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理科部冒険記NEXT  作者: Taku-3
襲撃編
7/22

第七幕・LIVE

「すみませーん!浴室で"スペシャライズド氷山サウナ金魚すくい"してたら浴槽が蒸発してしまって…」

「何ぃ!?"スペシャライズド氷山サウナ金魚すくい"だと!?何故私も混ぜてくれなかったんだ!」

「何なんですか"スペシャライズド氷山サウナ金魚すくい"って!何がどうスペシャルで氷山でサウナなんですか!」


…ともかく、テレビを付けるなり映ったのは緊急速報だ。


画面右上のテロップには"王都陥落"の文字。


「9万、"スペシャライズド氷山サウナ金魚すくい"はいいからテレビを見るんだ。」


「…王都……陥落……?」


『…国王夫妻は既に海外に亡命され、襲撃隊との応戦に当たった王国騎士団は壊滅状態であると、先程警視庁からの発表がありました。

王都の日真田キャスターと繋げます…

__日真田さーん?』


中継映像は数秒のノイズと砂嵐の後、途切れた。


『…現在、通信が不安定なようです。

繋がり次第お伝えします…。』

アナウンサーは何かを悟った様子で、カメラの前に曇った表情を見せた。


「…どうやら、状況は想像以上に深刻なようだ。」

リカブさんは重い表情を浮かべ、呟いた。


・ ・ ・


「…やはり、どのチャンネルもこの話題で持ち切りですね…。」

「残された時間は短い、という事か…。」

そう言いつつ、リカブさんはチャンネルを切り替える。


『…魔術学会の声明によりますと、デキ市内で死亡したモンスターの体内から新型の"魔導兵器"と見られる物が確認されたとの事です。』

「……?」

「……!」

9万職員さんとリカブさんが前のめりになってニュース画面を凝視する。


「…?

何ですか?その…"魔導兵器"と言うのは?」

リカブさんはテレビから僕の方に視線を逸らし、話し始めた。


「魔導兵器は…そうだな…。

"魔法を原動力とした道具や兵器"の事だ。」


「そんな物が…。正にファンタジーですね…。」

感銘を受ける僕の横で9万職員さんが話す。

「この家の給湯器も魔導兵器ですよね。」

「へぇ…。……この家の給湯器!?」

「よく気付いたな9万。

この給湯器はコードレスな上、10秒で水を沸騰させる事の出来る"魔導給湯器"だ。

電気代もかからないからお得だぞ。」

「凄いハイスペック…。

僕の世界にも欲しかったなぁ…。」

この世界の技術力から夢を広げつつ、給湯器で淹れたばかりの紅茶を口にする。

「…コレって、かなりの高級家電ですよね?

リカブさん、案外お金持ちなんですね。」

9万職員さんが紅茶を啜りながら言った。

「まあ、訳あって金には困っていないからな。」

「…? …訳あって…?」

「そんな事よりテレビだ。学会の専門家が話し出すぞ。」


『…魔導兵器がモンスターの体内から発見され事から、これらは魔王軍によって開発された物と見られ__』


「魔術学会って、そのまんま魔術の学会って解釈で良いんですか?名前だけは耳に覚えがあるんですが…。」

「まあな…だが、魔術の事に関しては9万の方が詳しいからな…。」

そう呟きつつ、リカブさんは9万職員さんの方をチラリと見た。

「…えっ?私が解説する流れですか?」

「頼む」

「お願いします」

「良い機会だ、教えてくれ」


「魔導学会というのは、"魔術を研究する魔導士や研究者の集まり"でして…

神に準ずる存在とされる"賢者"の子孫によって創設された団体とされております。」


「"神に準ずる存在"ですか…そんな物が…。」

「"賢者"の話は子供の頃童話で耳にしたな…」

「俺は無神論者だし、"賢者"も存在したとは思えないけどな。」


「「………?」」

唐突に背後から聞き覚えの無い声が流れた。

怪訝そうな様子のリカブさんと共に振り返る。

「……えっ…?誰ですか…?」

「不審者だァーーーッ!!!」

「待て待て待て!怪しい者ではないんだ!」

不審者(?)はロケット砲を構え出したリカブさんを慌てて静止する。


「…この人、リカブさんのお知り合いでは無かったのですね…。ずっと前から居たんでてっきり…。」

「何だと9万!?何時から居たんだ!?」

「…そこの娘が"スペシャライズド氷山サウナ金魚すくい"をし始めたタイミングには既に来ていたさ…。鍵も開いていたからな…。」

リカブさんはますます焦った様子だった。

「鍵がかかっていなかったのか!?

