表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
漆黒のブリュンヒルデ  作者: 大橋むつお
11/100

011:『放課後 おきながさんに声を掛けられる』


漆黒のブリュンヒルデ


011『放課後 おきながさんに声を掛けられる』 






 小栗……声をかけようとしてやめた。




 今朝の事件が、まだ初々しい。


 小栗も身構えるだろうし、たぶん、わたしも意見してしまう。


 顔の見える生徒会はけっこうだけれども、先生と一緒の立ち番は、生徒たちには生徒会が学校の手先になった印象で、いずれは化け物犬でなくても反発されるだろう。


 そう意見しても小栗は聞かないだろう。


 それに、彼女は資料を抱え、生徒会室の前を素通りして、階段教室の方に向かっている。委員会だ。


 ということは佳子も委員会。一人で帰ることにする。




 昇降口で下足に履き替え校門に向かう。




 三年生ということになっているが、わたしとしては初めての学校だ、ついキョロキョロしてしまう。


 校内の施設は、すでにインストール済み。興味があるのは人間だ。


 そろいの制服を着ているという点ではヴァルキリアの兵士と変わらない。


 兵士には一人一人個性がある。その個性を見極めることが姫騎士としては重要で、食事は兵たちといっしょに食べるように心がけていた。


 指揮官としての任務というよりは楽しみだったというのは、学食の所でも言ったな。


 ほんのチラ見なんだけど、目の合った生徒は会釈してくれる。親しみ……と言うよりは敬遠してるんだ……父、オーディンはどんな設定をしてくれたんだ(^_^;)


 なむさん、不用意に人を脅してはいけないので、生徒は視野の片隅に入れるだけにする。



 角を曲がって宮坂駅が見えてくる。



 駅の脇にはデハが静態保存されている。昔走っていた車両で、一時は江ノ電の貸し出されていたが、再び戻されてきたものだ。他の静態保存車両と異なって、朝から夕方までは自由に出入りできる。


 きのう、デハの中で居眠りしていて、寝返りを打って床に落ちて目が覚めた。


 あれが始りだったんだ、昨日の事なのに懐かしい。



 ひるでさん。


 え?



 鳥居の方から声をかけられた。世田谷八幡の前にさしかかっていたのだ。


 鳥居の真ん中から滲みだすように人が現れた。ホウキを持った女性だ。ジーパンに長袖のカットソー、神社の人だろうか?


「呼び止めてごめんなさいね」


「はあ……」


「わたし、おきながたらしひめ(気長足姫)と言います。いちおう、ここの住人」


「では、神さま。おきなが……」


「ハハ、長い名前だからね」


「すみません、きちんと覚えます」


「ううん、おきながでいい」


「はい、わたしに御用でしょうか?」


「うん、きょう、犬と猫が失礼したでしょ」


「ああ、二つ尾の?」


「お詫びとお礼」


「おきながさんがですか?」


「東京は、日本一の大都市だけど、いろいろある街なの。一筋縄ではいかないわ。でも、みんな歴史とか事情を抱えてるのよ。悪さを仕掛けてくる者は痛めつけなきゃならないだろうけど、お願い、命まではとらないでやってほしい」


「はい、わたしと、わたしの大事な人たちに危害が及ばない限り」


「ありがとう、あなたにチョッカイを出してくるのは……構って欲しいからと思っていただければ嬉しい。そして、なにか力になってあげられることがあったら、いつでも……落ち葉の盛りになってきたわね、もうひと頑張りしようか……」


 ホウキの音をさせながらおきながさんは消えて行った。


 鳥居から駅の方に目を移すと、踏切の向こうで猫田ねね子が手を振っている。


 夕陽を正面から受けていると、意外に可愛い奴だ。


 ヘクチ!


 クシャミまで可愛い、ネコにしては大した化けっぷりだ。


 おまえも、もう少し可愛くなれというナゾかな……だったら、無理な相談だぞ。



☆彡 主な登場人物


武笠ひるで(高校二年生)      こっちの世界のブリュンヒルデ

福田芳子(高校一年生)       ひるでの後輩 生徒会役員

小栗結衣(高校二年生)       ひるでの同輩 生徒会長

猫田ねね子             怪しい白猫の化身

門脇 啓介             引きこもりの幼なじみ

おきながさん            気長足姫 世田谷八幡の神さま

レイア(ニンフ)          ブリュンヒルデの侍女

主神オーディン           ブァルハラに住むブリュンヒルデの父




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