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chapter.2
職場に着くと、席に座る。
端末が起動する。
画面には数字と記号が並んでいる。
彼の仕事は、確認である。
修正である。
調整である。
記録を確認する。
言動を確認する。
過去の記録と現在の記録の差異を消す。
行動と記録の誤差を整える。
発言と記録のずれを修正する。
彼は正確だった。
速かった。
ミスは少なかった。
評価も高かった。
やりがいは感じていた。
昼になると、席を立つ。
同じ時間に立つ人と、同じ場所に向かう。
同じ食事をとる。
同じ量で、同じ味。
誰も会話の必要はない。
伝わる。
午後も、同じ仕事をした。
記録。
修正。
整合。
最適化。
そこにあったはずの番号が、消えていた。
そのデータは最初から存在していなかった。
不自然ではない。処理としては正しい。
だが、データが消えているようだ。
名前も知らない。
何かしらない。
興味がなかった。
誰も気にしてはいなかった。
彼も、報告する気はない。
次へと視線を向け、仕事を再開する。
彼は知った。
ただの、ずれ。
疑問でも、不安でも、怒りでもない。
そもそもそのようなものは非合理的であり、必要がない。
小さな、ノイズ。
彼は端末に、それを記録しなかった。
仕事としても、思考としても、感情としても。
記録することは、非合理的でった。




