表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かつて存在した英雄たちへ ―継がれた意思の行方―  作者: Oとうふ
クラス対抗戦編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/51

避けるべき人物

 俺の発言で、この場のほぼ全員が唖然としている中、鍵谷と明石が口を開く。


「東雲、『祝福』持ちだったのか」

「え?じゃあ代償ってもしかして…」


 どうやら、代償という言葉と以前の魔力測定で俺の出した9という数値が全員の中でつながったようだ。


「大体予想はついてると思うが、俺の『祝福』は魔力量の大半を代償にした、五感と身体強化だ」


 結乃の様子を伺う。

 普段の結乃なら追求してきそうな発言だったが、特に何か言ってくる気配がない。

 俺に合わせてくれているようだ。


「……もう少し早くみんなに伝えていたら、あんなことにならなかったのに…」


 明石が小さく呟く。

 あんなこと…おそらく魔力測定の件を指しているのだろう。

 

「あまり目立つのが好きじゃないんだ。結果的には変わらないぐらい悪目立ちしてるけどな」

「あはは…」


 明石は「自覚あったんだ」と言い、苦笑いする。


「その話は置いといて。『祝福』があるから、魔力量の変化で戦力は変化しない。つまり、他の奴が動くよりは効率的だ」

「…たしかに」

「そうだな。というか、早く決めないと天宮紗優が向かってきてるんだろ?」


 鍵谷の言う通り、ここにいたら、そう遠くないうちに紗優達が来る。

 あの圧倒的なカリスマリーダーが率いる1組に奇襲、待ち伏せなんてされたら2組じゃ到底勝てない。

 良くて半壊、悪くて全滅だろうな。

 障壁コアを取り出し、結乃に確認をとる。


「これ、メールみたいな機能があるんだっけか?」

「そうですね。ただ、メールを送信する相手と離れすぎるとダメみたいです」


 結乃の見せてくる画面には、『メールの送受信は3km範囲内の同クラスメンバーのみ可能』とメッセージが表示されていた。

 本当にこの試験はタチが悪い。

 情報は手探りで、文明の利器の使用も最小限に制限されている。

 多くのプロハンターを輩出するワケだ。 


「その…、悪かった東雲」

「え?」


 いきなり謝罪をしたのは高山だった。

 どこか気まずそうに、髪をいじりつつ口を重々しく開く。


「私も少し、警戒しすぎた…というか…ひゃっ!」


 高山の頬を誰かの手が包む。

 驚いた高山は、可愛らしく悲鳴を上げた。


「ほら、東雲君。英子って可愛いでしょ?別に本気で東雲君を嫌ってるとかじゃないの。だから、ね?」

「ね?じゃない!あゆみ何してんの!」


 高山の肩に優しく手を置き、長石あゆみは微笑みつつ俺を見てくる。

 その視線は優しそうに見えて、どこか計画深さを感じる。

 全く、油断できない学校だ。

 

「誤解はしてない。高山は仲間思いって聞いたから、その警戒も当たり前の反応だ。だから、気持ちを切り替えて、作戦に協力してくれ」

「っ、わかった」


 クラスの雰囲気が少し和んだのがわかった。

 これはいい傾向だが、相手が相手だ。

 どこまでいけるものか…。


「東雲君」

「ん?結乃、どうした?」


 静かに横に立つ結乃に内心驚きつつ、表に出ないように冷静に訊く。

 

「少し時間…貰ってもいいですか?」


 結乃について行った先は2組の転移場所からそう離れていない森の中だった。

 そこで彼女は無言で砂をかき集める。


「え?何してんの?」

「見ての通りです」


 見ての通りと言われても……。

 複数の砂の山ができたあたりで、結乃は銃を取り出す。

 

「気になってたんだけど、それ本物?」

「いえ、対抗戦用なので、本物並みの殺傷能力はありませんよ」


 そう言いつつ、彼女は銃から3発分の弾を取り出す。

 

「……」

 

