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・・・・・!!?・・・あれ?今のは何?
「アルバ、暗くなるのを待って一緒に逃げよう
聖獣なんて、本当はいない
アクリシオス島の領主リュデクテスの策略なんだ、きっと・・・
くそ~くそ~この手首の鎖はなかなか切れないなぁ・・・・!」
どうしても切れない手首の鎖を切ろうと俯いているレオンの表情を
伺う事は出来なかったけれど、
レオンの悔しげな声には、泣き声が混じっていた。
「泣かないで・・・・お願い泣かないでよ」
アルバは、そんなレオンの声を聞いて、
鎖を必死に断ち切ろうとしている振動に胸が痛かった。
「ここから逃げても逃げきれないよ・・・
それに、レオンもここの領主様も、母様も
島民の皆も困ってしまうよ・・・迷惑かけたくないよ。」
アルバが、恐怖を押しとどめての無理やり発した言葉の
すぐ後、レオンの渾身の頭突きがアルバの額にきまった。
痛みで星が飛ぶ視界の中レオンの怒りに満ちた声が響いた。
「この~大馬鹿後ろ向きアルバがぁ!!
ほっとけって言ってもほおってやるか!
絶対絶対、生き残らせてやるぅ!!
いいや!いっそのこと死んでもお前を追いかけて
蘇らせてやるからな!分かったか!」
アルバは、何故か至近距離でそう叫ぶレオンの顔が
涙でグチャグチャで、怒りで真っ赤になっているのにもかかわらず
<それどころか泥と海水で随分汚れていた>
その時、とても綺麗で格好良くて
輝く黄金の髪と、キラキラ光る青い瞳に
光の女神様のようだと思った。
キレイだねレオン・・・
無意識に呟いたのかも知れない
一瞬の後、
みるみるうちにレオンの顔が真っ赤に染まって
気がついたら二人の唇が触れ合っていた。
(・・・・・!!?・・・あれ?今のは何?
あんまり顔が近づきすぎていたから
たまたまぶつかっちゃったの?
それとも・・・・?)
顔を離した後、二人して首を傾げた。
「・・・さ・・・・さぁ・・・
も・・・このままで・・・さあ・・・行くぞ・・・」
そう言うレオンに今度は逆らわず
切れない手首の鎖はそのままで、
アルバは、差し出されたレオンの手の上に
そっと手を重ねた。
二人は、暗くなるまで潜む為の
岩場へと向かった。