18
全てを捧げます
「僕に力を貸してください。
偉大な海の王、『ケートス』。」
気づけばアルバは、大きな海原の上に立っていた。
見上げる視線の上には裂けた大きな口、
軍船が迫り、人々の叫び声が飛び交うさなか
だったというのに、
どこか遠い世界のようなその導かれた場所で、
アルバは、
父譲りの朱金の光を紡いだかのような
暁の髪を海の潮風に遊ばせ、
母譲りの海色の瞳より
人の体より溢れ出る海の雫を溢れさせながら
精霊達を語り合う力を持って、
海の怪獣にして、聖獣、『ケートス』に語りかけた。
「僕は、守りたいのです。
ずっとずっと、全てを・・・優しくしてくれる皆を
助けたい、
苦しみを取り除いて
流れる涙を止めたいのです。」
ケートスは、その幼く愚かな願いを
目を細めて聞いた。
「僕は、それしか出来ないから
僕の全てあげますから
ケートス」
全てを捧げます
ケートスの瞳が揺れた。
全てが終わった後、アルバは、
助かったレオンに頬を叩かれた。
聖獣に全てを捧げる約束をしてしまった
愚かで優しいアルバが
レオンには哀れでたまらなく感じた。
「何故・・・・何故お前は、いつも
自分を犠牲にしようとするんだ」
俺も一緒に居るのに。
レオンの涙がアルバにはたまらなく感じて
アルバもポロポロと涙を零した。
聖獣を従えてしまったアルバの
これからの運命を思って
レオンは、俯き涙を零す
アルバの頭を抱き寄せて唇を噛み締めた。