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かつて存在した英雄たちへ ―継がれた意思の行方―  作者: Oとうふ
2章 託されたもの

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最強の援軍

――楠乃視点――



「急ぎハンター協会の本部に確認を!」

「もうしています!ですが、今回のゲートの構造が特殊過ぎて、中の予測ができません。そのため、ハンター協会が動いたとしても…」


 言葉の詰まる部下を見て、真司は悔しそうに呟く。


「正確な報告じゃないと、戦力は期待できない…か」


 試験開始直後までは静かだったこの場所も、今では人の移動音や焦ったような話声などで溢れていた。

 隣に立ったまま、スマホを必死にスワイプしている真司は苦い顔をしながら部下に問う。


「くそっ。で、その応援はどのぐらいでここに来るんだ?」

「あ、あと半日ほど…」

「冗談だろ!スタンピードの兆候発見から半日経っているんだぞ!?」


 真司は確かに有能な部類の人間だ。

 でも、俺と同年代で業界としてもまだ若い方。

 まだこういう不測の事態に慣れていないのだろう。

 ま、俺も同じだけど。


「落ち着け真司。ここで焦ってもしょうがない」

「お前、なんでそんなに冷静なんだよ?自分の受け持っている生徒じゃないのか?」

「だからこそ冷静じゃないといけないんだよ。ここで感情的になって、ゲートに潜るなんてしても、位置も生存もわからない生徒探しで、ミイラ取りがミイラになるなんて、無駄にも程があるだろ」


 真司は何か言いたげだったが、そのまま俺の横に座った。


「田丸さん、行方不明の学生二人の端末の片方の反応をわずかに検知しました!」


 足早に部屋に入ってきた男が真司に報告する。


「それは本当か?場所は?」

「これは、試験のサポーターとして雇った超級ハンターの1人が作成した地図です」


 田丸に渡された地図を横からのぞき込む。

 印がついていたのは、壁の中だった。


「まさか…試験実施前に把握していなかった場所があったのか…」


 壁の中…つまりは、超級ハンターたちが見落としていたギミックがあったということか。

 ただ…そう考えると疑問が一つ浮かぶな…。


「いや、何かおかしい。入口からあまり離れていない場所に隠し通路…。素人ならともかく、超級ハンターが気づかないなんてありえない」


 どうやら、真司も同じ思考に至ったらしい。

 そう言われて報告に来た男も同じ疑問を浮かべたのか、考える素振りを見せる。


「たしかに…それに試験中は超級ハンターたちが中を……まさか…、サポートに入ってくれてる超級ハンターのデータを集めてくれ、大至急だ」

「は、はい!」


 男は大急ぎで部屋から出ていく。

 真司も俺と同じ考えに至ったらしい。


「そーだな。超級の中に、今回のこれを仕込んだ奴がいる可能性が高い。で、どうする?どちらにせよ、スタンピードは止まらない。集められるハンターも超級3人、上級40人。試験のサポートについてくれていた超級ハンターを合わせれば9人…。被害を出さずにスタンピードを抑えるには、少し心もとない戦力だ」

「田丸さん!」

「今度はなんだ?」


 再び試験関係者らしき男が入ってきた。


「そ、それが…」

「心もとないとはちょうどいい」


 声が聞こえた瞬間、その場にいた全員が行動を止め、一人の男へと視線を向けた。

 一歩一歩、ただ歩いているだけなのに、押しつぶされていると錯覚してしまうぐらいの圧を感じる。

 

「ま…さか、なんでこんな場所に、賀茂憲明さんが」


 現ハンター協会代表であり、日本最強のハンターと呼ばれる男、賀茂憲明かもしげのりあきは力強く言い放つ。


「さあ、戦力はこれで十分かな?」





 賀茂憲明が現れて、数十分後。

 試験の管理や運営のために用意されていた部屋に、数名のハンターが集められていた。


「スタンピードの対応の前に、現在の状況を確認をしたい」


 賀茂のその発言に、真司がタブレットを片手に巨大なモニター前に立つ。


「私、今回の上級ハンター資格試験の監督、田丸真司が説明します。スタンピードの兆候が見られたのは、A級ゲートで、内部にいるモンスターも、試験用ということで、サポートの超級ハンターにより、危険な個体は排除されています」


 真司が話しを続ける中、俺は説明を聞いている人物たちを観察する。

 ハンター協会代表の賀茂憲明に、『魔法課の賢者』のいずみ朱里あかり、戦力としては別格なのが二人…。

 そして、そんな二人が連れてきた金髪の少年は未知数。

 それ以外のハンターは、試験のサポートとして参加していた超級ハンターたちのリーダーで、『千針』の二つ名を持つ伊藤針竿(はりざお)

 スタンピードの対応のため招集されたハンターたちのまとめ役をしていた葛城次郎かつらぎじろう

 メンツはかなり豪華だな。


「それで、試験初日だった昨日から、現在までの被害を報告します。受験者の死亡者7名、行方不明者2名、サポートのハンターの死亡者2名となっています」

「行方不明が2名…か。身元は?」

「二人とも学生で、東雲凪と天宮結乃です」


 二人の名前が出た瞬間、場の空気が一変した。

 先程までも緊張感があったが、今はその比じゃない。


「場所の特定はできているのか?」


 心なしか賀茂代表の雰囲気も、より一層険しくなったように感じる。


「それが…つい先程、ゲートの入口からそう遠くない位置から、かすかに信号を受信しました。しかし、その場所は事前に記録されたゲート内の地図には存在していない場所です」

