序章
昔々のことでした。
このアルス王国は、魔王ライカヌスに支配されており、人々はとても貧しい生活を強いられておりました。
魔王ライカヌスは、金色の両目をもった恐ろしい男でした。
ところがある日、突然王国を覆っていた暗雲がみるみる晴れ、光が差してきました。
魔王ライカヌスが死んだのです。突然の病魔に襲われ一晩持たずに魔王はあっけなく逝きました。
人々は喜びました。宴も開かれ、みな魔王の悪政が消えたことに歓声を上げました。
しかし、ライカヌスは死ぬ間際に呪いをかけました。
何十年か何百年ごとに自分と同じ金眼を、右目は女、左目は男に持って生まれさせ、その男女の子は魔王となりまた世界を暗雲に包むという呪いです。
ですが世界は広く何世紀経っても金眼どうしの子供、魔王が生まれることはありませんでした。
それでも、片目だけの金眼だったとしても、もって生まれた子供は「魔王の化身」「周りの人々をことごとく苦しめる」といわれ、怖がられたり虐げられたりしました。
昔々の物語。
今も遠い世界には金眼を持ち生まれる子供がいるといいます。
ライカヌスは今か今かと復活を待っているのです。
そして、今―――