記憶の断片 塊
――???視点――
この空間にどれほどの時間、存在しているんだろう。
黒一色で、他に何もない空間。
なのに、不思議と居心地は悪くない。
「……」
二つの光が私に近づいてくる。
この空間に来て私には日課のようなものができた。
それは――
「今日はどんな話をしようか?」
「「……」」
私の記憶にある物語を、二つの光に読み聞かせることだ。
「私の国の昔話?」
「「………」」
もちろん二つの光は喋ることはない。
意思を持っているかも定かではない相手に物語を読み聞かせる。
客観的にみれば変な関係だ。
ただ、最近は光が考えていることがなんとなくわかるようになってきた。
もちろん思考じゃない。
感情だ。
嬉しそうだったり、悲しそうだったり。
そういう感情の機微が少しだけわかる。
実際に、今二つの光からは喜びがなんとなく伝わってくる。
これは、興味を示している証拠だ。
「よし、今日は私の国の昔話…『人形姫と冒険者』にしよう」
そうして私は語りだした。
「この話はね、感情を失った貴族の令嬢が、一人の冒険者と出会ったことで感情を取り戻していくっていう物語なの。では…、昔々――」
そこから私は長々と話していた。
二つの光は、話しが終わるまで動かない。
よほど集中して聞いてくれているのかな。
「――でした。お終いお終い」
話し終わる頃には、二つの光の揺らぎが強くなった。
どうやら、気に入ってくれたみたいだ。
突如、片方の光が弱々しくなった。
「?」
二つのうち一つの光は、私たちに比べ淡い輝きしか見せない。
それなのに、時々もっと光が弱くなる。
私は不安だった。
その光はそのうち、この闇に取り込まれてしまいそうで…もう、二度と会えなくなる、そんな気がしてしまうから。
ふと、この空間に見知らぬ複数人の声が響いた。
「み…子……です」
「う……」
「…ま…か……」
はっきりと聞き取ることはできない。
でも、嫌な予感は徐々に強くなっていく。




