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漆黒のブリュンヒルデ  作者: 大橋むつお
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019:『夢を見た』


漆黒のブリュンヒルデ


019『夢を見た』 





 夢を見た。



 この異世界に転生する直前の記憶が無い。映画のコマがまとまって飛んでいるような感じだ。


 その飛んでいるコマを補うような夢だった。



 父王オーディンに休息を宣告されると闇になった。


 うすぼんやりと地平の彼方が知れる以外は、大きな木を背にしていること以外、どこがどこやら判然としない。



 シトシトと雨が降っている…………しばらく様子を見よう。



 思い定めると、地平の彼方がチラチラと光る……数秒遅れてゴロゴロと音がする……遠雷か。


 この闇の中で雨にたたられるのはかなわんなあ……すると、二十メートルほど先に猫が現れた。


 最初は、迫りくる雨の気配を探っているのか、髭をそよがせ鼻をクンクンしている。


 そのうちに目が合っても、猫は逃げもせずにオイデオイデをする。


「用事があるなら、おまえの方から来い」


 言ってやると、猫は小首をかしげて手を替えた。


 仕方なく甲冑をガシャガシャいわせながら猫の傍に寄って行ってやった。


「何の用だ?」


 聞いた瞬間、世界が白くなった。



 ピッカーーー! ドドドドーーーーーンン!!



 なんと、たった今、自分が立っていた背後の木に雷が落ちた。


 そして、意識が戻ると宮の坂駅のデハのシートから転がり落ちていたのだ。



 あの猫が救ってくれたのか……猫のオイデオイデ……ねね子がこめかみを掻くのに似ている。というか、あの猫はねね子か?


「そうよ、ねね子が、この世界に誘ったのよ」


 え……?


 気づくと世田谷八幡の鳥居の前。おきながさんが猫姿のねね子をモフモフしながら立っている。


 そうだ、わたしってば、ねね子と下校途中に考え事をしていたのだ。転生する瞬間の夢


「もう一つ、わたしから」


「なんですか?」


「ここの妖たちは名前が無い者が多いの。安西信子と中村重一、いい名前を付けてもらってありがとう。これからもいろいろ出くわすでしょうけど、よろしくお願いするわね」


「妖たちは、おきながさんの知り合いなんですか?」


「知っているかどうかと言えば、知ってるわ。まあ、立ち話もなんだから、お茶でも飲みながら……」


 おきながさんに誘われ、初めて鳥居をくぐる。


 ニャーー


 ねね子が嬉しそうに鳴いて尻尾を振る。


 社務所でお茶を頂いたような気がするのだが、記憶が定かではない。



 気が付いたら、鳥居の外に戻っていた。




☆彡 主な登場人物


武笠ひるで(高校二年生)      こっちの世界のブリュンヒルデ

福田芳子(高校一年生)       ひるでの後輩 生徒会役員

小栗結衣(高校二年生)       ひるでの同輩 生徒会長

猫田ねね子             怪しい白猫の化身

門脇 啓介             引きこもりの幼なじみ

おきながさん            気長足姫 世田谷八幡の神さま

レイア(ニンフ)          ブリュンヒルデの侍女

主神オーディン           ブァルハラに住むブリュンヒルデの父


 


 


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