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エピローグ 「私」

 まぶたを照らす日差し。

 ふかふかの温かい感触と懐かしい匂い。

 自然に目が開き、ベッドの中で伸びをする。

 キリアは、アヴァロン・プロダクションの医務室で目覚めた。ここに在籍していたころは、何度もお世話になった場所だった。

 自分にしては、めずらしく、目覚めが良かった。いつもなら、もう一度目を閉じていた。

 体を起こして、周りを見る。

 右隣りを見た。

 キリアは窓際のベッドに寝ていた。昼前の強い日差しがキリアのベッドに差し込んでいた。窓ごしに空をを見上げる。少し雲が多かったが、良い天気だった。

 そして左隣りを見た。

 リンが安らかな顔で、静かに眠っていた。

 リンはまだ目覚めていないのだろうか?

 たしか、わたしとキャメロットの四人は、イドラの大釜から、ジュリアが手配したヘリに乗ってアヴァロン・プロダクションに帰還をすることになった。

 しばらく、デュラハンとの戦いの様子について話していたが、突然リンが気絶するように倒れる。

 イドラ化の後遺症かと心配したが、眠りについただけとわかった。それに安心して、わたしも深い眠りに落ちてしまった。


 こん、こん、こん

 ためらいなく、はっきり自己主張するノック。

 すぐさま扉が開く。

 そこには、ジュリアが立っていた。

 キリアは、どきりとする。まだ面と向かう心の準備はできていなかった。

 ジュリアは、キリアを見て、驚いたように目を見開いた。そして、安堵した表情で、「目覚めたか」とつぶやき、医務室に入ってきた。

 ジュリアが、自分に対して関心を向けていることに、ほっとする。

 それと同時に気づく。

 わたしは、また、ジュリアの顔色を見ている……

 布団の下で、ぎゅっとこぶしを握る。

 わたしは、変われないの?

 弱気な自分に対抗するため、ジュリアの目をしっかりと見つめる。そして「はい」と答えた。

 ジュリアは、移動の途中なのだろうか、医務室には不釣り合いなレディーススーツだった。キリアのベッドの左側に移動し、備え付けのいすに腰掛ける。

 キリアの方を見ることができない。何から話せばいいだろう。考えがまとまっていなかった。

 物音が何一つしなかった。静かな部屋に二人だけ。

 キリアが話しかけようと、ジュリアの方に顔を向けたとき、ジュリアはキリアに向かて頭を下げた。

「キリア、申し訳なかった」

 突然のことに、何も応えることができなかった。

「あなたからたくさんの貴重な時間を奪ってしまったことを謝罪する」

 こんな雰囲気のジュリアは見たことがなかった。

 キリアは、恐るおそる尋ねた。

「わたしが黒のアイドルだった二年間のことですか?」

「それだけじゃないんだ……」

 ジュリアは、そう言うと、一つうなずき、キリアの目をしっかり見て続けた。

「私は、アイドルを引退し、プロデューサーになってから、ある特性を持ったアイドルを探し続けている。

 そのアイドルは三人いるのだが……。

 キリア、私はあなたがその三人のうちの一人だと思っていたの。

 あなたを見つけたとき、心が躍った。

 そして、あなた自身もアイドルになることを希望していた。

 あなたの両親を懸命に説き伏せて、あなたをようやくアイドルにすることができたとき、私の手で、あなたを最も輝くアイドルにする! なんてやりがいのある仕事なんだと意気込んでいたわ。