最後に家に入ってきたのは誰なんだ!」

リビング中の視線が一点に注がれる。

「…私だ。

…くっ…戦士失格だ…。甘えた防犯意識で、不審者の侵入を許してしまうなど…。」

「まあまあ…元気出して下さいリカブさん!

僕も鍵の閉め忘れ位しますから…」

「何ぃ!?ならんぞヨシヒコ君!

不用心が過ぎるぞ!」

「やっぱ元気出さないでいいです…。」


「…では、続けていいか?」

「あっ、はい。」

「俺は"サンダ・オ・マワリ"だ。

魔王軍対策本部にて警部をしている。」

僕達が不審者だと思っていた渋い男性は、

警察手帳らしきものを取り出した。


・ ・ ・


『我々魔術学会は、発見された魔導兵器を

"魔力の種子"と名付けました__』


「勇者……ヨシヒコ少年で良かったな?

テレビの音量を上げてくれないか?

耳が遠いものでな…」

「あっ、了解です」

「…先程は失礼した。マワリ警部。

まさか警部だとはつゆ知らず…」

バツが悪そうにリカブさんが警部に話しかける。

「まあ、家に知らない奴が上がり込んでたら、割と正しい反応だろうさ。

それと、この前は部下が世話になったな。」

「とんでもない!アレは我々の起こした事故で…"世話になった"などと感謝されるような事では…」

「事故…ゴールド免許……ヴッ…」

倒れ込む9万職員さんを他所に、2人の会話と学会の中継は進行して行く。


『"魔力の種子"は、紫がかった真珠のような見た目が特徴で、体内に埋め込む事により

"圧倒的な力"と引き換えに"魔王への忠誠"に縛られる…という物であると現段階では結論付けられています。』

学会の研究者が話し終え、インタビュアーへ発言権が移る。

『魔王軍のモンスター達はこの魔導兵器によって圧倒的な力を振るっていた…という認識でよろしいでしょうか…?

王都が陥落に至ったのも…?』

『ええ。魔力の種子が影響していると見ていいでしょう。

それにしても、これは最早"魔導兵器"と呼ぶよりも…


"呪い"と呼ぶ方が相応しいでしょうね…。』


・ ・ ・


「圧倒的な力と引き換えに得る呪い…

そんな童話がありましたねぇ…。」

「9万職員さん?いつの間に起きて…」

「さて、雑談なら後にして貰おうか。

俺がここに来た理由は、"この事"を伝える為だ。


勇者一行、もう時間が無い。

先程、魔術学会から警視庁に"王都からモンスターが撤退した"との発表があった。

中継で発表したような調査を行えたのもその為だが…。」

僕は、息を呑んだ。テレビ中継の内容と照らし合わせれば、マワリ警部の言おうとしている事に察しが付いてしまったからだ。


「魔王軍は既に王都を破壊し尽くし、他の都市へと襲撃を行う手立てを立てている事だろう…。


例の文書はもう不要だ。直接答えを聞きに来た。」


「勿論、やります。」


「…まあ、断られても困るしな。

その答えが聞けて良かった。」

警部は背を向け、玄関へと歩き出した。


「恐らく奴らの目的は人類の殲滅だ。

いずれこの村にもやって来るだろう。


明日の午前4時、戒厳令が発される。

そのタイミングから、

君らには村周辺の警備を頼む。


これが集合場所だ。頼んだぞ。」

警部は一枚の地図をヒラリと投げ、去っていった。


To Be Continued


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スペシャライズド氷山サウナ金魚すくいのせいで話が頭に入って来ない…((
初 手 か ら 伝 説
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