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理科部冒険記 〜実験結果は異世界転移〜  作者: Taku-3
第1部 理科部冒険記NEXT
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第50幕・寝ても醒めても

「…君の分の布団が用意出来た。今晩はよく休むといい。」

マワリさんは、制服から寝巻に着替えながら言った。


「ありがとうございます、マワリさん…。」

顔中が絆創膏だらけになった僕は、ゆっくりと布団に潜り込む。


何だか今日は…疲れた…。

とても過酷な1日だった気がする…。


過酷なのは今日に限った話ではないが…それは今どうでもいい。


まるで…身体が布団に吸い込まれていくかのようだ。

意識が、みるみるうちに暗闇の底へと沈んでいく――


「明日は4時に起こす。夜明けと共に訓練を開始するからな。」


…聞き捨てならない発言が耳に入った。

もしかして、既に夢の中に居るのか…?



・ ・ ・



『――ほら、あの班だよ!』


見覚えのある机を前に、椅子に座り込む僕の耳に声が届いた。


『うわ〜、あんな埃っぽいトコで作業してるよ…」

『ビジョンの見えない研究に固執して自爆した訳でしょ?惨めだよね〜』


…扉の前に、名前も知らない先輩達が貼り付いていた。

彼らは、わざと僕達に聞こえる声量で話しているようだった。


『…無視しなさい。』

班長は扉から、そして僕達からも目を背けつつ言った。


『きっと私達は、これからも沢山の壁に…失敗にぶち当たる…。陰口の1つや2つで立ち止まってちゃ、キリが無いわ。』

顔を僕達の方に向けないまま、班長は呟いた。


通谷先輩は何も言わずに、班長にハンカチを差し出した。


『…要らない。』

班長は、通谷先輩の手を押し退ける。


『誰だって、泣きたくなる時はあるっす。無理して強がらなくてもいいんすよ。…俺達は、班長の涙を受け入れる為に居るんすから。』

通谷先輩は再び、ハンカチを握った手を突き出した。


『そうじゃなくて、アンタ清潔感が無いし…悪いけどハンカチを借りる気が起きないわ…。』

『俺も泣いていいっすか???』



『…それにしても、可哀想だよね…。』

扉の外から、再び声がした。


『バカ2人に巻き込まれて旧理科室で活動してんだろ?あの新入生…』

『部活動引退までココで活動するとか、懲役刑も同然じゃん…!ホントに可哀想だよ…。』



…"可哀想"…?



…僕が、可哀想な人間…?


…そんな筈は無い。だって僕は――



(「僕は…勇者になります!」)



 ――自らこの道を、選んだ筈じゃないか。



・ ・ ・



「――おき………ひこ……ん……」


「――起きろ!ヨシヒコ少年!」



…誰かが僕の身体を揺すっている。


僕は重い瞼を開いた。

窓ガラスから入り込むオレンジの陽光、そして制服に着替えたマワリさんが視界に映る。


…きっと、まだ夢の中だな。


猛烈な眠気が、僕の瞼を押し下げた。



「待て待て…今一瞬目を開けてただろう!?二度寝するな!起きろ!!!」


突如、僕の身体を覆う布団の感覚が消えた。途端に冷たい空気が流れ込んでくる。


薄目を開けると、マワリさんが僕の上から掛け布団を引き剥がしていた。


「うぅ〜っ……眠い…寒い…」

「"戦い方を教えて欲しい"と言い出したのはそっちだろう…。さあ、早く外に出るぞ!」


ゆっくりと身体を起こす僕を前に、マワリさんは玄関を指差していた。



・ ・ ・



紅に染まる空。

燦然と輝く太陽が、地平線から顔を出している。


ふと振り向けば、そこは暗闇。

微かに星が見える、藍色の夜が残っている。



 ――時刻、午前4時。


まさに地獄のような特訓が、始まろうとしていた。



…寒い。


暖かい日光の代わりに、冷風が身体に纏わりついてくる。


「流石に冷えるな…昨晩は雪も降っていたし…」

マワリさんは空を見上げて言った。


「マワリさん…何もこんな朝早くから特訓しなくても良くないですか…?」

僕は、そんなマワリさんの背を見て問いかける。


「否、そうはいかない。この街は停電中…日没後は暗闇で、碌に活動する事は不可能だ。だから、日が出ている時間を最大限に活用する必要があるという訳だ。」

「なるほど…確かに昨晩は、一歩先も見えない位でしたからね…。懐中電灯が無ければ、どうなっていた事か…」

僕は頷きながら、昨日の暗闇を思い返した。


「加えて、暗闇に乗じた犯罪行為も多数報告されている。…警察では対処しきれない程だ。」


苦々しい表情を浮かべるマワリさんの言葉には、この上無い説得力があった。

…何故って、昨晩遭遇したからだ。"犯罪行為"に。


この期に及んで、モンスター以外が脅威になってくるとは思いもしなかったが…。


「…魔力の種子なんか無くても、人間はモンスター(・・・・・)になってしまうんですね…」

「全くだ。これから背負う大荷物も、犯罪者共に目を付けられては厄介だな…。」


…"大荷物"?どういう事だ?


そう思ってマワリさんの足元に目線を移すと、そこにはリュックが置かれていた。


ただのリュックではない。

僕の上半身の倍近いサイズがある、非常に大きなリュックだ。


僕がリュックに目を向けている事に気付くなり、マワリさんは口を開いた。


「――重りを仕込んだ鞄を背負い、街中をパトロールする…それが第1の特訓だ!」



To Be Continued

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