 そのイメージも目に浮かんでいた。

 そのイメージ通りに、あなたは順調に成長し、強く輝くアイドルとなっていった。

 それは、本当にうれしかったわ。

 でも、次第にわかってきたの。

 あなたが、私が期待していた特性を持っていないことに……。

 あなたの才能が特別だと思えば思うほど、私は、それを認めることができなかった。

 だから、大きな目標を与えて、キリアをもっともっと成長させれば、その特性を発揮するかもしれない……。

 そう思って、あなたのプロデュースを強化したわ。

 しかし、特性を発揮することなく、キリアはトップアイドルとなってしまった。

 これ以上の成長は見込めない……。

 私は、自分が間違っていたと認めざるを得なかった。

 その後、私はキリアを避けるようになっていた……。

 この頃からあなたと、よくけんかをするようになった。

 それは、自分の失敗を見たくなかったからだろう……。

 それに、活躍するキリアを見るのは……、私があなたを強引に振り回して貴重な時間を奪った証にしか見えなくて、辛かった……。

 ちょうど二年前に、あなたがイドラの大釜の偵察という危険な任務に参加すると聞いて、少しうれしかったんだ。

 もうキリアを見ないで済む。それに、もしかしたら任務中に殉職するかもしれない。そんなことまで考えていた。そう考えていると……、心が、軽くなったんだ……」

 ジュリアは、もう一度、キリアの方に向かって頭を深く下げた。

 ジュリアがこんなことを話すなんて……。

 彼女の告白を信じられない思いで、じっくりと聴いていた。


 理不尽な話。そう、思った。

 ジュリアに見てもらえない。認めてもらえない。ジュリアの承認に飢えていたときの苦しみを返して、と言いたい気持ち。怒りが、じわじわ燃えていく。

 しかし、ジュリアが話したことは、すべて過去のことだった。

 今のキリアにとって、過去は戻れないもの、手も触れられないことだった。

 つまり、どうでもよいことだった。

「ジュリア、ありがとうございます」

 キリアは、ジュリアの話を聴いたあとの正直な気持ちを話す。

「二年前、わたしがデュラハンに聖杯浸食される直前に聴いていたとしたら、わたしはジュリアのことを恨んでいたと思います。それくらいジュリアに受け容れてもらえないことに苦しんでいました。でも、すべてが二年前のことです。わたしにとって、取り返しのつかないくらい昔の話です。今の自分では、ジュリアに対する恨みや怒りを言葉で表現できません……」


 ジュリアは、いすから身を乗り出して、しっかりとわたしの話を聴いてくれていた。

 わたしは、ジュリアへ伝えたかったことを言葉で表現する。

「それよりも、わたしはジュリアに感謝しています。アイドルにスカウトしてくれたこと、あの家から連れ出してくれたこと、アイドルとして輝く舞台をくれたこと。ジュリアにとって、後悔していることかもしれません。でも、今のわたしにとって、アイドルであることは、希望なんです」

