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「・・・・母様位・・・ね・・」
「安心しろ、アルバ、
此処は、俺達の根城の島の一つだ。
お前達の仲間は助けられたんだよ」
今、アルバとレオンは二人、
地面の敷物の上にそのまま並んで座らされ、
目の前の、粗末な机の上に、
何かが書かれた紙と、平たくて固い石と、
先が尖った柔らかい石が置かれているという状況だった。
「根城は分かったけど・・・
何なの?これは・・・・と、言うか、
レオン・・・かわいいね・・。」
良く分からないけれどと言いたげに首を傾げてから
アルバは、横に座っているレオンの方を向いて
ジッとその照れたような横顔と姿を見つめた。
そして、にっこり笑ってそう言ったアルバに対して、
「こ・・・っちを・・!
だから、こっちを見るなって言っているだろう!?」
レオンは、視線が合わせられないまま
見る見るうちに顔を真っ赤にしたかと思うと、
吼えるような大声で叫び、
これ以上は耐えられないというように
机を蹴倒して立ち上がった。
アルバは、どうしてレオンがそんな反応をするのか、
分からなくて再び首を傾げた。
アルバとしては、
レオンが、海賊服じゃなくて、
どこかのお嬢様のようなアクアブルーのヒラヒラとした柔らかい服を着て、
太陽のようなキラキラ輝く金の色の、
フワフワ癖っ毛が、ところどころ小さな編みこみになっているのが、
健康的に焼けた肌とサファイアブルーの大きな瞳と
相まって
凄く可愛いと思ったから、
それを素直に言っただけなのに
なぜ、レオンは、真っ赤な顔して怒って
見るなというのだろうか?
もったいないな・・
と、思った。
どういった理由で、
そんなものが用意してあるのか分からないが、
どうやら、机の紙や石は、二人に勉強をさせる為の物
だったらしく、
アルバと、少し落ち着いたレオンは、
レオンが蹴倒した机を戻し、
突然入ってきた
どこかの老師のような老人に
言われるまま、紙の文字を石に書き取っていた。
黙々と、そうしているうちに、
アルバと、レオンの前に
島の女の人なのか、少し赤黒い肌をした、
瞳の大きな娘が、
無言で真っ二つに割ったヤシの実を、置いてくれた。
「ありがとう」
にっこり笑ってアルバがお礼を言うと、
その娘も微笑み返し、頷いてくれた。
その笑顔を見て、思わずアルバが、
瞳をパチクリとしていると、左側に座っていたレオンが、
アルバの耳元に唇を寄せて、何だか低い声で、
「美人だな・・・・・とか、
胸が大きいな・・とか思って見て無いだろうな?」
と、言って、
吊るされていない左手を伸ばして、
ポンッと、アルバの、肩を少し強く握り締めた。
アルバは、驚いたようにレオンの方に顔を向けると、
「ううん・・・・母様位綺麗な人だな・・
とは、思うけれど、胸が大きいかは、分からないし、
顔しか、見てなかったよ」
と、返事した。
「・・・・母様位・・・ね・・」
アルバの答えにレオンは、微妙な表情をすると、
アルバの肩から手を放すと、
目の前のヤシの実ジュースを飲み干して、
プルプルとした中身を食べた。
「・・・・美味いぞ・・・これ・・・
新鮮で、瑞々しい、アルバも食べてみれば良い!」
ごまかすようにレオンは、そう言ったが、
結局、『母様位・・・ね・・』の後の微妙な表情は
何だったのだろう
と、アルバは、思った。