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かつて存在した英雄たちへ ―継がれた意思の行方―  作者: Oとうふ
2章 託されたもの

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始まりの位置

――東雲凪視点――



 目を開くと、見覚えのない天井があった。

 洞窟でも空でもない…。


「知らない天井…」

「そうなんですか?」


 聞き覚えしかないその声を聞いた途端、首が硬直するような錯覚を覚える。


「り…あ?」


 ゆっくりと、ロボットのように声が聞こえたほうへ振り向く。

 予想通り、天宮莉愛はそこにいた。


「……最近、目が覚めるといつも近くにいない?」

「すいません、東雲君がこの病院に来た事あるのかどうか分からなかったので」

「…あ、スルー?」


 どうやらいつも通り…じゃないな。


「ふふっ、良い反応ですね」

「ボケてる自覚あったのか」


 以前じゃ想像もできなかった莉愛の笑顔が、目の前にある。

 そんな彼女を見て、俺は自然と言葉を漏らした。

 

「ありがとう」


 莉愛は首を傾げる。


「なぜ感謝を?」

「なんとなく」


 そう言うと、莉愛は少し考える素振りを見せた後、ゆっくりと口を開いた。


「……ありがとうございます」

「なんで莉愛まで?」

「なんとなくです」


 他人からしてみれば、笑えるような会話じゃなかっただろう。

 でも、俺たちはお互いのやり取りの意味が分からず、そんな状況におかしくなって笑った。

 十分に笑い合った後、莉愛にこれまでの事を訊く。

 

「り…結乃、俺が気絶した後何があったんだ?」

「なぜ結…そういうことですか。東雲君が倒れた後、カオスナイトというモンスターは賀茂さんが対処してくれました」

「流石、賀茂代表だな。それで、他の被害は?」

「私たちと共に実技試験を行っていた人と、サポートのハンターを含め、数人が亡くなりました」

「そうか」


 やはりゲートは何が起きるかわからない。

 まさかサポートハンターまでやられる…いや、待てよ。

 俺の脳内に莉愛と共に穴に落とされる直前の記憶が再生された。


「…サポートハンターは、モンスターじゃなく人に殺された…」

「正解だ」


 部屋の扉にもたれかかっていた楠乃先生を見る。


「楠乃先生、来ていたんですね」

「そりゃ、これでもお前たちの担任だからな」

「それで先生、『正解』ってことは知ってるんですね?今回の黒幕を」

「ああ、主犯は伊藤針竿。共犯は針竿と同じくサポートハンターとして試験に参加していた佐藤(ひろし)、斎藤裕也(ゆうや)だ」


 まあ予想外ではなかった。

 強さや、あの場所にいる可能性を考えれば、超級ハンターであるサポートの人たちを疑うのは普通だ。


「その犯人たちは?」

「無事に犯罪者としてハンター協会に連れてかれてた。とりあえず今は休んどけ。俺はお前らの無事を確認できたし、帰るわ」


 そう言って楠乃先生は病室から出ていこうとする。


「てっきりいろいろ聞かれるかと思っていたんですけど」

「ん?まーあれだ。大人の気遣いってやつだ。生徒の青春を陰ながら支えるのも教師の仕事だしなー。話は明日にでもゆっくり聞くわ…気が向いたら」


 先生が出ていった扉を眺める。

 人間としてある程度信頼できると感じつつ、教師として大丈夫かと心配になった。


「おっさんかよ。いや、おっさんだったわ」

「東雲君、そういえばあの飴玉って結局何だったんですか?」

「飴玉?」


 莉愛に言われたことで、ミチ婆から貰った飴玉の事を思い出す。


「使い損ねた…」


 ポケットから飴玉を手に取る。

 ラッピングはすでにボロボロになりかけている。

 

「その飴玉、普通の飴玉じゃないですよね?」

「まあエリクサーと合成したんだから…」

「いや、その前からです。合成する際に、その飴玉から強い魔力のようなものを感じました」


 本来は秘密にするべきだろうが…莉愛相手だしいいかと思い口を開く。


「これオフレコで頼むな。実は、これ食べると身体能力とか一気に上がるんだよ」

「……食べるんですか?それ…」

「この飴は食べ物と思わず、魔道具と思うべきだ。そうすれば食べれる」


 どちらにせよ、持ち帰ってラッピングでもしておこう。

 使うタイミングがあるかどうかは分からないが。

 

「すごい力ですね」

「それには同意するよ」


 ミチ婆の食べ物にバフ効果を付与するスキルには、昔からお世話になっている。

 対抗戦の時はすれ違ってしまったが、今度会ったらちゃんとお礼を言おう。


「……話は変わりますが、私は明日から学校に行こうと思っています」

「え?マジ?」

「はい。私は魔力を過度に消費しただけですので」

「それ下手したら死ぬんじゃ…」

「何言ってるんですか。私よりも危険だったのは東雲君ですよ」

「は?」


 莉愛のその言葉に思わず声を漏らす。


「え?そんなにヤバかった?」

「…もしかして、エリクサーはなんでも治せる万能薬って思ってませんか?」

「思ってる。というか、エリクサーなんて貴重なもの使う機会なんてないから、詳しいことは知らないんだ」

「……確かに。一般の人がエリクサーを使う機会なんて滅多にないですね。なら、知らないのも無理はありません。エリクサーは確かに部位欠損や病を治せるほどの治癒効果があります。ですが、その治癒効果の根源にあるのは、使用者の体力なんです。だから使いすぎると命を削るも同義です」


 冷静にこれまでエリクサーを使ってきた場面を思い返す。

 莉愛が言っている通りなら…


「俺はエリクサーで自分の体力…どころか命を削ってた可能性すらあると?」

「そういうことになります。もし東雲君に『祝福』が無ければ今のように元通りじゃなかったかもしれませんね」


 少しゾッとしつつ、『祝福』があったことに感謝する。


「まあ、二人とも無事で出れて良かった」

「…そうですね」


 2人で外を眺めながら、日常に戻れたことを実感する。

 それと同時に、俺は何かの始まりであるという予感がしていた。

 優との和解に、継承の間で会ったかつての継承者…。

 

「ようやくスタートラインに立てたのかもな」


 未だに疑問は多く残っている。

 でも、今はそれ以上に達成感を感じていた。

 もちろん莉愛と共に日常に戻れたこともそうだが、なにより――

 

「俺は兄に戻れたみたいだ」


 もう過去じゃない、新しい俺たち家族の在り方に。



『託されたもの』 完

ここまで読んでくれてありがとう!

無事に2章「託されたもの」が完結しました!


2章を通して、凪と優、莉愛と結乃の関係が明かされていきました。

3章(最終章)まであとわずかです。

ぜひ、凪がたどり着く結末を見届けていってください。

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