9.名書き
(1)0歳編
サイモンSide
色々あったが、名前が決まった。
エリアーナだ。
この国では、貴賤問わず名は親から贈られる最初の贈り物。
そして、生まれた子供は3歳までは神のものとされ、3歳の洗礼式で家名を、貴族は貴族の証である“フォン”を名前と家名の間に入れることを許される。
だから今はただのエリアーナーーーリアだ。
「父上、エリアーナに決まりました。名書きをお願いいたします」
「お願いいたします」
「「「「お願いします」」」」
揃ってお願いすると、家令のオズバートが持っていた箱を父に差し出す。
紙とインクに触れていいのは、当主のみなのだ。
「あいわかった」
サラサラと達筆な字を書き、リアの身体に名書きした紙を置き、名前を口にする。
「エリアーナが健やかに育つように」
眩い光がリアの体を包み、光の玉が体の中へ入っていった。
これで名書きは無事に終えられた。
ほっとしたのも束の間。
部屋中が先ほどよりも眩く、そして神々しく光った。
「敵襲か?!」
「皆んなを守れ!」
「ぼっちゃま、お嬢ちゃまこちらへ!」
父の声に部屋の中にいた使用人たちがすぐさま守りを固めた。
『精霊男1:案じずとも良い』
人とは違う声が部屋に響き渡った。
その途端に、光り輝いていた部屋が通常に戻った。
眩しさで目を瞑っていたが、光に目が慣れ目を開けると、そこには10人の人影があり思わず全員が跪いた。
ベッドにいるマリアもリアを抱き抱え頭を下げていた。
『精霊男2:愛し子の母よ。其方は出産をしたばかり。楽にしておれ』
『精霊男1:我らに敵意はない。できれば普通にして欲しい』
子供達にはわからないかもしれないが、人が出会える存在ではない方々が姿を現してくださった。
【原初の精霊様】だ。
火・水・土・風・雷・氷・光・闇・時・無と、この世界には魔法があり、精霊様と契約をし魔法を使うことができる。
精霊とは、神が世界を創造した時に世界を守護するために造られた精霊王様から生み出された大精霊様の力からできた存在。
そして原初の精霊様とは、大精霊様から生まれた最初にして唯一無二の精霊様のこと。
そんな精霊様がなぜ?




