情報屋×死神:7月11日.壱
「なんでこんなことになっちまったんだ……」
誰に言うでもなくぼくは呟いた。
今は午前十時ちょっとすぎ。
ぼくは腕時計で今の時間を度々確認しながら、あの死神を探して一宮市内をあてもなく走り回っている。
一全死季とか言ったな……聞いたこともなかった相手だから油断したか、完全にしてやられた……。
「くそっ!!……甘くみていた」
あんな最悪な死神がいるなんて知らないぞ……最近情報整理してなかったのがたかったな。
走りながら愚痴をこぼした途端……
――キャアァアア!!!!
「……悲鳴。あいつかっ!!」
ぼくは悲鳴が聞こえた方向に向かって駆け出した。
あの最悪な死神の行動による悲鳴だとしたら……たぶん死体の一つや二つ、転がっているはずだ。
昨日少し話しただけでそういう考えが浮かぶ。
あいつはそういったやつだ……。人が死んでも何とも思わない。いや、その死んだ人によっては喜ぶかもしれない。
そして、あいつはあいつが選んだ人を殺した時にこそ一番喜ぶだろう。
「根っからの死神なんだな……」
最悪な死神のことを考えながら走ると人だかりにたどり着いた……そして。
「…………」
絶句。
そして吐き気がぼくを襲う。
正直こんな惨殺死体とは考えもしなかった。普通に人生を送っていれば見ることのない、赤色。
最悪な死神による最悪な死体が路地の上に転がっていた。
「こういうことか……これが君の言っていたゲームか」
実感した。
今の状況を。
さっきまで必死に走っていた理由を。
命の危険を。
そして……この世界のバランスの悪さを。
ぼくは昨日の死神との会話を思い出しながら呟いた……
「君は最悪だよ……」
……と。