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漆黒のブリュンヒルデ  作者: 大橋むつお
65/100

065『大出井老人』


漆黒のブリュンヒルデ


065『大出井老人』ねね子 





 人の家に潜り込むのは150年ぶりニャ。



 明治維新までは佐賀県にあった鍋島ってお大名のお城に居たニャ。


 何を隠そう鍋島の猫騒動の猫は、このねね子なのニャ。


 あんまり干渉されたくないので、あのおどろおどろしい化け猫の怪談話をでっち上げ、お城の中で平和に暮らしていたニャ。むろん、本宅は豪徳寺なんだけどニャ。鍋島さんとこが気に入って、豪徳寺には殿様の参勤交代とかに紛れてたま~に顔出す程度だったニャ。


 それが、今度は門脇さんちの娘という設定で潜り込んだのはひるでと仲良くなったからニャ。


 門脇さんちは、ひるでの武笠家とは向かい同士ニャんで、とっても便利ニャ。


 門脇さんちには、あたし以上にネコみたいな啓介というのが居て、たいてい昼過ぎまで寝てるニャ。


 いちおう兄貴ってことになるんで、ときどき妹らしくいたぶってやるニャ。



「さっさとやらニャきゃ、アイスはおあずけだからニャ!」



 冷房の効いたリビングのサッシ越しに啓介をいたぶる。


 あ、リビングというのは武笠家のリビングなのニャ。


 ひるでは玉代を連れてコロナ退治に行ってるニャ。


 うちの家から見ても武笠家の庭は草ぼうぼうになっていたのでニャ、啓介をいたぶるネタにもなると一石二鳥でかって出たニャ。


 ひるでのお祖母ちゃんが「ショコラモナカをオーブントースターで焼いたの」を気に入ってくれたので、それを伝授するって名目もあるんだけどニャ。


 お向かい同士ニャンだから、気楽に「手伝ってえ」とか「ちょっとおいでよ」くらいのノリでいいと思うんだけどニャ、武笠の老夫婦にはこだわりがあって、こういうドラマのプロローグみたいな状況を演出するのがお気になのニャ。


「チョコモナカは五つでよかったかしら?」


 重そうなマイバッグをぶら下げてお祖母ちゃんが帰ってきた。


「じゅうぶんニャ、てか、一つ多いようニャ?」


「ねねちゃんと啓介くんが二つづつで四つ。わたしと旦那は一個を半分こに、ショコラモナカって年寄りには大きすぎるから」


「そ、そうなのかニャ、ねね子は嬉しいニャ(^▽^)/」


「アイスをオーブントースターで焼くなんて、お話では分かるんだけどね、年寄りはビビっちゃうのよ。ねね子ちゃんに付いていてもらって二三回は練習しないと不安だしね」


「じゃ、とりあえず、冷凍庫に仕舞って置くニャ。ねね子、持つニャ(^▽^)/」


「あ、おねがい」


「あれ、他のアイスも入ってるニャ?」


「あ、ついね。懐かしかったり面白かったりで、いろいろ買っちゃった。そうだ、啓介く~ん、一つ食べない、暑いでしょ」


「あ、いただきます!」


 これ幸いに草刈りを中断して、タオルで汗を拭きながらリビングに寄って来る啓介。


「啓介は庭で食べるニャ! 草刈りがノルマなんだからニャ、クリアしてシャワー浴びるまでは入って来ちゃダメニャ!」


「わ、わーってるよ」


 アイスを受け取ると、大人しく日陰に行ってしゃがみ込む啓介。これでいいのニャ。


「ねねちゃん、啓介くんには厳しいのね」


「愛情なのニャ、このまま引きこもりのニートになってもらっちゃ困るからニャ」


「おお、スパルタ妹だ」



『ただいまあ。お客さんがいらっしゃるよ!』



 玄関でお爺ちゃんの弾んだ声。お婆ちゃんがスリッパをパタパタいわせて玄関に迎えに行くと「アッラー!」とムスリムみたいな歓声をあげるニャ。


「わ!?」


 ねね子も驚いたニャ! お爺ちゃんがクーラーボックスに一杯のアイスを持って帰ってきたニャ!


「どうしたんです、このアイスは!?」


「だから、そのお客さんに頂いたんだよ、アイスがあるから一足さきに帰ってきたんだけど、ほら、新婚時代にお世話になった大出井の叔父さんだよ。あ、見えた見えた!」


 お爺ちゃんは少年のように表に戻ると、身長180センチはあろうかというお年寄りを連れて戻ってきたニャ。


「いやあ、お久しぶり! 民子さん! いやあ、こっちが孫のひるでちゃんか!」


「あはは、向かいの門脇の子なんニャ、ねね子って言うニャ(n*´ω`*n)」


 とっさに合わせておいたけど、このお年寄りは二人の叔父さんではないニャ……それどころか人間でさえないのニャ……。


 正直ビビってしまっているのニャ……(;'∀')。


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