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愛の成れ果て  作者: サンダー


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出会い

 葉子がいつものように駐屯地の売店に出社すると、達彦が売店の前でタバコを吸っていた。このチャンスを逃したらもう二度と話せないような気がして葉子は思い切って達彦に声をかけた。

 「私のこと覚えてる?」葉子は前髪をかき分けながら、脇に持っていたダウンに袖を通した。

 「あああの時の。あれからちゃんと家に帰れた?」達彦は吸っていたタバコを灰皿に押し付けて消す。

 「うん。無事に帰れた。浜川さんて言うのね。ネームプレートがついていると名前を覚えやすくていいね」

 「君は?名前教えてもらってないから」達彦は照れくさそうに、頭をかいた。かわいいかもと葉子が思うのにそう時間はかからなかった。

 「津志田葉子よ。宜しくね。売店に来たら気軽に声かけて。私がここで働いているの知ってたみたいね」

 「佐々木から聞いた。まあ佐々木は今自衛官ですらないけど」

 「えっ、何?何かあったの?」葉子は訝し気に達彦を見つめた。

 「実は同期を殺したんだ。今は警察の世話になってるよ」

 「嘘、闇が深そうだね。『オスカー』によく来てるけど、あそこは自衛隊御用達の店なの」葉子は何となく笑ったが、ちょっと達彦が引いているようにも見受けられる。

 「まあ、殺された奴が佐々木に莫大な借金をしていたから、それはどうすることも僕にはできない」

 「殺された人っていつも『オスカー』に来ている人?」

 「直哉って言うんだけど、これがまただらしのない奴だったから、殺されてもしょうがないって言ったら、しょうがないんだけど」直哉の名前を聞いたとき葉子はビクリとした。川口君のこと?と真っ先に思った。「その人川口さんて苗字じゃない?」

葉子が恐る恐る聞くと達彦は「そうだけど、直哉のこと知ってるの?」葉子がコクリとうなずくと、この事件は一筋縄ではいかないなと一瞬で思った。

 「じゃあ佐々木のことは?」葉子は首を縦に振って「知ってる」と答えると、達彦はここで真髄に触れたような気がした。

 「事件の真相を僕なりに追っているんだけど、佐々木がホントに直哉を殺害したのかどうか、それだけが知りたいんだ」誰がこの真相に辿り着けるか・・・・。達彦は上着のポケットからキャスターの5ミリを取り出すとおもむろに火を着けて、重い十字架を背負ったキリストように、肺に煙を吸いこんで思いの丈を煙として吐いた。


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