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かつて存在した英雄たちへ ―継がれた意思の行方―  作者: Oとうふ
クラス対抗戦編

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16/61

接敵

 ほぼ当てずっぽうだったが、運が良いことに3組の生徒を発見した。

 すぐさま走るのをやめ、物音を立てないよう慎重に移動する。


「2組が来る前に待ち伏せするか。どうせ向こうも俺たちと1組の位置を把握してんだろ」


 そっと木陰から会話をしている二人の男子生徒を観察する。


「そうだな。ただ、2組の奴ら1組方面へ攻めに行ったなら…」

「まさかまさか、2組に強いやつとかいたっけ?」

「んー、実際見たわけじゃないけど明石は60、長石は70越える魔力量だったらしいぞ?」

「へぇー。あ、そういや聞いたわ。噂になってたもんな」


 美香のようなヤバイ雰囲気はしない。

 刀の鞘に手をかけつつ、周囲の様子を確認する。

 気配も物音もしない。

 正直、ここで戦ってもいい。

 でも、3組が3km圏内にほぼ全員いる現状で、一人の脱落ですぐに全員が…ここに……。

 

(いや、これは使える)


 刀を抜き、高く跳躍する。


「っ!?おい!後ろ!!」

「え?」

「はっ!」


 刀を振りぬく。


「ぐぅわ!」


 片方の生徒に直撃し、障壁は一瞬で緑から赤色に変色した後、砕け散る。

 その勢いを維持したまま、もう片方の生徒の障壁も割ろうとしたが、さすがに回避された。

 

「誰だっ!」


 コアが振動したため、画面を確認する。


[3組の吉田健司の障壁コアの破壊を確認]


 画面にはそう表示され、所有ptも2になっている。

 

「なるほど、こういう感じか」

「おい健司!くそ…」


 健司と呼ばれた男子生徒は、ぐったりと横たわっている。

 支給されている武器は刃が無いからといって、力を入れすぎるのも良くないのかもしれない。

 

「お前、何組だ?」


 どうやら相手は俺の顔を知らないらしい。

 試しに1組を装ってみることにした。


「俺は1組――」

「――違う。そいつだ!噂になってる2組の魔力9の奴!」

「えー…」


 障壁を割られ失格になった健司は、もう片方の男子生徒に叫ぶ。

 実質、死人のような立ち位置なのに、情報残していいのかよ…。


「第一、風見が言ってたろ。1組は天宮紗優と六谷以外は全員初期地点だって」

「え?そうなの」


 予想外の一言に驚くと同時に疑問が生まれる。

 なぜ、そんな情報を3組が知っているのだろうか。

 美香のメッセージにも、六谷に関連する報告しかない。

 まさか…結乃のメモにあった『スキル』が関係しているのか…。


「もう使うハメになるとはなっ!」


 目の前の男子生徒が空に向かって銃を撃つ。

 その隙に距離を詰め、障壁を割ろうとしたが、盾で防がれてしまった。


「くそっ!馬鹿力が!」


 体勢を崩しながら後退する男子生徒に追撃をしようとした瞬間、どこからか風を切るような音が聞こえる。


「…なんだ?」


 耳を澄まして、音の発生源を特定する。

 

「…これ、上……っ!?」


 視線を空へ向けると、無数の矢が見えた。

 

「嘘…だろっ!」


 正面にいた男子生徒は盾を上に構え、防御している。

 そのための盾か。

 

「はっ、残念だったな。お前は脱落だ」

「まだ決まってない」


 呼吸を整え、上空にある矢を注意深く見る。

 

(最初に降ってくるのは…あれか)


 刀を構え、矢を待つ。

 そして、矢が刀の射程圏内に入った瞬間、矢を弾いていく。

 1つ…2つ、3つ…。

 頭や胴体に直撃しそうな矢を優先して弾き落とす。

 その間、障壁コアの自動障壁機能が複数回発動していた。


「はぁ…」


 矢の雨を、どうにかやり過ごせたことに安堵しつつ、状況を確認する。

 掠ったのが少し怖かったが、障壁はまだ緑色と余裕がある。

 安心できたのはその一瞬だけで、俺の思考はすぐに嫌な結論を導く。

 弓矢での攻撃…、現代の流派で唯一弓術を扱っているのは…


「風――っ!!」


 背後から木が砕かれるような音がし、咄嗟に再度ステップで回避行動をとる。

 直後、ものすごい勢いで矢が真横を通り過ぎ、正面にあった木に握りこぶしぐらいの空洞を作る。

 

「勘、かな?良く避けたね」


 声のする方へ視線を向ける。

 そこには、黒髪のウルフヘアが特徴的で、手に弓を持った男子生徒の姿があった。

 流石の俺でも、彼のことは知っている。


「風見…辰馬」

「そうだよ。君は誰かな?」

「2組の東雲凪だ」

「へぇ、君がハルの親友か。ちょっと申し訳ないけど、脱落してもらうよ」


 弓を構える風見に近づこうと一歩踏み出す。


「風見、気を付けろ。あいつ、かなり動けるぞ…」


 やり損ねた男性生徒が、盾を構えて風見の横についた。

 厄介極まりないな。


「そうみたいだね。でも大丈夫。油断はしない」


 周囲に微かな物音と、人の気配…それも一人や二人じゃない。

 流石『十二天』。

 こんな目立たないし、魔力も9程度の生徒相手にも全力ってわけか。

 俺は腰の銃を確認し、薄ら笑いを浮かべる。


「油断?弓使いが前に出ておいてそれ言うか?」

「ん?」


 先手必勝という言葉は実に素晴らしいものだ。

 そう思いながら素早く銃を手に取り、銃口を風見へ向ける。


「――結乃、使わせてもらう」


 引き金を引いた瞬間、砂と無数の小石などが風見へ向かって放たれる。

 彼は咄嗟に障壁を展開した。


「っ!読まれたかっ!皆、攻めろ!」


 周囲の木陰から3組の生徒の姿が現れ、こちらへ武器を持って突撃してくる。


(1…2…3…4…5人か。ハルの姿はない)