 キリアは、体をジュリアのほうに向けて、しっかりと顔を合わせる。

 ジュリアは構えるように居住まいを正す。

「ジュリア、イドラの大釜の偵察任務の失敗を、謝罪します。そして、黒のアイドルとなって、世界を混乱させたことを、謝罪します」

 ジュリアは、ゆっくりと大きく「わかった」とうなずく。

「わたしの処分は、どうなるのですか?」

「処分か……。まだ決めていない。キリアのように、黒のアイドルから白のアイドルに復帰した前例がないからだ。」

 ジュリアは、そこまで言葉にしたあと、黙り込んでしまった。

 キリアは、覚悟を決めて、伝えたかった言葉の最後の一つを伝える。

「処分が決まる前に、自分の希望を伝えてもいいですか?」

「ああ、いいよ。何でも言ってくれ」

「わたしは、生まれ変わって、アイドルを続けたいです」

「生まれ変わって……、アイドルを続ける……」

 ジュリアは、少しの間、キリアの言葉を味わう。そして、「そうか」とうなずく。

「キリア、確認したい。キリアにとって、『生まれ変わって』とは、どんな意味なんだ?」

「わたしが、これまでのアイドル活動で得た、わたし自身以外のすべてをゼロにすること」

「キリアの言う『すべて』は、具体的に何だ?」

「ISCIのアイドルランクやコンテスト優勝の称号、名声、実績、そして、わたしの出自。わたしの身体と心以外の『すべて』です。」

 言葉を受け取ったあと、ジュリアは、じっ、とキリアの目を見る。

 キリアも、ジュリアを見返す。

 自分の漠然とした思いを、話しながら、いびつな形に整えた感じだった。

 もっとうまく伝えられたのかもしれない……。

 でも、不安はない。これでも大丈夫。

 足りなければ、もっと詳しく伝えればいい。伝わってなければ、もう一度伝えればいい。

 ジュリアは寂しそうな表情で「わかった」と応える。

 キリアは胸をなでおろした。

 そして、最後の言葉をジュリアに告げる。

「あなたにスカウトされたこと、育ててもらったことを感謝しています。わたしが生まれ変わるために。わたしが、わたしを生きるために……。わたしは、あなたと決別します」

 ジュリアは、大きく息を吐き、もう一度「わかった」とうなずいた。

 ジュリアは座ったまま、キリアに手を伸ばす。

「キリア、今までありがとう」

 キリアはジュリアの手をにぎり、握手を交わす。ジュリアの手は、温かくて、強い力が込められていた。

「キリアの、生まれ変わってアイドルを続けるという希望は、ちゃんと叶えてみせるよ。少し待っていてくれ」

 そう言って、ジュリアはいすから立ち上がった。

「黒のアイドルとしての二年間、キリアにどんなことがあったのか想像もできない。しかし、今、キリアは二年前とは別人のように強く輝いているよ」

 ジュリアはそう言い残して、医務室から出ていった。

 キリアは、これからの自分の将来に安心と期待を強く感じた。

 それと同時に、自分が捨てたものに対する不安な気持ちが、鋭い棘となり。自分の心をちくちくと突き刺していた。


 夜更け。

 キリアは目が覚める。

 がたがた、がたん、がたがた

 強い風が、ベッドのそばにある窓を断続的にたたき、揺らす。

 ごおぉぉ、びゅおぉぉ

 そとを吹き荒れる風の音と、窓をたたく音が、真っ暗な部屋の中で反響する。

 不安にさせる音だった。

 もう一度、目をつむったが、落ち着かなくて眠りに付けない。

 キリアは体を起こし、ベッドサイドにあるランプを付けようと手をのばしたとき、聞き覚えのある声が頭に響く。


 ――ジュリアに向かって、あんなことを言うなんて、思い切ったことをするのね

「決めていたことよ。今の自分に正直な気持ちを大切にしたの」

 ――今、感じている不安な気持ちは大切にしないのか?

「……、それも正直な気持ちだけど、そちらは大切にしたくない……」


 ――おまえの心の中では、不安な気持ちが大きいままだ。多数派だ。それを無視するのが、キリアの正直なのか?

「わたしが決めた方が、優先度が高い……」

 ――あたしも、おまえの一人だ。あたしは、おまえの不安な気持ちを大切にする。あたしはそう決めた。ジュリアも謝ってくれたじゃないか。それでいいんじゃないか?


 キリアは反論できなかった。

「わたしのこれから……」

 キリアは布団を頭からかぶって、後ろに倒れ、ベッドにもぐりこむ。

 がたがた、ごおぉぉ、がたん、びゅおぉぉ

 不安な音を聞かないように、耳をふさいだ。

 とても苦しかった。


 胸が締め付けられるような感覚で、目が覚める。

 時計を確認する。朝の四時だった。

 風の音はしていなかった。

 キリアはベッドから降り、リンが目覚めていないことを確認して、静かに窓を開けて、外に出る。

 そこは、ベッドシーツのような大きさや、たくさんの量の洗濯物を一度に干せるほどの広さを持つ、東を向いたバルコニーだった。

 雲の少ない、夜明け前の空が広がっている。

 明るくなることを予感させる紫色の空。

 朝の静けさの中、さっとバルコニーを吹き抜ける気持ちいい風。

 朝の新しい空気を吸い込むと、寝起きの体に染みわたるようだった。

 キリアはバルコニーの柵に寄りかかり、目の前の美しい湖を眺めた。

 昨夜のことを思い出す。

 デュラハンが戻ってきた……。

 いや、わたしの心ずっといるんだ。

 そう、いっしょに行こうといったのは、わたし。いても何も不思議ではないわ。

 彼女のことを、否定できない。もう無視できない、消せない、抑圧もできない、逃げることもできない。しかし、彼女と完全に一致することもできない。

 それなら、また彼女と話そう。

 デュラハンと意見が合わないというなら、その違いを確かめて、話をして、どうしたいかを決めるしかない。

 彼女の話を聴こう。彼女に、正直に話そう。彼女との関係を安心できるものとするために、わたしが、わたしであるために、わたしが、わたしの中に、わたしの居場所を作るんだ。

「輝け」

 キリアはバルコニーの真ん中で、輝化をした。

 寝間着だった衣服は、凛とした朝焼け色の鎧に変わる。

 キリアは自分の長剣、キャリバーを鞘に入れたまま逆手に持ち、切っ先側を床につけて両手を祈るような形にして柄を持ち、瞑想する。

 キリアの意識は、キリア自身の心に集中する。

 デュラハン、今度はわたしがそちらに行くよ。そこ存分に話そう。

 キリアは立ったまま、自分の意識が聖杯へ落ちていくのがわかった。


 キリアは自分の聖杯に到着した。

 真っ白で広大な空間。

 その床には、花が咲き乱れていた。

 黄色の花、青色の花、深紅の花、そして、橙色の花。キャメロットの四人が放つ輝化の光。

 その花畑の中に、黒いミリタリージャケットに身を包んだ人がたたずんでいた。

 キリアは、確信をもって「デュラハン」と声かける。

 その人は振り向き「キリア、待っていたよ」と告げ、にやりと笑った。

 キリアは花畑の中を進み、デュラハンの近くに歩み寄る。

 そして、単刀直入に切り出した。

「わたしは、これから生まれ変わる。自分のやりたいことに正直になって、『わたし』をやり直そうと思っている。デュラハンはどうしたいと思っているの?」

 デュラハンは戸惑った表情で応える。

「あたしがここにいることに驚かないのか?」

「驚かないわ。だって、わたしとあなたは、いっしょでしょ?」

「そ、そうか……」

「それで、デュラハンはどうしたいの?」

 デュラハンは答えた。

「あたしは、ジュリアの元に戻って、二年前と同じように生きたい」

 二人は互いに自己を表現し、葛藤していることを確認した。


 キリアとデュラハンは、その葛藤を乗り越えるために、対話を開始した。

「キリア、その気持ちは本当に正直なの?」

「前回の対話のときから、そう表明しているつもり。変えられないし、変えたくない。あなたはどうなの? デュラハン」

「あたしにとっては……、誰かの評価がすべてよ。ジュリアが医務室から出ていく直前に伝えられた評価の言葉は素直に喜べたのだろう? それがまた得られるなら、あたしはその道を選ぶわ」

