ち、違う! 今のは事故だ!」


 不意に背後から肩に手を置かれ、アレンの身体がビクンと硬直する。いつの間にか、ルーヴィアルが背後に忍び寄っていた。


「ハハハ! わかってる、からかってみただけだ!」

「人が悪いよ、もう……」


 ルーヴィアルは笑顔でそう言うが、肩を(つか)む手に力が込められていて、ちょっと痛い。――やっぱり、少し怒っていそうだった。


「ご主人は、いつもうちのを見てるから見慣れてると思ってたにゃ」

「あれはお前の寝相が悪いだけで、不可抗力だ!」


 夜寝る時、琥珀達がアレンの布団に入ってくるが、向こうから入って来てる上に、琥珀は寝相が悪く、朝には上着がはだけているのだ。風邪をひかないか心配になるが、気を操れるからか、いつもピンピンしている。


「なんだ、アレンもやることはやってるんだな」

「いや、そういう訳でも無いんだけどな」


 自分達の関係は(はた)から見るとそう映るのかもしれないなと思いつつも、アレンはとりあえず否定しておく。


――ふと、エリスの顔が頭に浮かんだ。


 何故だろう……付き合ってる訳でも無いのに、トラウマとして恐怖が心に刻まれているのだろうか。アレンは小さくため息をつき――


「じゃあ、俺達も食事の準備をしようか。サンクエラさんにも、しっかりと栄養を()らせないとな」


 皆で料理をすることにした。



「鳥とイノシシを狩ってきた。これをサンクエラに食わせてやってくれ」

「ああ、ありがとう。野菜は――」

「我が君、採ってきたぞ!」


 ルーヴィアルから獣を、青姫から野菜を受け取り、アレンは調理を進める。


「肉料理は任せとけ」

「助かります。じゃあ、俺は野菜料理を作りますね」


 栄養たっぷりの野菜スープと野菜炒めを作る。野菜に毒が無いことは念入りに確認済みだ。森には野菜が豊富で、かなりいい感じに仕上がったと自負している。


 肉はラルフからの申し出通り、任せておくのが一番だろう。ラルフの肉料理の絶品さは、今までに堪能してきたアレンも十分に承知していた。


 そうして、皆で協力して料理を進めた。



「ス、スゴい! スゴく美味しいわ!」

「ああ! まさか、これ程の味が出せるなんて……!」


 料理を食したサンクエラとルーヴィアルの反応は上々だった。頑張って作った甲斐があるというものだ。


「恥ずかしながら、俺にはこんな繊細な料理は作れなくてな。――サンクエラには、いつも悪いと思ってたんだ」

「やめてルーヴィアル。――私の方こそ、いつも作ってもらってばかりでごめんなさいね。あなたには、いつも感謝しているわ」

「ハハハ! 今度教えてやるから、今は食事を楽しもうぜ!」


 少ししんみりする空気を打破する様に、ラルフが豪快に笑う。酒も入っており、赤ら顔でご機嫌だ。


「お前も飲めるだろ?」

「飲めるが……サンクエラを差し置いて」

「気にしないでって言ったでしょ? 今は、あなたも楽しんで」


 それではとラルフに酒を注がれ、一気にグラスを空にするルーヴィアル。かなり酒に強いみたいだ。


「いける口じゃねぇか! まだまだあるぜ!」


(というか、荷物重そうだなと思ってたら、酒を入れてたのか。どんだけ飲みたかったんだ。でも、そのおかげで俺達もご相伴に預かれる訳だが……)


 アレンも酒の入ったグラスを傾けていると、女性陣が近付いてきた。



「我が君よ。わ、わらわも赤ちゃんが欲しいのじゃ!」

「にゃはは! ――やっぱり、可愛くて欲しくなっちゃうにゃ」

「二人ともずるいでありんすよ! 主様、わっちも!」


 いつの間にかアレンは、逃がすまいとばかりに青姫、琥珀、稲姫に包囲されつつあった。


 赤ちゃんの誕生を目の当たりにし、母性本能が目覚めてしまったのだろうか。アレンは思わず、唯一空いている方に身じろぎするが――



「レ、レインさん!?」

「……赤ちゃん、可愛かった」


 酒がだいぶ進んでいるのか、赤ら顔のレインがアレンの移動先にいて、肩がぶつかる。レインがどこか浮ついた目でアレンをじっと見つめた。


「だ、ダメにゃ! レインは危険にゃ!? ――青姫ちゃん! 稲姫ちゃん!」

「わ、わかっておる! まさか、レインまで参戦してくるとは!?」

「わっちが一番最初に主様と出会ったでありんすよ! だ、だから――」


 今までに無い程必死な形相の三人がレインを引き剥がしにかかる。思わぬダークホースの登場に動揺を隠せないのだろう。アレンは左右に引っ張られ、もみくちゃにされていた。



「何してるんだ、あいつら?」

「あらあら。アレンはモテモテみたいね」

「俺よりもよっぽど二角獣(バイコーン)に向いてるんじゃないか? アレンは」


 呆れ顔でラルフが、ころころと楽しそうに笑いながらサンクエラが、どこか尊敬の混じった目でルーヴィアルがアレンを取り巻く騒ぎを眺めていた。エーリッヒは洞窟外の警戒で外に出ているので、ここにはいない。


 

 エーリッヒにも珍しいレインの姿を見せてやりたかったなと、ラルフは笑みを浮かべながら酒杯を傾けるのだった。



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