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漆黒のブリュンヒルデ  作者: 大橋むつお
50/100

050:『荒田八幡宮』 


漆黒のブリュンヒルデ


050『荒田八幡宮』 





 煙の柱を経めぐって全国の八幡宮を訪れている。



 スクネ老人は慰労のためだと言うが、それは北欧の主神であるわが父オーディンへの遠慮があるのだと思った。


 さぞ、各地の八幡宮が抱える問題の解決にこき使われるのだろうと観念していた。


 ところが、実際に行ってみると、時代は様々だが、八幡宮周辺の高校生になって数時間から数日を過ごすだけだ。むろん、憑依した高校生自身や、その友人知人の手助け程度の事はやるのだが、現実のわたしは、けっこう楽しんで、文字通りの慰労になってきた。


 なあ、ねね子、こんなことでいいのか?


『これでいいニャ』


「なんだ、今度はネコのままか?」


『そうニャ、今度はネコ付き合いのお仲間の依頼なのニャ』


「おまえの付き合い?」


『まあ、行ってみればわかるニャ、あの太い煙の柱に沿って降りていくニャ』


「太い煙? う、うわあ!?」



 それまでとは比べ物にならない煙の柱に飛び込んでしまい、思わず目をつぶって手で顔を覆ってしまった。



 鳥居の前に居る。


 チリンと音がしたかと思うと、鳥居の根元を周ってネコが現れた。


「おまえか、ねね子のお仲間と言うのは?」


 ペコリと頭を下げると、ネコは左足を上げて鳥居の奥を指した。


 拝殿のあたりからそよそよと黒髪を靡かせて息をのむような美少女が通学カバンを下げて歩いてくる。


『うちの御祭神の一人である玉依姫です。どうか、いっしょに通学してあげてください』


 ネコがきれいな標準語で挨拶する。ねね子の馴れ馴れしい言葉に慣れてしまったので、なんだか新鮮だ。


『姫は千数百年ぶりに鳥居の外にお出ましになります、なにぶん世間に慣れておられませんので、ひるで様のご助力を得たいのであります』


「そうか、まあ、転校生を友だちに持ったと思えばいいのだろう」


『それでは、よろしくお願い申し上げます』


 ふたたびネコが頭を下げて、ゆるゆると近づいてくる玉依姫を待つ。


 待っている間に、風景が鮮明になって来る。


 神社は世田谷八幡ほどだが、境内の樹木たちはおそらくクスノキ。並外れて大きく、幹は大人四人でやっと抱えられるかというほどに太い。鳥居の脇に幟が見えて『荒田八幡宮』と読める。荒田……とはどこだ? 八幡宮と言えば地名を冠したものだと思っていたので、とっさにどこだか分からない。


 ズシ


 肩に重みが加わったかと思うと、自分も通学カバンをかけて、玉依姫と同じセーラー服を着ている。


 始まったのか……


 わたしは伊地知香奈枝というらしいが、詳しい情報は周辺の景色同様に分からない。


 というか、近づくにしたがって輝きを増す玉依姫の美しさ圧倒されている。


 その玉依姫が、目の前一メートルほどの親友同士と言っていい近さで立ち止まって口を開いた。


「はいめっお香奈いどん、たってまあほおばいになっ玉依姫じゃ。ちゆっも千数百とかぶい、てげ知識は身につけちょっが、おいうったいもたいではねしゅもとなかことだらけじゃっで、よろしゅねげしもす(o^―^o)ニコ」


 えと……最後のニコニコしか分からないんだけど(;゜Д゜)



『では、わたくしは、これにて!』


 ネコは、あっという間に居なくなってしまった。


 おい、ちょっと、どうすればいいんだ!?


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