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「帰還」

頑張って読んで下さい。

「......やっと、終わり、か」


漂う腐臭と肉が焼けたような臭いが蔓延している中、百人の人影が煙の中にぼんやりと見える。


「これで俺達の任務は終了だな」


人影が揺らめき、声が聞こえてくる。


「そうね。私達は戻れるわ」


過去を懐かしむように。


「皆、戻ろう。いや、帰ろうか......僕達の世界へ」


その言葉に皆無言で首を縦に振った。



・・・・・・・・・



今、俺は自分の家の前に立っている。

すぐに入ればいい。誰でもそう思うだろうがわけが少し違う。

そもそもここにいることさえ八年振りなのだ。

多少の足踏みは仕方ないだろう。

だがここでうだうだしていても何も進歩しない。

だから、取り敢えずインターホンを押すことにした。

勇気を出して押すと軽快な高い音が狭い範囲に響き渡る。

すると、はーいと返事が聞こえ、どちら様ですかと聞かれた。


「えと、あの......愛野(あいの) 修理(しゅうり)です」


そう答えた途端、通話が切れて今度は家の中から騒々しい足音が外に漏れてきている。


「修理!?」


まず出てきたのは母親である。


「お兄ちゃん!?」


次に出てきたのは......誰だこの子。

ひょっとして妹、なのか。


「ああ、うんそう。俺だよ。修理だよ」


「本当に修理なの?」


「本物だよ。八年振りだな」


母親はパチクリさせていた目から次第に細めていき、ついには大粒の涙を流し始めた。


「え、ちょ、泣かないでくれよ」


「うん、ごめんね、ごめんね」


泣きながら謝られても困り果てるだけだが。

そして一方の妹は俺に近づいてきて......ちょっと、顔が、近いんだけど。


「本物か確かめよう」


両手で突然顔を触り始め、上半身のいたるところを触られまくった。

ちなみに男性がやると妹だろうとなんだろうと捕まります。


「うん、本物だ」


以前とは顔つき、体格ともに違うのになぜ断言できるのか分からない。


「で、誰?」


「うぇ!?」


妹らしき女の子が甲高い変な声をあげた。


「いや、だから誰なんだ」


「わ、私のこと覚えてないの? お兄ちゃんの妹の愛野 理乃だよ」


「へ〜」


俺がそう答えると母親はそのやり取りに絶句していた。


「修理、あなたもしかして記憶が無いの?」


「ああ、九歳の頃に連れ去られたことは覚えているがその前後、今に至るまでの記憶が一部欠落しているんだ」


それを聞いた二人は難しそうに考え取り敢えずは家の中に入ろうということになった。


家の中は以前より変わってはいたものの面影は残っており懐かしさを感じる。

リビングはだいぶ変わっているがキッチンやテレビなどの位置は特に変わっていない。

ソファに腰掛けて改めて話を再開する。


「単刀直入に聞くわ......修理、あなた今までどこで何をしていたの?」


「そうだな。どこから話そうか」


実のところ隠さなければいけない事情もある。自らの特殊な体質は決して明かしては駄目だと分かっているから。


「まず、俺は研究施設にいた。そしてそこで実験体としてではなくその雑用のような形で手伝わされていた」


「研究施設?」


首を小さくかしげながら妹が聞いた。


「ああ、その研究っていうのは銃の開発っていう内容のものでな。恐らく人件費を割かなくてもいいように誘拐したんだろう。確かちょうど百人ほどかな」


「それで食事は? お風呂は? 暴力は振るわれなかったの?」


母親が真剣な表情で顔を近づけてきた。

ちょっと怖いと内心思う。


「そこらへんはかなり気を遣ってくれたみたいで労働を円滑に進めるために睡眠時間と食事、それと衛生面ではかなり良い環境だったよ。結局その後に救出してもらって今に至るわけだけど」


実際は人体改造をされていたのだが。

さすがにそんなことは言えない。


「はあ、良かった。今ね、とても嬉しいのよ。あなたが元気で帰ってきてくれて」


「そうだよ、これでまた四人で暮らせるね!」


そこで母親が気付いたように携帯を取り出す。


「そうだわ、お父さんに知らせないと!」


電話してる間、妹?が質問をした。


「お兄ちゃんは学校どうするの?」


学校ね。思えば小学校の時に誘拐さらたんだっけか。

が、しかし人体改造ついでに学問に関する知識などは高校卒業レベルのものであればほとんど完璧にこなせるとかいうインプラントチップを埋め込まれている。


「まあまだ十七歳だからなあ。通うとなれば高校か」


ただし、ただの高校ではない。

全ての学校は超能力育成という新たな教育システムが二十年ほど前から導入されている。

だからこそ才能がものをいう世の中に変わっていっているのも一つの現実である。


「才能なんて持ち合わせてないから。入れたとしてもかなり下の方だろうな」


「じゃあ私の高校に来てよ。それなら私だって色々助けになるよ。こう見えてもランクAの超能力者なんだから」


ふふんと腰に手をつきドヤ顔をする妹。

何故だろうか。なんかこう守らなければいけない使命感が、これは欠落してるとはいえ兄としての記憶か何かが少し戻っているのだろうか。

言葉にすると。


「そのドヤ顔、守りたい」


「うぇ!?」


本日二度目の奇声いただきました。


「いや、今のはやっぱ無かったことにしてくれ」


「わ、わかった」


電話を終えた母親が戻ってくる。


「お父さん今から直ぐ戻るって言ってたわよ」


「そうか。父さんと会うのも久し振りだな」


当時は身が引き締まって凛々しい感じだったのだが今はどうなんだろうか。やはり太ったりしてるのだろうか。


「ママー、お兄ちゃん私と同じ高校に行きたいんだって」


「え、そうなの?」


いや、行くとは言っていないんだが、まあ他に選択の余地はないか。


「ああ、うん」


「そう、でも編入試験とか難しいわよあの学校。それに勉強は大丈夫なの?」


「そこは多分大丈夫だと思う。勉強の時間もくれたから」


「そうね、なら一度受けてみましょう。理乃と同じ高校なら安心できるし」


「うん! それがいいよ、お兄ちゃん試験頑張ってね!」


「お、おう」


そんな満面の笑みで言われたらなんだか頑張らないといけない気がしてきた。

実際勉強しなくても大丈夫なんだけどな。


「それで私の事も思い出して欲しいな」


「そうだな」


自分の家に帰ってきたんだ。

ここはとても平和だ、と改めて実感が湧いた。

だからこそ守りたい。

俺を忘れないでいてくれた家族。

居場所を残して温かく迎えてくれた家族を。

決して奴らには手だしなんかさせるものか。


化物共には触れることさえ許さない。

だから守る。

一人の、人の手によって生み出された怪物として。


自分に継続できるかは分からない。

飽きないように頑張ります。

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