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かつて存在した英雄たちへ ―継がれた意思の行方―  作者: Oとうふ
2章 託されたもの

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42/50

裏側

――凪たちがゲートを脱出する数十分前 神葬視点――



「ふぅ」


 額に滲んだ汗を拭い、目の前に広がるモンスターの死体の山を眺める。

 

「流石に疲れたかな」


 周囲を見渡しつつ、探知をしてみる。

 

「……」


 もうモンスターの気配はなかった。

 ただ…少しおかしい。

 本来なら、A級ゲートのスタンピードを俺一人じゃ抑えられるはずがない。

 だから、できるだけ数を削ってから逃げようかと思っていたのだが…その必要が無いほど、呆気なく処理できてしまった。

 

「まあ…今は楠乃さんの心配が優先かな…」


 雰囲気であのハンターたちの相手を任せたけど、実際楠乃さんが無事である保証はない。

 少し早足で来た道を戻っていくと、驚きの光景が広がっていた。


「ぐぅぅ…」

「あ…ぁ」


 佐藤博と斎藤裕也は苦痛に顔を歪めつつ、壁に貼り付けられていた。

 手足には巨大な針が突き刺されている。

 その針は折られた形跡があるため、楠乃さんがやったのだとすぐに気づく。

 

「うわ…エグ」


 その奥には余裕の表情の楠乃先生と、額から汗を流し剣を構えている針竿がいる。

 

「くそっ!」

「そっちは片付いたのか?」


 楠乃さんが俺に気づいたのか、声をかけてくる。

 

「目に入ったモンスターは一応全部片付けたよ。ちょい不安だったんだけど、ずいぶん余裕そうだね」

「冗談よせよ」


 楠乃さんが針竿へ歩み寄る。


「随分と余裕じゃねぇか!」


 一瞬にして楠乃さんの足元から針の先端が生成された。


「ん?」

「串刺しになれや」


 針竿の言葉と共に、針は勢いよく楠乃さんへ伸びていく。

 

(へぇ…針の生成と、サイズ調整できるのか。意外と汎用性はありそうなスキルだね)


 スキルの観察をしていると、楠乃さんの足元に魔力が集まる。

 

「串刺しはやだなー」


 魔力で強化された足で、針竿の生成した針を蹴り砕く。


「バケモノが」

「バケモノ?お前も冗談はよせ。俺は()()()教師なんだろ?」

「へっ油断したな?」

 

 周囲の壁から針が出現し、楠乃さんへ向かって射出された。

 サイズはそれほど大きくないが、直撃すれば流石に形勢逆転となりそうだ。

 静かにスキルを使おうとしたとき――


「はぁ、学ばないな」


 楠乃さんへ放たれた針すべてが静止した。

 

「負け、認めろよ。大人だろ?」

 

 針はゆっくりと向きを変え、先端は針竿へと向けられた。

 

「お…おい、俺を殺せばお前らタダじゃ済まねぇ――」

「――あっそ」


 針が勢いよく針竿の両手足を貫通した。


「アァァ!くそっ、何しやがる!」

「うるさくなったな」

「ふざけんじゃねぇ!テメェ本当にっ!」


 楠乃さんは針竿の頭を勢いよく蹴り飛ばし気絶させた。 

 その後は、他のハンターたちも同様に気絶させ、引きずりながらゲートの入り口を目指し歩き出す。


「ねぇ楠乃さん」

「ん?なんだ?」

「わざわざその人たちを外へ連れ出す必要あるの?ここに残してモンスターの餌にした方が世のためってものじゃないの?」

「それはそうかもしれないが、こいつらから聞かないといけないことがある」


 俺は楠乃さんの背中を眺める。

 ただの教師だと思っていたが、どうやら見方を変える必要がありそうだ。

 試しに何か聞き出せないかと思い、カマをかけようと話しかけた。


「楠乃さんってさ――」

「――思ってた以上に強いからビビったか?」

「…まあ正直に言えばそうだね。それにそのスキル、俺と似てない?」

「『念動テレキネシス』、それが俺のスキルだ。使い方次第じゃ、お前のスキルに似てるだろうな。ただ、制限は多い」


 まさかスキルのことを口にするとは思っていなかったため、目を見開いて驚いた。


「え…、マジで言うとは思わなかった」


 スキルを持つハンターは秘密主義の人が多い。

 理由は至極単純で、スキルの内容は切り札になりえるから。

 だからこそ、あっさりと言った楠乃さんに対し驚きを隠せずにいる。


「へー、そんな簡単に言うんだ。もしかして、嘘ついて俺を騙し打ちしようとしてた?」

「馬鹿かお前。早く入口へ戻るぞ」


 俺の冗談を楠乃さんは軽く流し、足を進めた。

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