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「僕・・・・平気だから・・・
僕、今、皆を傷つけない為にどうしたら良いか
他に思いつかないから・・・
だから、僕は、僕に与えられた事をするよ」
「アルバ!・・・・アルバ!!・・・」
岩へとアルバを括りつけ、島民達が振り返らずに
小舟に乗って去っていった後、
岩陰から小さな声が聞こえた。
「・・・・レオン!?・・・・・」
それは、ずっと隠れて待っていたらしいレオンだった。
「・・・お前は、初めて出来た同じ年頃の友だ・・
そのお前をみすみす見捨てることなど出来ない
お前は良いやつなのに・・・・お前は、
とても優しくて、すごく清くてキレイなのに、
何故こんなことになるんだ!?」
真剣なレオンの言葉にアルバは、涙が溢れそうになった。
岩に括られているためにレオンの方を向けないけれど、
胸が熱くなってさっきまで感じていた恐怖が
少しだけ和らいだ気がした。
「僕・・・・ありがとう・・・
僕、レオンや皆に会えてよかったよ・・・
ごめんね、怪我させて・・迷惑かけて・・・・・ごめん、
だけど、嬉しかったよ・・。」
逃がしてやるから、
レオンが、そう言った後、
鎖を切ろうとする振動が伝わってきて、
今度こそアルバの瞳から、後から後から
涙が零れおちた。
「・・・巻き添えくうよ・・・レオン・・・・本当に
海の聖獣が来るのか、
それともそれに見せかけた何かが来るのか、
分からない・・・でも、レオン、危ないから
お願い、逃げて・・。」
恐怖でガチガチと鳴る歯の根を
無理やり抑えて、アルバは、レオンに言う。
「僕・・・・平気だから・・・
僕、今、皆を傷つけない為にどうしたら良いか
他に思いつかないから・・・
だから、僕は、僕に与えられた事をするよ」
青ざめた顔で、それでもアルバは、
微笑んだ。




