13
二人の想いに共鳴し、
”それ”は、そこに出現した
「アルバ!」
「レオ・・ン・・・・・」
それは、突然の事だった。
日が落ちきってすぐ、
アルバと、レオンは、隠していた小舟に乗り、
海へと漕ぎ出した。
見つからないようにはしたいが、
あまりグズグズして、アルバが再び捕まっては、
元も子もないからだった。
時間との戦い、静かな中にも緊張して、
アルバとレオンは、小舟を漕いでいた。
もう少しで逃げきれる
アルバもレオンもほんの少し心が緩んだその時
一本の矢がアルバの胸を貫いた。
薄れる意識の中で、青い青い大きな瞳を見開き
手を伸ばすレオンの姿と、近づいてくる幾つもの火の灯り、
光に照らされるレオンの金色の髪、
そして、こちらに向かって放たれる数本の矢の照り返しが見えた。
矢を出来るだけ避ける為に
アルバと一緒に海に飛び込んだレオンの腕の中で
アルバは、願った。
誰か、助けてお願い、
強くてでもとっても優しいレオンをこれ以上傷つけないで
心臓に近い鮮血を海へと流しながら、アルバは願った。
激しく動いた為、海へ飛び込んだ為、レオンの傷口が開き、
庶流ながら、『海の聖獣』を従えていた血が、海へと流れた。
レオンも同じく願った。
誰か、助けて欲しい、
この優しくて、純粋なアルバをこれ以上傷つけないで欲しい
たがいが、たがいを想い
願った。
海は、その想いに共鳴した。
神の子の血を引く”アルバ”と
『海の聖獣』の契約者の血を持つ”レオン”と
二人の想いに共鳴し、
”それ”は、そこに出現した。