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「レオンは、いつも僕が、苦しい時や哀しい時、
危険な時、一緒にいてくれる・・・・
母様とは、別の大切な、もう傷つけたく無い人なの、
僕にとっては、そうなの・・・・・」
『アルバ~!
小さな英雄アルバ~!!』
アルバは、英雄だった。
島のどこに行ってもそう呼びかけられた。
すがるような瞳に、しかしほんの少しの畏怖をたたえた島民の瞳に
アルバは、戸惑い恐怖した。
「どうした?」
レオンの声に、薄くごまかすような微笑みを浮かべながら、
波打ち際の岩場に座るアルバは、レオンの方を振り返った。
「・・・・なんでも・・無いよ」
アルバのふわりとした儚げな笑顔を見て、
レオンは、唇を噛み締めた。
「・・・・お前・・アルバ、お前は・・・・」
「あれ!・・・・レオン、傷口の布が!」
レオンの腕の傷口の布が取れかけているのに気づいたアルバは、
そっと、レオンの手を取ると自分の隣に座らせて、
布を巻き直した。
レオンの体中は傷だらけで、
そのうちの少なくないいくつかは、アルバを守って付いたものだった。
「・・・・・ごめんね・・・レオン、こんなに傷ついて、
レオンに僕は、守られてばかりだね」
アルバの瞳からポロポロ涙が零れおちた。
慌てたように手をパタパタさせたあと、
レオンは、俯いたアルバの頭の上にコツンと
自分の額を載せた。
「馬鹿・・・・泣くな。
その・・・やりたくてやったというか、
お前が、俺・・・・いや、私にとって大切だったから
無意識に守ったんだから・・だから泣くな。」
そう言って、レオンは、恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めた。
「それは、僕にとっても同じ事、
僕にとってもレオンは、大好きで、大切な人なんだから」
顔を上げたアルバは、間近にある、レオンの顔を
見て、徐々に頬をピンクに染めていった。
「レオンは、いつも僕が、苦しい時や哀しい時、
危険な時、一緒にいてくれる・・・・
母様とは、別の大切な、もう傷つけたく無い人なの、
僕にとっては、そうなの・・・・・」
ケートスの力も、島民達の瞳も言葉も
アクリシオス島主リュデクテスの復讐も怖いけれど、
レオンが傷つけられるような事になったら
僕は、きっと全力でそれを阻止するだろう
アルバは、そう思った。