「隠し通路か…。ゲートの内部の規模はどのぐらい把握している?」


 彼は冷静に真司に質問を投げかける。


「試験実施前の事前調査では、通常のA級ゲートよりも規模が小さく、ボスがいると推定されるエリアも距離的には15kmもありませんでした」

「…ならば、すでにボスを討伐したチームがいても不思議じゃないと思うが?」


 この場の全員の視線が真司に集まった。

 

「はい、賀茂代表のいう通り。序盤からハイペースでボス討伐に向かったチームがいます。試験開始後2、3時間程度でボスの討伐を確認しています」

「実力偽装者か」

「賀茂代表の予測通りかと」


 真司の語ることがすべて真実なら、それこそおかしい点がある。

 静かに手を挙げ、真司と視線を交わす。

 

「なんだ?直人」

「真司の情報が真実なら、おかしいことがあるだろ?ゲート内のモンスターは選別済みの比較的弱い個体かつ、ボスは討伐されている。なら、スタンピードしても大したものじゃない。なのに、なんでそのチームの全員とサポートハンター2人が犠牲になるんだ?」


 俺に集まっていた視線が再び真司に戻される。


「サポートハンターの一人が、ボス討伐チームの観察をしていた。その人の最後のメールでの報告には、短く『まだいる』そう書かれていたんだ」


 この場にいる全員が静まりかえる。

 まだいる…その言葉はとても不気味だ。


「失礼します!」


 部屋の扉を勢いよく開けて入ってきたのは、先程真司のもとに報告に来ていた男だった。


「報告!A級ゲートの魔力測定を再度実施したところ、数値は86000!」

「86000?田丸さん、こりゃどういうことだ?A級の中でも上位じゃねぇか」


 針竿が不機嫌そうに真司に言い放つ。


「どういうことだ…。試験実施前までは確かに35000程度だったはず…」

「とりあえず、スタンピードについて話し合った方がいいんじゃないか?」


 葛城さんは冷静にそういうと、賀茂代表を見つめた。


「賀茂代表、人命優先は理解できます。しかし、現状行方不明者が生存している可能性が不明である以上、スタンピードへの対策をして、確実に被害を減らすことが最善です」


 話し合いが激化しそうな雰囲気の中、俺はずっと背後の気配がきになっていて、集中できずにいた。

 静かに後ろを振り向く。

 緊急で集会しているため、部屋の防音などはできていない。

 おそらく、外から盗み聞きなども容易にできるはずだ。

 

「……はぁ…」


 周囲の人物たちに視線を向けるが、誰も外の気配に気づいた様子はない。

 座席の位置的にも俺が一番近いからか…。

 静かに立ちあがり、「少し席を外します」と小さく言い残し、部屋から出ていく。

 

「……」


 部屋の外には誰もいなかった。

 隠れたか…。

 何も知らないフリをしたまま、トイレへと向かう。

 そして、トイレが見えたと同時に背後から声をかけられた。


「すいません、少し話を聞いてもいいですか?」


 ゆっくりと振り返り、顔を確認する。

 目立ちすぎる金髪に碧眼…予想通りの人物が立っていた。


「東雲優か」

「私とあなた、あったことあるの?」

「さあ、どうだろうな」


 彼女も疑問を適当に流しつつ、体を東雲の方へ向ける。


「で、何用だ?」

「…私をゲートの中に連れて行ってください」

「その話、詳しく聞こう」


 ゆっくりと通路を歩いてきたのは賀茂代表だった。

 彼も部屋の前にいた彼女に気づいていたのか。


「賀茂さん…」

「はぁ、加瀬が言ったのか?」

「バカ凪が行方不明なんですよね?それに、結乃も」

「ゲートはA級だが、スタンピードの規模が予測ができない。今回ばかりは、優ちゃんを行かせることはできない」


 賀茂代表は強くそう言うが、東雲の目は諦めていない。

 

「……優ちゃんがこの程度で折れてくれるわけがないか…」


 そのやり取りを見ている中、ちょうど役に立つかもと思い呼んでいる人物がいたことを思い出す。


「そうですねー、もし…『転移』を使える人がこの場にいたら、どうします?」


 俺の意見に、賀茂が考える素振りを見せ、東雲優は少し驚いていた。


「優ちゃんの安全を保障できるなら、東雲凪や天宮結乃の捜索を許可しよう。ただし、スタンピードが本格的に発生するまでだ。それに転移スキルを持った人物は、都合よく――」

「――あ、楠乃先生。転移が必要になったと…聞い…て……。はぁ?」


 突如、少し離れた場所から間抜けな声が聞こえた。

 正直、東雲優がこの場に現れなければ、俺が捜索に出ようとしていた。

 そのためにあらかじめ彼を呼んでいたのだ。

 

「さて、ここにおりますは『国立英雄育成専門学校』教師である沢田明人先生です。これならどうですか?賀茂代表」


 生徒たちの捜索は東雲優と、沢田先生の二人が適任だ。

 手が空いた俺は、やるべきことをしよう。

 教師として、一人のハンターとして。

※備考 (読み飛ばしOK)

 魔力測定 ゲートの級の測定に使用される値(目安)

 C級 0~5000

 B級 5001~30000

 A級 30001~99999

 S級 100000

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