慌ただしい始まり
(1)0歳編
その後、部屋中。
いや、屋敷中だろうか?
辺りが騒がしくなった。
相当大事なのだろう。
当の本人の私には全く理解ができていないが、生まれて間もなくこの騒動は勘弁してほしいものだ。
いろいろな人が部屋を出入りし、右往左往する人や、指示を出す人、指示を仰ぐ人など様々だ。
しかし、母は私を産んだばかり、私も生まれたばかりと言うことで、女性を二人残し、皆んな部屋から出ていった。
若い男の話によると、これからのことを話し合うそうだ。
「ごめんなさいね。本当は旦那様に…あなたのお父様に名前をつけてもらうはずが……」
母と思わしき女性が私を大切に抱き寄せながらそう呟いた。
顔ははっきり見えないが、きっと美形だろう。
声もぼんやりとだが、柔らかく優しい声がした。
「マリア様、大変申し訳ございません!私が騒いでしまったばっかりに……。いかなる処分もお受けいたします」
物騒だよ!!
「処分は致しませんよ、グレイス。ただこれからはきっと大変になるでしょう……。グレイスはもちろんロナもよろしくお願いしますね」
「「はい!」」
中年の、私を見て叫び声を上げた女性“グレイス”が返事をした。
もう一人部屋に残っていた若い女性“ロナ”も一緒に声を上げた。