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「やめて・・・・・この子は、私の子なんです!
私が代わりに・・・代わりになりますから・・・!」
「ご領主様!島主様!アルバという奴を差し出してください!」
「島主様!このままじゃ俺らはアクリシオス島の
奴ら、いや、他の島から締め出されてしまいます!」
「聖獣を逃がした、アルバと言う奴を!」
どうやってアルバの居場所を知ったのか、
島民達が、領主の屋敷に押し寄せてきた。
門を破りそうな島民の様子に
しかし、
領主の屋敷の者は、アルバを守ろうとするが、
とても押し切れそうに無かった。
「大丈夫・・・今のうちに逃げましょう」
このままでは押し入られると、
震えるアルバを、領主の館の女が
導いてくれようとした。
戸惑いながらアルバは首を振るが、
優しくにっこり笑って女は、手を引っ張った。
「大丈夫・・大丈夫・・」
姿が見えないように上から被るように
そっと布を被せて笑顔でアルバを連れて行く
様子におずおずと従って付いて行く。
(本当に良いの?
本当に大丈夫なの?)
合流したレオンが、アルバが頭から被った布を捲って
元気づけるようににっこり笑い、ギュッと守るように抱きしめてくれた。
人の叫び声、門と壊そうとする音が
耳に入って不安に思う。
アルバとレオンを守るように支える女の腕が震えているのが
見えて、アルバは、申し訳なくて眉根を寄せた。
「あ・・・!!」
レオンが一言そう言ったと思うと
地面に倒れた。
飛んできた石から咄嗟にアルバを庇って頭に
石を受けたのだった。
バラバラ投げつけられる石に、
今度は、女がアルバを庇うが、
「いたぞ!裏口から出てきた!!」
という、叫び声と共にアルバ達を取り囲むように
やって来た男達が、
女をアルバから引き離そうとして、引き倒した。
目の前で男達に倒された女の人と、
頭から血を流して地面に膝を付くレオン
狂気に満ちたような島民達の表情に
アルバの中で何かが暴れそうになっているのを
感じた。
「あ・・・あ・・・ああ・・・」
アルバの肩に腕に島民達の手がかかって激しく
揺らされ、アルバの体が島民達の集団の中に
崩れ落ちるように引っ張り出される。
自分の中から湧き上がる熱いような
ものと闘うのに必死で島民達が
何を言っているか分からない。
アルバは、それでも口元を押さえて
耐えているのに、周りに静かに風が
立ち上っていくのが分かる。
もう駄目だ・・・!
アルバが、そう覚悟した瞬間、
別の方向から逃がされえるところだったのだろうに
人ごみを掻き分けて此方に向かってくる
母、エーティルが目に映った。
「やめて・・・・・この子は、私の子なんです!
私が代わりに・・・代わりになりますから・・・!」
母様!!
アルバの瞳から涙が零れ落ちた。