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宇宙人に仕事

 僕が『悠』という名前に意味が込められていたのを気付いたのは悠に絵本を読み聞かせたことがきっかけだった。

 『くろとしろのやくそく』という絵本のラストを捲ると猫は宇宙人になっているのだ。途中までは悠子から高校の頃に聞いた話通りだった。白猫に纏わりつく嫌みな猫達に黒猫が殺される。そして、白猫が泣く。ここから物語は急変するのだ。後悔をする白猫の元に神が現れる。突飛な展開だと僕は笑った。そして、神は都合良く、白猫の相談を乗る。だが、神は怒る。激怒するのだ。そんなのお前がいけないんじゃないか、周りが気になって自分の気持ちに素直になれない自分が悪いのではないか、と。白猫は驚愕する。だから、あなたに相談しているのではないですか、と。神は考える。そして、結論は出す。なら、お前ら二匹を二人だけの世界に飛ばしてやる。白猫を宇宙に飛ばされる。その姿を宇宙人に変えて。飛ばされた世界には宇宙人になった黒猫の姿があった。白猫は黒猫に言う。「会いたかったわ。」黒猫は言う。「どうして、僕は死んだはず。あれ、君は誰?」白猫は言う。「わたしは白猫。宇宙人に生まれ変わったの。あなた、やり直す為に。」黒猫は言う。「宇宙人? 宇宙人には仕事はあるのかい?」

 作者は宮乃という女性作家だった。そして、あとがきには『この物語は死んだ友人に贈る物語です』という文が書いてあった。『素直に気持ちを伝えられなかった友人が神に説得されたように素直になって結婚までした友人を猫に描いた物語です。また、猫が宇宙人に変わるのは彼女が次に生まれ変わるなら宇宙人と断言していたので、宇宙人に生まれ変われるようにと願いを込めて宇宙人に変えてしまいました。さらに、最後の黒猫の台詞は彼女が生前にずっと疑問に思っていたことを黒猫に言わせてみました。』と書かれていた。

「宇宙人に仕事はあるのかい?」

 僕はその言葉を口にしてみる。

「さぁ、おれは地球人だから、宇宙のことはわからないけど、宇宙人にも仕事ぐらいはあるんじゃないかな?」

 高校生の僕が戸惑いながら答える。

 そりゃ、そうだ。宇宙人にだって仕事はあるさ。僕は鼻水と涙を絵本に垂らしながら呟いた。


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