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ヤドカリ警官  作者: 直井 倖之進
10/14

『ヤドカリ警官』⑨

「授業中なのに申しわけない。もう何度も聞かれたかも知れないが、話をしてもらってもいいかな?」

 南校舎二階。四年二組の教室前廊下でそう真中が請うと、(おく)(むら)(ゆう)は笑顔で答えた。

「いいよ。何でも聞いて。勉強してるより、こっちのほうがずっと面白いから」

「そうか。だが、残念ながらそう長い話にはならないと思う。とりあえず、昨日、隼人を見た時のことを教えてくれないかな?」

「分かったよ。えっと、昨日の四時ごろなんだけど、僕、宿題のプリントを忘れたのに気づいて、教室に取りに戻ったんだ。そのあと、北校舎のビニルハウスの前を通った時に、隼人君を見かけた。隼人君、何かを拾っていたみたいだったんだ。それで、いい物だったら分けてもらおうと思って近づいたんだけど、マッチ箱だって分かって。僕、マッチなんて要らないから、話しかけもしないでそのまま家に帰ったんだ。それだけ」

「なるほど。では、マッチ箱は、隼人が持っていたんじゃなくて、その場で拾ったということなんだな?」

 真中が再確認する。

 優は大きくうなずいた。

「うん、そうだよ。だって、あのマッチ、月曜日から裏庭に落ちたままになっていたんだから」

「月曜? ということは、三日前からか?」

「そう。だから、僕、隼人君の拾った物が、マッチだってすぐに分かったんだ」

「それで、その話、俺以外の警察官には?」

「ううん、してないよ。聞かれてないから」

「そうか」

 それを聞き、思わず真中の頬が緩んだ。

「どうかしたの?」

 首をかしげる優に、真中は言った。

「あぁ。今の奥村君の証言で分かったんだ。今回の事件の犯人、隼人じゃない可能性が出てきた」

「え、どうして?」

「事件の前日、一昨日の夜の天気を思い出してみろ」

「一昨日の夜って、ひょっとして大雨が降った日のこと? 雨の音が煩くて、全然眠れなかったよ」

「そう、その日だ。そんな雨の日に、外にマッチ箱が置いてあったらどうなる?」

「それは、マッチ箱は雨に濡れて、……あ!」

 教室は授業中だということも忘れ、優は大きく手を打った。

「そう。雨水で湿ってしまったマッチが、使いものになるわけがない。つまり、もし、隼人が犯人だったとしても、マッチを使ったという線は消える。そうなれば、全てを洗い直す必要が出てくるし、放火ではなく単なる火災だった可能性も出てくるんだ」

「おお。何だかよく分からないけど、お巡りさん、探偵みたいだね」

 優が真中に尊敬の眼差しを向けてくる。

「探偵、か。俺たち警察官にとって、それは褒め言葉じゃないけどな。まぁ、ありがとう。奥村君、警察への協力に感謝する」

「どう致しまして。頑張ってね、お巡りさん」

 照れたように笑う優と握手を交わすと、真中は密かに独自の捜査を行うために一階へと戻った。

 ご訪問、ありがとうございました。

 今話、少し短くなってしまいましたが、次話以降、完結までの区切りを考えるにこうなりました。

 申し訳ありません。

 しかしながら、GWということで、あれこれご予定もあるかと思いますので、これくらいでちょうどよいのかも知れませんね。

 次回更新は、5月7日(日)を予定しています。

 それでは、引き続き、素敵な休日をおすごしください。

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