 本来なら逃げるべき状況なのだが、あるものを目にしてから考えが変わった。

 結乃特製の銃の攻撃を防ぐために展開された障壁。

 その時、たまたま視界に入った風見の障壁コアは、結乃の物と同じ装飾がされていた。

 要は――

 

「狙うはリーダーだろ!」


 思い切り大地を踏み、風見の元まで接近する。

 他の生徒なんて知ったものか。


「なっ!はっや!」


 風見は矢を手に持ち、対抗しようとするがその行動は間に合わない。

 俺の刀が届く方が先――


「危ないっ!」

「!?」


 突如として現れた女子生徒は、俺に剣を振るってきた。

 風見への攻撃を即座に諦め、迫る剣を防御する。


「くっ…、嘘だろ」


 不意打ちに近い形だったため、完全に防御することができず、障壁にダメージが入ってしまった。

 障壁が黄色に変色したことから、一撃すら警戒しなければならない。

 それ以上に最悪なのは…


「辰馬、大丈夫?」

「ああ、助かったよ。唯」


 『十二天』風見辰馬と彩霞唯がそろってしまったことか。


「彩霞流『刻旋花こくせんか』。やっぱり本物は違うな…」

「ん?もしかしてうちの流派の人?」

「いいや。昔、師匠に彩霞流を教えてもらったことがあるだけで、正式には学んでいない。ある程度知識があるだけだ」


 彩霞は驚いた表情でこちらを見てくる。

 やはり剣士どうし、お互いの練度はなんとなく見抜けるか。


「へぇ…。辰馬…下がって」


 彩霞の顔は少しだけ険しくなっていた。

 

「えーっと、名前教えてもらえる?」

「東雲凪だ」

「東雲君ね。とりあえず、うちのリーダーがお世話になった分のお返しをするね」


 彩霞がそう言って剣を構えると、周囲の生徒たちが俺に近づいてくる。

 そう言えば周囲の生徒忘れてた…。

 これ、本格的にマズイいんじゃ…


「皆、彼は私と辰馬に任せて。プランBに変更だよ」


 彩霞の言葉を聞いた3組の生徒たちはこの場から走り去る。

 

(流石に俺一人に全員のヘイトは集中させてくれないか)


 ここまで目立つ行動をした理由の一つに、結乃たちに意識をヘイト向けさせないというのがあったのだが…抜かりないな。

 ただ…風見と彩霞が残ってくれているなら、向こうでも対処は可能のはず…。

 だからこそ、俺は自分のやるべきこと…風見辰馬を脱落させよう。

 あの弓術が、今の2組に向けられるのはマズすぎる。

 最優先で倒したいのだが…


「こっち見なよ。私だって、あなたの敵だよ?」


 風見を見ていた俺の視線の先に、彩霞が立った。


「一筋縄じゃ行かないよな」


 頬を伝う汗をぬぐい、気を引き締めた。



――結乃視点――


 

「東雲、早すぎじゃね?」

「そうだね。そろそろ追いついてもいいころだと思うんだけどね」


 私たちは東雲君の進行ルートから少しずれて、3組の転移場所へ最短ルートで移動していた。


「まだ走れますか?」

「あぁ、男子は問題なし」

「女子も大丈夫よ。そこまでヤワじゃないわ」


 皆、努力して『英専』に入学してきた事を再認識する。

 少し、甘く見すぎていたようだ。

 それはそれとして、つい先程、障壁コアの通知に3組の脱落者が表示されていた。

 東雲君が接敵した可能性が高い以上、私たちも少し急ぎ目に――


「なに…あれ……」


 長石さんが空を指さした。

 全員の視線がゆっくりと、上空へ向けられた。


「ん?なんだ、あれ…」


 はっきりとは見えない。

 何か棒のよう…な……。

 強く心臓が鼓動すると同時に、口を開く。


「皆さん、全力で移動しましょう。東雲君はおそらく風見さんと接敵しました」

「嘘だろ」

「マズいね。東雲君が脱落しちゃったら、風見君の警戒をしないといけない」


 長石さんの言う通り、東雲君が風見さんのヘイトを買っている今がチャンスだ。

 そこまで考えた時、脳裏にある作戦が過る。

 それは東雲君の賭けよりもはるかに重要なものだ。


「天宮さん?」


 考えこむ私を見て心配したのか、長石さんが声をかけてくる。


「すいません。……皆さんはクラス順位…1位を狙っていますか?」

「え?そりゃもちろん」

「うん、とれるなら…ね」


 私は一度深呼吸をし、慎重に口を開く。


「賭けませんか?私に」

※現在の得点

・クラス

1組 6p  残り9人  リーダー 天宮紗優

2組 2p  残り7人  リーダー 天宮結乃

3組 2p  残り9人  リーダー 風見辰馬

 

・個人 TOP5

1 天宮 紗優  6p

2 望  美香  2p

3 東雲 凪   2p

4以下は0pのため非表示


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