「なぜ、それを選ぼうと思うの?」

「簡単だよ。評価されたら気持ちいいだろう? 許されたという感覚にならないか? 逆に評価されなければ不安になるだろう? その不安を払拭するには、評価される他に方法がないんだ。その人の傘の下にいれば、不安にさいなまれることはないよ」

 キリアは反論する。

「わたしは、デュラハンが好む、その生き方で苦悩したんだ。これ以上、そうなりたくないの。ミレナ先生との一年間の思い出が、そんな生き方を捨てる自信と根拠だ」

 さらに、キリアはデュラハンに質問する。

「デュラハンの生き方に未来はあるの?」

「あるさ。評価される方に進んでいけばいい。それが未来だよ」

「そうして進んだ先が、あなたの望まない方向だったとき、どうするの? 別の評価される場所を見つけるの?」

「そうだよ! 別の評価してくれる人を探せばいいじゃないか。逆に、あたしが望まなければいい! それでいいじゃないか!」

 キリアは、強くつよくこぶしをにぎる。

 にぎったこぶしを胸に当て、自分の言葉をデュラハンにぶつける。

「デュラハンと過ごした二年間……。

 聖杯の中で、考えて、考えて、考えた。

 それで気づいたんだ。

 名前も知らない誰かはもちろん、友人や家族、恩人だろうが関係ない。

 自分以外は他人なんだって。

 他人からの評価や承認は、確かに気持ちいいよ。

 生きていく許しをもらえたという錯覚を覚えるわ。

 しかし、他人の評価は、結局、その他人自身の価値観を満足させるための言葉だよ。

 そんな言葉に、自分が生きることや自分の未来をゆだねてもいいの?

 わたしは嫌だよ!」

 今度は、デュラハンが反論する。

「おまえは他人を無視しろって言っているの? 一人で生きていけるほど世界は甘くないよ!」

「そんなことわかっているわ。人間は一人じゃ生活できないよ。わたしが言いたいのは、心の在り方。自分は自分なのか、ということなの!」

 デュラハンは、さらに反論する。目には涙がにじんでいた。

「さっきも言った。望まなければいい! 自分なんてなくても、生きていけるよ!」

 デュラハンの目から涙がこぼれる。

 キリアも視界が揺れる。じわじわと涙が出てきた。

「でも……、生きていくのは誰なの?

 自分でしょ?

 空っぽの自分や他人のような自分で、誰かと接していて苦しくない?

 わたしは苦しいよ。苦しかったよ!

 だから、ジュリアの元には戻らない。苦しかった生き方は、選ばない。

 自分を手に入れて、その自分を大好きになる。

 そのあと、大好きな自分を、大好きになってもらえるように、これから出会う人との関係をきづいていくんだ!

『生まれ変わる』ことは、その生き方の覚悟と決意。

 これぐらいしないと、わたしは変われない!」

 キリアの言葉が聖杯の中に響く。

 キリアも涙をこぼしていた。

 デュラハンは、ぽろぽろと涙をこぼしていた。キリアに対して、何も応えることができなかった。

 デュラハンの涙がおさまったあと、ようやくキリアに話しかける。

「キリアは、ちゃんと考えているのだな。あたしは幼稚な反論しかできない」

「わたしにとって、デュラハンの反論は幼稚なものじゃないよ。デュラハンの反論があるからこそ、わたしたちは話を進め、まとめることができるんじゃない」

 言い終えたキリアは、自然に笑顔になった。さらに応える。

「こうやって、わたしとデュラハンが、こんなふうに安心して自己表現できる。きっとこれが大事なんだよ。向き合う相手と互いに尊重し合って、安心できる居場所を一つずつ作り育んでいく。最初の相手がデュラハンで、居場所がここ。また、こうやって対話しよう」


 キリアはデュラハンの反応を待っていた。

 彼女に自分の思いのすべてをぶつけるつもりだった。自分の気持ちがはっきりしなくても伝え続ける。その覚悟をしていた。

 押し黙っていたデュラハンが口を開いた。

 キリアは彼女の瞳をしっかり見つめて、言葉をこぼさないように集中した。

「キリアの思いの強さがよくわかったよ。

 キリアの勝ち。

 でも、その思いを貫くことができるの?

