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再会

 わたしは家に帰ると父の部屋に真っ先に向かった。わたしと父の住むアパートは二人で住むには十分な広さがある。食事をする居間、わたしの部屋、父の部屋、父の寝室兼客間となっている和室の四つの部屋があった。

 わたしは南に言われた「ファザコン」という言葉も気になっていたがそちらよりも父に彼女がいる、という方が気がかりだった。

 わたしはまず父の机の前に立った。父の机の上には写真が二枚飾られている。わたしと母の写真だ。そんなはずないな、わたしは改めて思う。

机の中を開けると几帳面にそれぞれ仕分けされた定規や蛍光ペン、シャーペンの芯など未開封の文房具が揃えられていた。父の几帳面さが窺える。あとは、仕事関係らしき書類が山積みになっているだけだった。

書籍の方は本や書類が多い。少し手を伸ばすが意味のわからない仕事関係の本や書類が一杯で調査する気分が削がれた。適当に取って読んでみるが、専門用語ばかりですぐに書籍に戻し、寝室を調べることにした。

寝室に入ると押入れの襖を開ける。二段で仕切られた下の奥の方に段ボール箱が置かれていたことをわたしは知っていた。段ボールは全部で四つあり、その内の一つのみかん箱の段ボール箱を取り出して中を開ける。不思議と父に対する後ろめたさは一切湧いてはこなかった。強いて言えば、仏壇に飾られている母の遺影が気になった。『わたしの旦那が浮気なんかするはずないでしょ。』とでも言っている、そんな自信の満ち溢れる笑顔だ。きっと、その満ち溢れんばかりの自信には、それを裏付ける実績があるのだろう。そんな推測できる美貌がある。

段ボールの中身は父の思い出の品が詰まっていた。胴着や野球のグローブ、小、中学校の卒業アルバム、父が幼稚園の頃に作った工作らしきものなどがしきりに詰めてあった。目的のものが見つからないので二つ目を取りだして開ける。こちらはわたしの思い出の品が入っており、子どもの頃の絵本やおもちゃが入っていた。三つ目も同様にわたしの幼稚園や小学校のときの鞄や制服、体操服が入っていた。

しかし、四つ目の段ボール箱は様子が違った。持った瞬間に他の段ボール箱よりも以上に軽かった。中身がないので持ち上げた瞬間に段ボール箱の中の物が動くぐらいだった。

なんだか嫌な予感がした。

わたしは少し身構えるように目を強く瞑って段ボール箱は開けた。怖いもの見たさ、という言葉が頭に浮かぶ。自分の知らない父の姿の尻尾を掴んでしまったような気がしいるのに、わたしは高揚していた。

「なにこれ?」

 しかし、わたしは中を見て目を丸くした。段ボール箱の中身は、一枚の色紙、輪ゴムで止められた円状の紙、一冊の絵本、そして高校の卒業アルバムだった。

わたしは段ボール箱の中身の素朴さに拍子抜けして、自分の知らない父がいないことに胸を撫で下ろし、なんの脈絡もなさそうな中身のバラエティさに首を傾げる。

とりあえず、わたしは卒業アルバムを手に取ってパラパラと捲った。二十年以上も昔のものだから、時代の古さは否めない。だが、それ以上にわたしが感じるのは時代の古さは強すぎる個性を面白可笑しくさせるのか、ということだった。奇抜な格好をしている高校生は見事にわたしの笑いの壺を捉えた。わたしは父のアルバムを片手に腹を抱えて一人でゲラゲラと笑った。わたしたちも二十年後にはこうなるのだろうか。

三年二組のページを開くと若き高校時代の父がいた。地味な顔立ちをしている。だが、小動物のような可愛さもある。

それからわたしはアルバムの中で父を捜した。父の周りには肌の黒い男や天然パーマの男、豚を彷彿させる男など父の周りには男しかいなく、地味な青春時代を過ごした高校生活だったんだとわたしは勝手な解釈をした。

アルバムを一通り見ると、段ボール箱にアルバムを戻して、絵本を手に取った。『くろとしろのやくそく』というタイトルだった。わたしは三,四歳の頃に絵本に凝っていた時期があったので、父がわたしに与えた絵本だということは想像できた。だが、何故、この絵本だけ他の絵本とは別にこの段ボール箱に入れられているのだろうか、と疑問に思う。

絵本は猫の話だった。少し読むつもりだったが、いつの間にかに夢中になっていて気がつけば全部読んでいた。内容は全体的に暗い。作者がなにを考え書いたのか、それなりに教訓はあるような気がした。だが、最後の最後でハッピーエンドで終わるものの、強引さが否めない。けど、不思議と読み終えた後に心地良さがあった。懐かしさといった方がしっくりくるのかもしれない。



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