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彼女の夢

 猫の国の話。ある村に二匹の猫が生まれた。片方は凛々しい黒い毛が特徴な雄の黒子猫。もう片方は白い毛が可愛らしい雌の白子猫。二匹はとても仲良く育ち、将来を誓う仲になった。しかし、白子猫は遠くの村に引っ越しをしてしまうことになった。だから黒子猫は白子猫が引っ越しするときにいった。「大きくなったら君を迎えにいく」

 やがて、黒子猫は大きな立派な黒猫に成長した。凛々しい黒い毛もさらに磨きが掛り、とても強そうな黒猫になった。そして、白猫との約束を果たす為に白猫の村に一匹だけでいった。しかし、黒猫は白猫に拒絶された。

 白子猫はとても美しい白猫へと変貌を遂げていた。彼女は黒猫を煙たがり、彼女に纏わりつく他の猫達は彼を嘲笑った。彼女の美しい白い毛は周りの猫達を惹きつける。誰もが彼女を歩く度に鼻の下を伸ばして首を動かす。だが、黒猫の凛々しい黒い毛は不気味がられる。彼が横切る度に舌打ちが聞こえてくる。眉間にしわを寄せる奴もいれば、罵倒してくる奴だっている。

 最初は彼女も彼との再開を喜んでくれた。しかし、会う回数を重ねるごとに彼女の様子に変化が起きてきた。徐々に態度がよそよそしくなり、彼を避けるようになった。そして、最終的に彼女は彼を拒絶した。

 黒猫は村に帰ろうとも考えたが、白猫のことを諦められず彼女の住む村に残った。村に帰ればこんなに辛い目には遭わずに済む。だが、そうできないのは、あの約束が忘れられないからだ。あの約束を一日も忘れたことはなかった。それは彼女もそうであると彼は信じ込んでいた。どうしても彼女が自分を完全に嫌っているようには思えなかった。

白猫の拒絶の仕方は、はっきりとしないものだった。「もう、会わない方がいいわ。あの約束はなかったことにして。」そう彼女は彼にいった。彼女が告げた一見絶望を漂わせるこの言葉に彼は希望を持ってしまった。

彼は一言も約束の話を彼女にしなかった。彼女が約束を覚えていてくれたことが彼は嬉しかった。だから、彼は周りが敵だけの村に住み続ける決心はした。

だが、彼はその決心した次の日に死んだ。白猫に纏わりつく猫達によって彼は殺された。村で彼の死に涙する猫が一匹だけいた。


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