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後輩曰く

作者: P2

 僕は、心霊関係の話を聞いたり、見るのが好きだったが、心霊写真を生で見るのは初めてだった。


 金曜の居酒屋で会社の先輩と後輩と飲んでいる時に、先輩の無茶ぶりで、各自、面白い話をすることになった。僕の話は、ともかく、後輩は、ないなぁと散々悩んだ後、そういえば怖い話がある、と携帯写真を見せて言った。その写真は、5人の男子が笑顔で写った、仲の良さげな集合写真で、真ん中に後輩が写っていた。

「実は、皆ほぼ初対面なんです。自転車の旅の途中で偶然ゲストハウスで出会った人で、ゲームとかして、一晩で仲良くなったんです。これは朝、記念に撮った自撮りの写真です」

 ゲストハウスの存在は知っていたが、利用したことがないため、詳細は分からないが、1部屋に何人も雑魚寝のように寝泊まりする格安の宿泊施設だそうだ。夏だからか、皆、半袖であった。

 なんも変哲もない写真だと思っていたが、僕は、後輩の左隣の男の子の腕のなくなっていることに気づいた。否、正確に言うと、上腕二頭筋より先が徐々に薄くなって、手は完全に見えなくなっていて、消えるというよりも、薬剤で溶けているようにも見えた。

 僕は、こんなにはっきりとした心霊写真を生で見たのが初めてで、正直、感心した。怖いという意識はなかったが、身の安全が知りたくなった。変に映ってしまった人が、怪我するとか、死ぬとか、よくある話だと思った。

「この子大丈夫なの?」

「はい、大丈夫じゃないですね」と後輩が言った。


 後輩曰く、その日は、その子(Aさんとする)と空港まで一緒で、後輩は自転車旅を続け、Aさんは広島の実家に帰る予定だったそうだ。数日後、「Aさんが帰ってきていないし、連絡もつかないと両親から連絡があったが、なにか知らないか?」とゲストハウスのオーナーから電話で訊かれた。Aさんは突如失踪したのだ。後輩はAさんに直接連絡を取ってみようと思い、携帯に電話を入れてみたが、やはり繋がらなかった。

 さらに数日後、忘れかけたころに、Aさんから返事のメールがあった。『大丈夫です。ご迷惑をお掛けしました。元気です』とやけに他人行儀な文章だったが、後輩はひとまず安心した。同日、ゲストハウスのオーナーから電話があった。終わった話だと思っていたが、さらに不安を煽るような内容だった。

「Aさんは、大阪で腕を骨折して見つかって、今は病院に入院しているそうだ」

 なぜ広島の実家でなく大阪にいるのか、そして腕を骨折しているということに、再び不安の種が植え付けられた。Aさんから直接事情を訊こうと、後輩は電話することに決めた。

 call call

 電話は両親の母が出た。

「Aは寝ています。大丈夫ですから、もう連絡は不要です」

 一方的に切られてしまい、着信拒否となってしまった。何か隠そうとする両親の母の態度が明らかに怪しかった。

 他の旅のメンバーやゲストハウスのオーナー曰く、必ず母が電話を応対し、誰もAさんの声を聞いていないとのことだった。Aさんに再びメールもしたが、返事は来なかった。思い返すと、あの他人行儀なメールも本当に本人が打ったのか、分からないと後輩は感じたそうだ。

「そのゲストハウスは何か様子が変でした。霊感がある子が体調が悪くなりましたし、俺も霊感がないのですがやたら寒気がしたりしました。もしかしたらAさんは憑かれてしまったのかもしれません」と後輩は言った。


 僕は、その写真を自分の携帯に保存した。携帯に保存しないで、忘れてた方がいいです、何かあったら大変です、と後輩は渋っていたが、僕が半ば強引に携帯に転送した。こんな身近な人の話だから、他の人への話題提供や話のタネになると簡単に考えていた。何かの機会にと、思っていたが、ついにその機会が来た。霊感がある人と知り合うことが出来たのだ。

 僕は写真を見せた。なるほどね、とその人が言った。

「この人は確かに危ないね。でもこの人よりも、親指が完全に消えている隣の子の方がヤバいね」

 Aさんのことばかりでまったく気が付かなかったが、下げた手の親指がなくなっている人がいて、それが後輩だった。

 

 後輩曰く、旅からまだ1年立っていないという。

金曜日に後輩と飲んだ時の話をまとめました。もちろん盛ってますよ。写真は本当ですけど。

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