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アルバの意思ではどうにでもならない
何か大きな流れのようなものがアルバを飲み込んで行くのを強く感じていた。
「レオン・・・・レオン!」
アルバは、倒れていたレオンの半身を起こして揺り動かした。
(そう言えば、ケートスと話している時にレオンの声が聞こえなかった。
ケートスと、話をしていたのは、僕だけだったの?)
アルバは、少し震えながら意識が無いレオンを抱きしめた。
水の精霊の力を借りて岸部に戻ったアルバ達を
遠巻きから島民達が伺っていた。
戸惑うアルバを他所に、クレイコイ島領主イクティヌスが
島民達を掻き分けてアルバ達の元にやって来て、
一緒についてきていた男にまだ気絶している
レオンを預けると、アルバをじっと見つめた。
オロオロとイクティヌスを見上げるアルバを、徐に抱き上げると、
イクティヌスは、全開の笑顔でアルバをグルグルと回した。
アルバの小さな身体は、風を切って振り回され
クラクラする視界の中、イクティヌスの周りに響き渡る声が聞こえた。
「英雄だ!!小さな英雄だ!
我らの敵であるアクリシオス島リュデクテスを
ケートスの力を持って追い払ったぞ!」
イクティヌスの言葉と、島民の割れんばかりの歓声にアルバは戸惑った。
(でも、沢山の船に乗っていた人が流されてしまったよ、
大怪我した人や、死んだ人だっていたかもしれないよ)
アルバの意思ではどうにでもならない
何か大きな流れのようなものがアルバを飲み込んで行くのを強く感じていた。