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【書籍化&コミカライズ】伯爵令嬢の責務  作者: ごろごろみかん。
アデライン・アシュトンの矜恃 〈中編〉
25/46

25.仲の良さそうなあなたに嫉妬した

ワインは、想像以上に美味だった。

口当たりは柔らかく滑らかで、口に含んだ瞬間、柑橘系の爽やかな甘みが広がった。

味わい深く厚みのある、フレッシュな味わいだ。


「美味しい……!」


感動していると王太子殿下が満足そうに頷いた。

無表情なのでわかりにくいがグレイも、満足しているようだった。

運ばれてきた皿には、卵料理やチーズ、ナッツ、カルパッチョといった品が運ばれてきて、食事に舌鼓を打ちながら、私たちは話を再開させた。


「それで……王太子殿下が、エムルズ公爵令嬢を動かしたのですか?」


尋ねると、ボロネーゼのパスタに口をつけていた王太子殿下が、ん?と顔を上げた。

どうやら、先程の夜会では食べ損なってしまったらしい。

王太子殿下は空腹である。


「ああ、うん。そうだよ。メアリーはあれでアンドリューにのぼせ上がっていてね。こちらも頭の痛い問題だったんだ。だから、メアリーをけしかければ、失敗はしないだろうと思ったんだよ」


王太子殿下は、そこでワインに口をつけて喉を潤すと、続けて言った。


「それに──ほら、これでも僕には王太子としての責任があるからね。王女が迷惑をかけたんだ。腹違いとはいえ、兄の僕には尻拭いをする義務があるからさ」


「まあ……」


「それでついでに、メアリーも片付けばいいなって思ったわけ。ああ、でもあわよくば……ってことだ。全て計算づくだったわけじゃあない」


王太子殿下はそういうと、ぺろりとパスタを平らげてしまった。

どうやら、だいぶ腹ぺこだったようだ。


そして──彼は、私も気になっていたことを口にした。


「しかし、ジェニファーの本命がグレイとはね。読めなかったな」


「あれはその場しのぎの嘘だろう。現状維持したかっただけなんじゃないか?」


チーズとトマトを乗せたブルスケッタを口に運びながら、グレイが淡々とコメントした。

それに、王太子殿下がチッチッ、と人差し指を振る。


「分かってないね。あれは本心だよ。そうは思わないかい、アデライン嬢?」


話を振られた私は、口に含んでいたチーズをこくん、と飲み込み、考えた。


(確かに、王女殿下のあの様子は演技のように見えなかった……)


本気で、本心からそう言っているように見えたのだ。


だけど、そうだとするなら、やはり、なぜ?といった疑問がついてくる。

私は、口元に指先を当てると、抱いた疑問をそのまま口にした。


「ですが、もし、そうだとするなら。なぜ、王女殿下はアンドリューと……」


「そこが、難しい乙女心ってやつだよね」


「乙女心はよく分からないが、それは世界中の乙女を敵に回す発言だと思うが」


グレイの全くその通りなコメントに、私も頷く。

それに、王太子殿下は肩を竦めた。


「いや、でもそうとしか思えない。我々は思い違いをしていたんだよ」


「思い違い、ですか?」


「ああ。僕は以前、グレイとジェニファーの婚約は、あなたありき、だと言ったね。それは、変わらない。だけど、因果関係が逆だったんだ」


「……それは、つまり?」


私は、首を傾げた。

グレイも、先を促すように王太子殿下を見ている。


彼は、「つまりね」と前置きをした後、言った。


「元々、ジェニファーはグレイが好きだったんだ。だから、仲の良さそうなあなたに嫉妬した。……どう?」

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― 新着の感想 ―
私は1番王太子殿下が好みです! やっばい楽しい(=´∀`)人(´∀`=)友達なりたい!
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