 語りだけでなく、実力はあるの?

 おまえの聖杯の強さを見せてほしい。

 もう一度、あのときと同じように闘おう」

 デュラハンの言葉に反応するように、床一面の花畑から四色の花びらが舞い散る。

 視界のすべてを覆う目まぐるしい花の乱舞。

 花びらが混ざり合いながら次第に消えていく。

 遠近感のない真っ白な景色が一変していた。

 そこは、イドラの大釜の湖畔だった。

 二年前、偵察任務の最後に、デュラハンと一騎打ちをした場所だった。

 ――ミーファとリアラの虚ろな瞳。

 ――任務失敗の恐怖と焦り

 ――折れたキャリバー。

 ――袈裟斬りされた痛み。

 見たくない。でも、向き合わなきゃいけない思い出が、脳裏に浮かぶ。

 キリアはあっけにとられていた。

 自分の服装も、あのときの任務で着ていた戦闘服だった。

「この光景、覚えているでしょ? あたしたち二人の闘いにふさわしい場所は、ここ以外にないよ」

「そうだね」

 本当に、そうだ。

 二年前のこの場所での出来事を乗り越えることは、わたしの生まれ変わりの象徴だ。

 デュラハンを乗り越えること。

 そして、レンヌ・ル・シャトーで眠り続けるミーファとリアラを救出すること。

 どちらも必ずやり遂げてみせる。

 デュラハンは、口角をつり上げた凶暴な笑みをわたしに見せて、イドラ・アドミレーションの励起を開始した。

 キリアもアイドル・アドミレーションの励起を開始した。

 心の中の風景のはずなのに、わたしの五感のすべてが現実だと訴えている。

 雄大なクレーターと、液化イドラ・アドミレーションを、なみなみとたたえた湖。

 液化イドラ・アドミレーションがクレーターの斜面から流れ落ちる音や、遠くの方で、神話型イドラが鳴動する音。

 地面を踏みしめる感覚に、身を切るほどの寒さ。

 キリアは、二年前にここにいた自分と、今の自分を比較する。

 あの頃の自分は、やはり生き苦しかったのだ。

 もしかしたら……。

 わたしの生き苦しさを取り除いてくれたのは、デュラハンだった……?

「輝け!」

 そのとき、デュラハンが輝化を開始した。

 わたしのアドミレーションも十分に満たされた。

 わたしも輝化だ!

