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漆黒のブリュンヒルデ  作者: 大橋むつお
67/100

067『牙をむくショコラモナカ!』


漆黒のブリュンヒルデ


067『牙をむくチョコモナカジャンボ!』 





 バグっちょるみたいじゃ!



 玉代が立ち止まる。


 恐れているというのではなく、下手に立ち入ってバグをひどくさせるのを恐れているのだ。


 我が家は処理おち寸前のようにカクカクして、家を取り囲む空間はヂヂっとノイズが走っている。


「ここで待っていて、わたし一人で入る」


「でじょうぶ? 加勢ならどしこでもすっじゃ」


「外がバグッているぶん、中は意外に平穏なような気がする……とんでもない悪意を感じるんだけど、こちらから仕掛けるのは得策じゃないような気がする」


 幾たびも戦場を駆け巡った漆黒の姫騎士の勘だ。敵が策略を巡らしている時は、乾坤一擲の打開面が見えるまでは気づかぬふりがいいのだ。


「危なかて思うたや飛び込んでね」


 そう言って玉代が肩を押してくれたのをきっかけに、門扉を開ける。


「ただいまあ、あ、なんかいい匂いするねえ(^^♪」


 煎餅を焼くような匂いがするので、高二の娘らしく反応しておく。


「おう、いいところに帰ったな。たった今ショコラモナカを焼き始めたところだぞ」


 啓介が子どものころみたいに玄関まで迎えに来てくれる。


「え、アイスを焼いてるの?」


 これはフェイクだ。


 ショコラモナカを三十秒焼いたら美味しくなることは知っている。


 祖父母が聞きとがめたら本物だし、知らずに自慢するようなら、なにかが祖父母に憑りついた偽物だ。


 リビングに入ると、お祖母ちゃんがニコニコとオーブントースターの前で手を挙げ、お祖父ちゃんはイソイソとコーヒー豆をひいている。


「おかえり、ひるで。いま、すっごいのができるからね!」


「コーヒーもとっておきのブルマン挽いてるところだからな(⌒∇⌒)」


 二人とも機嫌がいい。リビングは、とってもフレンドリーな時の我が家の空気だ。


 だが、この様子はおかしい。


「ショコラモナカを焼くとね、とっても美味しくなるのよー(^▽^)/」


「えーーほんと、知らなかった!」


 かましてみるが、わたしがすでに『ショコラモナカの美味しい食べ方』を知っていることが分かっていない。夕べ、この話題で盛り上がったはずなのに。


 チーーン


「さあ、焼けたわよ(^^♪」


 オーブントースターの蓋が開けられようとする。


「あ、熱い!」


「お婆ちゃん、わたしがやる」


 成り行きに身をゆだねて進み出る。


「あ、おねがい」


 身を滑らせて祖母と入れ替わり、蓋の取っ手に手をかける……。



 グワーーーッ!!



 香ばしい匂いをさせてショコラモナカが飛び出し、牙をむいて飛びかかってきたぞ!


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