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愛の成れ果て  作者: サンダー


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共犯

 「直哉君と伸二君・・・・。いや、川口さんと佐々木さんは知っています。ただ知っているというだけで、深い関係にはありません」葉子がそう突き放すと、岩手県警の田所が訝し気に葉子を見た。葉子はその視線をヒシヒシと感じながら、どうにもできない自分の無力さに肩を落とす。こんな無機質な部屋に通されて、何を言えというんだ。怒りすら湧く。

 「でもね。君も知っての通り佐々木が川口を殺す理由がみつからんのだよ。君は二人と懇意にしていた。どちらかと付き合っていたとか?」

 顔面が目の前まで迫ってくる。タバコの臭いがぷんぷんする。多分この臭いはマイルドセブン・ライトだ。

 「そんなこと言われても、急に警察に呼び出されて尋問受ける身にもなってくださいよ。二人とはスロット店以外では会ったこともありません」

 「ほんとだろうな。裏なんかすぐに取れるんだからな。いい加減なことを言っていると、お前も捕まるぞ」少し脅しをかけてみる。田所の巧妙なやり方だ。これで何人もの容疑者を落としてきた。たぶん彼女も犯行に一枚かんでいるに違いないと田所は踏んでいた。

 「それだったら私に話を聴く意味がないじゃないですか?私は自衛隊の関係者でもないし、川口さんが亡くなった時、岩手駐屯地の売店で働いていた訳でもないし、どこに私を逮捕する理由があるんですか」

 「そんなことはこっちが決めることなんだよ。事件のシナリオはこっちで作る。君はそれに従っていればいいんだ。それが一番君の刑期を短くするから」

 「そんな・・・・。そんなのただのでっち上げじゃん。じゃあ私が佐々木さんの共犯者として捕らえるんですか?」葉子は顔面蒼白で田所を見る。ただ事ではない。警察は何かを隠そうとしているのか?そうだ浜川のことを聞いてみよう。

 「浜川さんという人が事件を追っていると聞きました。浜川さんは共犯者として名前は上がっていないんですか?彼だったら事件の深層を知っているんじゃないんですか?」

 「そうだな。それもあたってみた。あたってみたが、彼は白だろう。警察としては彼を捕まえることはできない。

 怪しい。何かあるのではないか。葉子は田所の言い方を聞いてただならぬ空気を読み取ることができた。彼はきっと黒だったのだ。そうでなければ私が疑われる訳がない。私が犯人として名前が挙がるのは、きっと何かに深い理由があるのだ。田所と葉子のにらみ合いが続く。葉子も簡単にあきらめることはできない。

 「君は浜川君と何か繋がりでもあるのか。浜川君と通じているなら、ここでしゃべった方が後々楽になるぞ。彼も共犯者として名前が挙がったが、警察内ではシロとみられている。君も分かっているのだろ?佐々木との関係を。佐々木は浜川を事件に巻き込んだりしない。何故なら佐々木は君を愛していたのだから。違うか?」

 葉子は言葉に詰まった。確かに佐々木とは一度だけ関係を持ったことがある。でもそれは成り行きというもので深い意味はない。佐々木は私を何だと思っているのだろう。事情聴取に何と答えているのか想像もできない。ママが心配する。これ以上ママに迷惑をかけたくない。そう思うと動悸が早くなる。佐々木が喋らないのなら喋ってしまおうか?葉子は心をなくした人のように無言で空を見つめていた。


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