「輝け!」

 デュラハンが赤黒い炎に包まれるのを見つめながら、自分も朝焼け色の光に包まれる。

 自分の身体が輝化防具に包まれていく。肌に伝わる着装時の振動と締め付けが心地よかった。

 防具と防具がこすれ、当たるときに響く音を聞こえる。

 輝化武具のキャリバーを生成し、輝化完了したとき、デュラハンも竜を思わせるまがまがしい輝化防具と輝化武具の生成を終えていた。

 キリアは、間を置かずに、コンクエストスキルを発動し、自分のアドミレーションを錬成し始める。デュラハンとリンに気づかせてもらった、わたしの新しい力。

 初めから自分最大の自己表現をする。キリアは、そう決めていた。

 アドミレーションの錬成を続けながら、デュラハンの出方を観察する。

 すると、キリアから間合いをとり、デュラハンも目を閉じて、アドミレーションのさらなる励起に集中していた。

 彼女も、初手から全力全開の力を放ち、勝負を決しようとしているのだ。

 デュラハン……。

 わたしは、あなたのすべてをしっかり聴くよ。

 勇気をもって、わたしのすべてを伝えるよ。


 デュラハンは、かっと目を見開く。

 彼女の身体から勢いよく火柱が立ち上がる。

 火柱は、次第に高く、太くなり……、爆ぜた。

 赤黒い炎が、五階建てのビルほどの高さとなって、燃え盛っている。

 まるで、イドラの大釜を覆う灰色の雲を焼き払うような巨大な炎だった。

 デュラハンは、その炎の中で大剣を掲げる。

 大剣が、赤黒い炎を吸収する。

 巨大な炎のすべてが、大剣一本に集束されていく。

 大剣は、持ち手以外が今にも溶けてしまいそうなほど赤熱していた。

 彼女は大剣を構え、キリアの名を呼ぶ。

「キリア! これが、あたしだぁぁ!」

 デュラハンが大剣を三回振るう。

 その剣筋は、アステリスクの形。

 その星印が爆発して、キリアの視界のすべてを覆い尽くす炎の壁となった。そして、その壁がキリアの方に迫ってくる。

 赤黒い炎の壁。

 先を見通すことができない恐怖の壁が迫る。


 ――十メートル

 その壁を臨む。

 ――七メートル

 アドミレーションの錬成が完了。

 ――五メートル

 錬成アドミレーションを開放する。

 ――三メートル

 まるで地平線から現れた朝日のように、自分の身体が強くまばゆく輝き始める。

 ――二メートル

 息を目いっぱい吸い込む。

 ――一メートル

 その壁に扉を見出だした。


 キリアは、炎の壁に飛び込んだ。


 暗い。

 光が届いていないだろうか。何も見えなかった。

 熱い。

 まるで、地獄の業火。心と身体をさいなみ続ける。

 苦しい。

 吸い込んだ息が長く続かない。でも、ここでは呼吸ができない。


 引き返したい。戻ってどうするの? こんなはずじゃなかった! あのとき、こうしていれば……。何度やっても変わらないよ。何をやっても無駄……。疲れた……。もう一度なんて無理。どうせ、わたしなんて……。


 この赤黒い炎は、デュラハンのパラノイアスキル。

 焼かれたもののあらゆる力を減退させる効果がある。

 わたしは、その炎に焼かれながら、炎の中をまっすぐ前を向いて進む。進み続ける。

 自分の鼓動と炎が盛んに燃える音を聞きながら、駆け続ける。

 わたしの力を信じて、一歩ずつ。

 認め、認められて、一歩ずつ。

 伝えて、聴いて、一歩ずつ。

 また……、扉が見えた。


 キリアは、炎の壁から飛び出す。

 永遠に続くように思えた息苦しさは唐突に終わった。

 大きく空気を吸い込んで、息を整える。

 錬成アドミレーションは、デュラハンの赤黒い炎によって、すべて相殺されていた。

 炎の壁を抜けた先には、デュラハンが待ち構え、大剣を振りかざし、力を溜めている。

 キリアは、炎の壁を抜けた勢いをそのままに走り続け、デュラハンに迫る。

「デュラハン! これが、わたしだぁぁぁぁ!」

 キャリバーを振りかぶる。

 その一瞬、キャリバーが光り輝く。

 ガード部分の形状が変化し、より十字の形に近くなった。

 振りかぶる瞬間に見えた刀身には、『ExCalibur -For the Idol-』という刻印が浮かんでいた。

 エクスキャリバーを振り下ろす。

 きいぃぃぃぃん――――

 気高く、透き通った金属音が灰色の空に響き渡る。

 デュラハンの大剣と斬り結んだ。

 エクスキャリバーがデュラハンの大剣の刃に傷をつける。

 その傷は、刀身を横切っていき、大剣を断った。

 そして、キリアの斬撃がデュラハンの鎧に届く。

 ぎしぃぃぃぃん

 デュラハンの身体に袈裟斬りの大きな傷ができていた。


 デュラハンは、傷口からイドラ・アドミレーションを噴き出しながら、ふらふらと体勢を崩し、イドラの大釜の湖畔に仰向けに倒れる。

 二年前の闘いとは正反対の結果となっていた。

 輝化を解いて、デュラハンの傍らに膝をつき、彼女の手を取る。

「キリア、あたしは十分に理解して、納得して、覚悟したよ。キリアのこれから生き方と、キリアのことを」

 デュラハンは、まるで、斬られた痛みなどないように、すがすがしく、笑っていた。

「ありがとう、デュラハン」

 わたしも笑顔で応えた。

 彼女は、わたしの手を強くにぎり返し、語り始める。

「このイドラの大釜でキリアと対峙して、ようやくわかった。

 あたしが、聖杯浸食に失敗した理由……。

 それは、『もっとキリアと話したかったから』なんだ。

 二年前の闘いで、キリアが、ジュリアに認められたいと切実に悩んでいることがわかった。

 あたしもマリアに認められたかった。ほめられたかった。

 同じ悩みを持っていた。

 そのとき思ったの。あたしのことをもっとわかってくれるはず。キリアのことをもっとわかりたい。だからもっと話したいって。

 その気持ちを動機にして、聖杯浸食したら、聖杯を一致させることができなかった。

 それはそうよね。完全に一致させてしまったら、キリアを消してしまう。

 話すことなんてできなくなってしまうから……」

 デュラハンは照れたように顔を赤くして、さらに続ける。

「二年間、キリアといろんなことを話すことができて、本当にうれしかった。でも、一つだけ、辛かったときがあるの。それは、キリアが、ミレナ先生やリンのことを語っているとき。あたしは嫉妬していた。でも、今考えると、キリアと一番近くで接することができるのは、あたしよね。そう考えたら、全然くやしくないわ」