 結乃は片手に銃弾、空いている方の手で砂に触れる。

 次の瞬間、彼女の両手が発光する。


「なっ!」


 これは以前にも見覚えがある。

 結乃のスキル、『合成』を発動したときの光だ。

 反射的に閉じた瞼を上げ、状況を確認する。

 彼女が触れていたはずの砂は消滅し、片手に銃弾のみが残った。


「『合成』か」

「はい」


 結乃は無機質に返事をしつつ、手に残っていた弾を銃にリロードし、こちらに差し出してくる。


「えっ、それ俺用なの?」

「そうですよ。3組との交戦を想定するなら、これは役に立ちます」

「役に?」

「はい。私の『合成』で弾の内部に砂を込めました。引き金を引けば、砂を前方に拡散する疑似的なショットガンになります」

「ショッ…トガン??」

「威力は期待しないでください。せいぜい視界を妨害する程度が限界です。ただ、近距離なら障壁を壊す可能性はありますね」

「いや、え?ごめん、頭がついていってないわ」


 俺は頭の回転は速い方だと思っていたが、さすがに理解できない内容だった。


「すいませんが、ゆっくりと説明している時間は無いので、好奇心は抑えてください」

「…それは、そうだけど…。いや、そうだな。ありがたく使わせてもらうよ」

「はい」


 結乃のスキルは戦闘向きとは言えないが、応用が効きすぎる。

 シンプルに敵じゃなくて良かったと思う。


「箱の中には帯刀ベルトのようなものが複数ありました。移動を意識するなら取っておいたほうがいいと思います」

「そうだな。流石に刀と銃の両手持ちはキツいしな」


 そう言いつつ、ベルトを取りに行こうとした俺を結乃は引き止める。


「東雲君」

「ん?」

「先行は良いですが、無理と思ったら引いてください。後ろには私や明石さん達がいますので」


 彼女なりの心配というやつか。

 

「あぁ、分かってる。全力で頼るよ」

「はい」


 そう言って結乃に背中を向ける。

 頼る…か。

 いつぶりだろうな、こんな事言ったの。

 脳裏に優の背中が過ぎる。


「っ、集中」


 自分に言い聞かせるようにそう言い、頬を強めに叩く。

 まずは目の前のことに集中しよう。

 




 結乃と明石に後のことは任せ、俺は一人森を進んでいく。


「もう少し…右に寄ったほうがいいか…」


 走りつつ、進行方向を考えていたその時――


「っ!?」


 正面の木陰から、ほんのわずかな気配と物音がした。

 咄嗟に足を止め、鞘に手を伸ばす。


「誰だ?」


 強く鼓動する心臓の音、首筋を伝う冷や汗を嫌というほどに感じる。

 走ったからじゃない、本能が恐れを感じたんだ。

 

「すごいねぇ、なんでわかったの?」

 

 どこか浮遊感のある声の主は木陰から軽い足取りで出てきた。

 淡いピンク色のミディアムヘアと、どこか不穏さを感じる淡い紫色の瞳が特徴的な女子だった。

 見たことはある…確か3組にいた。

 誰だ…


「五感が鋭い方なんだ。で、俺の質問に答えてくれ。誰なんだ?」

「ひっどーい、私はあなたを覚えているのに、あなたは私を覚えてないんだ」

「覚えるも何も接点ないだろ」

「それもそっか。じゃ、改めて。私はのぞみ美香みかだよ」


 望…。

 ふと結乃のメモを思い出す。

 3組の魔力量が多く、不明な点が多いって結乃がコメントしていた人物だ。

 

「嘘だろ…」


 こんなピンポイントで会う事なんてあるかよ…。

 心の中でツッコミを入れるも、現実は変わらない。

 この状況、どうするのが正解なんだ…。


「私ってそんなに存在感ないかな?」

「いや、俺が周囲を見てなさ過ぎたのが原因だ」

「凪っちも確かに大変そうだよね」

「凪っち?…望――」

「美香って呼んでよ」


 なんだこの距離感は…。


「み…美香は何で俺に興味なんて持っているんだ?悪目立ちしてるからか?」

「んっとね、それもあるよ。でもさー、『自分は弱くて無能です』、『人生生きる意味が分かりません』みたいな顔を毎日飽きもせずしてれば、気にもなるよ?」

「は…?」


 思考をする暇もなく、美香は木の枝を投げてきた。


「っ!」

 

