ニュー・ワールド
時はキリスト誕生から二千十五年、百年前の地球への隕石衝突で発見された鉱石・ライトジュエル。見た目はただの鉱石だが、地球上には存在しない物質が含まれており、百年前の記述は真実だと証明された。
ここで説明をしておこう。気力を持たせてほしいと願う。
マグネシウム燃焼による有害物質・二酸化炭素の発生がないという特徴を持つ。
アルミニウムは酸化しやすいという欠点を持つが、常温常圧で良い熱伝導性・電気伝導性を持ち、加工性が良く、実用金属としては軽量である。
この二つの効力を併せ持つような新物質が大量に含まれているのがライトジュエルだ。
元素記号はLq。叩き割ると中から金色の金属が出てくる。K24では表せないほどの明るさである。
新物質の複合によって我々は「超能力」というのを得ることができる。しかしこれはあくまで理論値であって、実際使える者は地球上にまだ存在しないとされている。それほどの絶大なエネルギーなのだ。
この絶大な力を誇るライトジュエルは人類の進歩に影響を与えた。
存在する物質のデータ化、すなわちディジタル化の実現によって、ネットワーク回線を使用して遠く離れた場所への転送、これは、受け取り側のアドレスを指定して、Eメールに添付する形で使用できる。ただ物体の解析には多少時間がかかり、膨大なデータ量、圧縮解凍メモリは最低限128GB要する、主流のEメール受信可能な機能の平均がそれだから、大して問題にはならないと思う。
これを利用して自分自身がネットワーク上に入り込むことも可能となり、本当の意味でのネットサーフィンが出来そうだ。
そして、最大の功績が「タイムマシン」の創生だ。
これまで光の速度に近づき、宇宙を飛び回ることで宇宙船内の時間が遅く進むということは実証され、事実上の未来への飛行は可能とされた。
しかし所詮未来に行くだけで、現代に戻る、つまり過去にいけないのだ。
これを覆したのがノーベル物理賞を受賞した桜乃・U・理樹。今から約二十年前に受賞し、現五十歳。周りより金持ちだった彼は、ポイントレーザーを複数台購入し、庭先の池で浮かべて遊んでいたところ、高気圧が大きく発達した影響で突風が吹き、レーザーを点としてみて線で繋いだ内側の水が跡形もなく消えたという。しかしその直後、水はまた戻った。少しの白波を立てて。
好奇心旺盛だった彼は、当然疑問を浮かべた。
彼の考えは
「盲点に入った」
「一時的な視覚のシャットアウトをさせる物質の発生」
「透過作用の発生」
などよりも先に、
「時間移動の際のタイムラグ」
というものだった。
彼はそれから勉強などそっちのきで研究に没頭した。
朝起きては自室にこもりっぱなしで実験の繰り返し、あの日を忠実に再現して実験する日もあった。
そのような日を繰りかえし、人類にとって大きな進化を遂げることになるまで十五年の歳月が流れた。
時間移動の理屈はこうだ。
複数の高出力レーザーをリング状に配置し回転させることで一方向性リング・レーザーによる弱い重力場を生じさせることにより、回転させる中性子が結果として生じる重力場の周りに惹かれるとさせる「擬似的なブラックホールの外周」を形成させることにより、中性子が結果的に生じる重力場を利用し素粒子をタイムスリップさせる、というもの。
「素粒子だったら人間は無理じゃないのか」
と思う人もいると思う。
前の説明を思い出してほしい。
「物質のデータ化」
これを利用して素粒子化、いや正しくは「擬似」化になる。「GOMプレイヤー」というものがある。これはDVD以外の場所に置いてある「ISO」をDVDと読ませて再生するものがある。
これと同じ理屈で、コンピューターに「嘘の情報」を教える訳だ。
これらを利用して何年前だろうか、僕が小さいときに驚きを覚えた記憶がある。「タイムマシン」の完成だ。
こんな言葉を聞いたっけな。
「タイムマシン、驚きの五千百万」