 キリアは、デュラハンの話を、自分の心でしっかりと受け止めたあと、応えた。

「わたしも、このイドラの大釜で、デュラハンと対峙してわかったことがあるの。わたしは、あなたに救われたということを。生きることに苦しんでいた、わたしを聖杯の中に避難させてくれた。わたしの心は二年間で十分に癒され、再び立ち上がる力も得ることができた。本当にありがとう。デュラハン」

 キリアはデュラハンの手を両手で包む。

「デュラハンがいっしょに寄り添ってくれたから……、わたしは、苦しいときを切り抜けることができた。わたしに向き合って存在や言葉を肯定して問いかけてくれる、もう一人のわたし。デュラハンはそんな存在だったよ」

 デュラハンが優しい表情で「そうか……」つぶやいた。

「そろそろお別れだ」

 彼女が改まる。

「キリアが、また自分を見失いそうになったら、あたしが、再び聖杯を奪いに現れるから、覚悟しておいてね」

「望むところよ」

 キリアはデュラハンと視線を合わせて笑いあう。

 それを最後にデュラハンの意識がなくなった。

 デュラハンの身体の輪郭がぼやけてくる。次第に人間の形ではなくなり、イドラ・アドミレーションが凝縮した黒い球となった。

 キリアは、それを両手で抱えて立ち上がる。

 周囲のイドラの大釜の風景は、次第に薄れていき、もとの真っ白な空間に戻っていった。

 黒い球を胸に抱いて歩き出す。向かう先は、光があふれるあの場所だった。


 キリアは意識を取り戻す。無事に聖杯から戻ってくることができた。

 そのとき、キリアの正面から、まぶしい光が差し込んでくる。

 朝日だ。

 雲一つない空、なだらかな稜線を描く山々、草木が豊富な大地、凪いだ湖。すべての自然が朝焼けの黄金色に染まっていく。

 思わず、言葉が漏れる。

「きれい……」

 キャリバーに戻った自分の長剣を鞘に納め、再びバルコニーの柵の方に行き、輝く朝日と黄金の景色を眺める。

 胸のすくような眺望に、深呼吸して吸い込んだ新鮮な空気、じんわり体が温まる朝日の光。考え得る限りの最高の朝だった。


 バルコニーの窓が開く。

 外に出てきたのはリンだった。

「目覚めたのね」

 リンはうなずいた。そして、キリアの輝化甲冑を見て、眉を寄せ、怪訝な様子で尋ねた。

「いったい、何をしていたの?」

「今、聖杯の中に潜っていたの」

「えっ? そんなことができるのですか?」

 そうか。聖杯の中に潜ることができるのは、イドラだけなのかもしれない。

「ああ、聖杯の中で、もう一度デュラハンと会っていたんだ」

「もしかして、まだイドラ化の影響が?」

 リンはキリアに近寄り、聖杯を見透かすような瞳でキリアの身体を心配する。

 キリアは首を横に振って、「心配ない」と答えたあと、落ち着いてリンに説明する。

「今の再開で、わたしのイドラ化は完全になくなった。これが証拠」

 そう言って、聖杯の中でデュラハンが残した黒い球を見せる。

「それは……」

「デュラハンよ」

 リンは、焦るように投げ槍を輝化し「大丈夫なんですか?」と恐るおそる尋ねる。

 キリアは微笑みながら答える。

「大丈夫。この状態なら、まったく危険はないわ」

 キリアは、じっとリンを見つめたあと、突然切り出した。

「リン、わたしの話を聴いてくれる?」

 リンは投げ槍の輝化を解き「もちろん」と返事をする。

 キリアは話し始めた。リンに伝えたいのは、自分の決意……。

「わたしは、窮屈で、息苦しいことをがまんしながら生きていた。

 そのがまんが爆発したのが、二年前のイドラの大釜の偵察任務だったわ。

 そこで、デュラハンに出会った。彼女に負けて、黒のアイドルにされてしまった。

 でもね、今のわたしにとって、黒のアイドルだった時間は、とても大切な時間だった。

 それは、がまんを続けて、ぼろぼろになっていた心をいやす時間であり、デュラハンとの対話によって自分の過去、現在、未来の生き方を考える時間だった。

 それらの時間がなければ、リンたちキャメロットとの戦うところまで、きっとたどり着けていなかった。

 わたしがわたしになれたのは、デュラハンの存在があったからなんだ……」

 リンが固唾をのんでわたしの話を聴く。

「これからも、わたしがわたしであるために……、わたしは再びデュラハンと一つになる」

 キリアが黒い球を捧げ持ち、胸に近づける。

「ちょっと待って!」

 リンは、再び焦った様子でキリアを止めて、確認する。

「そ、そんなことをしたら、またイドラ化してしまうわ!」

 キリアはうなずく。

