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伝言
娘が逝った。
涙を流しながら娘に言った僕の言葉に隣にいた看護婦は不可解な顔をしていた。何を言っているんだ、この親父は。とでも思ったのかもしれない。だが、そう思われても仕方ないと、僕自身も思ったのだから仕方ない。
季節は娘の名前に似ていて春だった。桜が咲いたり散ったり、暖かく穏やかな季節の春に僕のたった一人の娘は死んだ。娘が死んだのは別れの季節である三月のことだった。
正直いえば、ある程度の覚悟はしていた。娘の病状が急激に悪くなったこともそうだが、少し格好つけていえば、運命に足掻くことはできないと思っていた。