 木の枝は俺の頬を掠め、背後に飛んでいく。


〈ガァ…〉


 何かの鳴き声が聞こえたと思ったころには、美香は俺の目と鼻の先にいて、剣を喉元に突き付けている。 

 

「ほーら、ね?動揺しすぎだよ」

「…なんで寸止めなんだ?もう少しで、俺を倒せるのに」


 そう問いかけると、美香はそっと俺の耳元で囁く。


「…刀を握るほんの一瞬、凪っちってさ、どうしてそんな苦しそうなのかな?」


 呆気にとられた俺の体を美香は押し、距離をとった。


「私、別に対抗戦に興味ないんだ」


 理解が追い付かなかった。

 彼女の目的が、言動の裏にあるはずの真意が一切見えない。


「でもね、楽しめそうなものを見つけたよ。ポケット、触ってみて」


 美香の指示通り、ポケットの中に手を突っ込んでみる。


「は?」


 そこには俺のじゃない障壁コアがあった。

 

「どういうつもりだ?」

「深い意味はないよ。ただ、私が楽しみたいだけ。凪っち、私のコアの分、ちゃんとこの対抗戦を面白い結果にしてね」


 そう言って、どこかへ歩き去ろうとする美香を引き留める。


「美香」

「ん?」


 彼女の行動の意味を訊く行為が無駄というのは理解できた。

 ただ、気になることがある。


「コアを渡したの、なんで俺なんだ?対抗戦に興味がないなら、適当にクラスに協力するとか、手っ取り早く他のクラスの戦力を削ったりとか、美香ならできたんじゃないのか?」


 一瞬にして美香の雰囲気が変わったように感じた。


「だって…障壁なんてあっても…」


 喋り始める美香は徐々にこちらへ振り返る。

 そして、先ほどの美香からは想像もできないほど、鋭く冷たい視線が俺を射抜く。

 

「私、殺しちゃうから」


 視線同様、その声は冷めきっていた。

 無感情とは違う、憎しみのようなものを薄っすらと連想させる声だ。


「あ、凪っち。障壁の手動発動は知ってるでしょ?」


 一気に美香は元の雰囲気に戻る。

 

「ん?凪っち聞いてる?」

「あ、あぁ…。なんかこのボタン押せばいいんだろ?」

「そうそう。じゃ、頑張ってねー」


 姿が見えなくなるまで美香を見届け、先程鳴き声が聞こえたあたりへ視線を向ける。


「うわ…」


 そこには喉元を木の枝で貫かれたカラスの死体があった。

 美香の異常性を再度実感しつつ、ふと小さな疑問が生まれる。

 

「なんで美香、単独行動してるんだ…」


 彼女から受け取った障壁コアの画面を確認する。


「っ!」

 

 障壁コアの所有Pt数を見て、息をのんだ。


[望 美香 2p保有]


 俺の知る限り、通知に合った失格者の名前は全部で4人。

 そして、佐藤達を除いた脱落者は1組の六谷ただ一人だけ…。

 

「まさか…」


 脳内で情報が繋がっていく。

 3組方面へ向かっている最中での出会い、メールの送受信可能な3kmという範囲、望美香の2ptの所有…。

 メール画面には、一通のメッセージの送信履歴があった。

 宛先は彩霞唯…内容は――


『1組の六谷君を倒したよ。方角的には草原が1組っぽい。あとは任せたよー』


 そして、メールの送信先を指定する画面では、3組の生徒ほぼ全員に送信可能という表示が出ていた。


「くそっ」


 コアを即座にポケットに突っ込み、走りだす。

 

(何が対抗戦に興味がないだ。MVPじゃないか!)


 3組が2組方面へ移動すると仮定して、現在地を予測する。

 これでもし、俺が3組を見つけることができなかったら――


 ――2組は全滅する。





※現在の得点数 確認用(読み飛ばしても問題なし)


・クラス順位

1組 6pt

2組 0pt

3組 2pt


・個人 TOP5

?位 望 美香 2pt


 6pt不明

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