「そう、だね。その可能性は十分にあるわ。もし、わたしが、イドラ化を始めたら、わたしの聖杯を……、リンの投げ槍で貫いてほしい」

 キリアは、自分の真摯さを身体と心のすべてで表現するつもりで、リンに伝える。

 リンは迷い苦しむ表情を見せたあと、ゆっくりとうなずく。

「わかりました」

 リンはそう言うと、「がんばってください」とキリアの手をにぎる。

「ありがとう」

 キリアはリンに感謝し、表情を引き締めた。

 その場で、朝日に向けて、デュラハンのイドラ・アドミレーションが詰まった黒い球を捧げ持つ。

「デュラハン、これからもいっしょに行こう。わたしが今の気持ちを忘れてしまうとき、再びわたしの聖杯を狙ってほしい。そのときは闘おう。闘って勝った方が、聖杯を支配するんだ」

 キリアは、ゆっくりと黒い球を自分の胸に押し当てた。

 球は抵抗なくキリアの体内にすっと入っていく……。

 どくん!

 身体が揺れ動く。

「ううっ……」

 まるで、球が破裂したようだった。その直後、イドラ・アドミレーションが全身を駆け巡る。ぞくぞくと寒気がする。イドラ・アドミレーションを吸収したときと同じ、じわじわと体の内側をまさぐられる感覚。

 立っていられず、膝をつく。

 リンが輝化し、輝化甲冑と投げ槍を生成した。

 リンも同じ気持ち悪さを味わっているかのように、顔をしかめている。

 キリアは、目を閉じ、胸に手を当てて、一度大きな深呼吸をする。はいて、吸って。体の中の彼女が迷わないように、心を落ち着かせる。

「はあぁ……」

 次第に不快な感覚がなくなっていく。キリアが両脚で立てるようになるまで三分もかからなかった。

 聖杯を確認しても、イドラ化が始まるほどのイドラ・アドミレーションの蓄積はなかった。

 聖杯に、彼女を受容することができた。

 ありがとう。デュラハン。これからもよろしく。

「もう大丈夫。心配かけてごめんなさい」

 キリアは、リンに無事を告げる。

 リンは、投げ槍を納め、まっすぐキリアを見て、言った。

「キリア、こんなことができるのは、あなただけです。本当にすごいです」

 花がふわりとひらくように、優しい笑顔を満面に浮かべた。

「やっぱりキリアは、わたしの憧れの人です。」

 リンの言葉を聴いたとき、落ち着かなさを感じた。

「私なんて」という自分を卑下する気持ち。それは心の大きな部分を占有していた。でも、うれしさや恥ずかしさ、そしてリンを大事に思う気持ちが心の中にちゃんと存在することがわかった。

 二種類の感情が同じ場所にあるから、落ち着かないのだろう。

 どちらの感情も、私のもの。でも、私が大切にしたいのは……。

 キリアは自分を卑下する気持ちを脇に置いて、うれしさや恥ずかしさを選んで、力いっぱい抱きしめる。

 心を弾ませながら、はにかみながら、顔をほころばせてにっこりと笑って、何も考えることなく、自然に言葉が出てきた。

「ありがとう。リン。うれしい!」


 リンと二人で朝日が昇るのを見ていた。

 リンがキリアに尋ねる。

「キリアは、これからどうするんですか?」

 キリアは、自分の意思や気持ちをばかにされ、否定される恐怖を乗り越えて、リンに答える。

「私は、もう一度アイドルになって、今までの活動をすべて、もう一回楽しみたい!

 それから、ノヴム・オルガヌムから私の友達、ミーファとリアラの二人を必ず取り戻すわ。

 そして、アイドル活動を存分に楽しんだら、私の大切な先生、ミレナ先生みたいに自己表現に悩んでいる人のサポートができる人になりたいと思っているの」

 リンが再び尋ねた。

「それは、キリアの正直な気持ちですか?」

「うん。間違いなく、私が望み、臨んでいる未来だよ」

 しっかりと言い切ることができた。

 生まれ変わって、自分のことを好きになれたら、葛藤を乗り越える力、やりたいことや楽しいことに正直になる勇気を手に入れることができる。

 その力と勇気をもって、生きていく!


 胸の奥にデュラハンの存在を感じる。

 あなたはもう一人の私。私とあなたで、ようやく私になれた。

 誰にも評価はされていないけど、私はここにいる自分がとても誇らしいよ。ここから未来を臨めることに、わくわくしているんだ。

 こんなふうに考えることができるようになれて、本当に幸せ。

 あなたは、どう思う?


 キリアは朝日に向かって、生まれたての赤子の産声のように、力の限りに声を出す。

「私は、私が大好き!」

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