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第5幕・迷い込んだ世界

【通谷 昴の!前回のあらすじコーナー!】

「…普通に前回読めばいいんでねえの?」


(完)


・ ・ ・


「…コレで全ての材料が揃うわ。」

班長はそう言うと、胸元に抱えた鞄からリチウムイオンバッテリーを取り出した。


バッテリーは今にも爆発しそうな程に膨れ上がっており、何かが焦げるような臭いを漂わせている。


「や…ヤバくないですか…?今にも発火しそうな膨張具合ですけど…。」

僕はバッテリーの有様を見て、つい困惑の言葉を口にした。

「ホント…どんだけ使い込んだらこうなるんすか…。」

通谷先輩も同じような反応だ。


「…コレは私のお父さんが使ってたの。好奇心の強い人で…しょっちゅう旅とかに出てたから…。」

班長は、手元のバッテリーを見つめながら話した。

「へぇ〜、親子仲とか良い方なんすか?」

通谷先輩が話に食いつく。

「…全然。あの人、家に居る時間はほとんど無くて…直接話すことも滅多に無かったもの。だけど……」

「だけど…?」

通谷先輩は話の続きを伺うように呟く。


「…バッテリーの件で…話すきっかけが出来て…ちょっとだけ嬉しかった…かも…。」

班長は少しだけ顔を紅潮させて言った。


「いや〜、親子仲が良さそうで何よりっすね〜!こんな嬉しそうな顔してる班長、初めて見たっすよ〜!」

そうノリノリで話す通谷先輩は、完全にニヤけ切っている。

…正直こっちの方が嬉しそうにしている。


「う…ウルさい!嬉しかったって言ってもちょっとだけよ…!ちょっと…」

(この2人も…何だかんだ言って仲良さそうだな…。)

僕はそう思いつつ、班長が手に握っているバッテリーに目線を送り、呟いた。

「…それで、あとはそのバッテリーを入れれば…。」

「ええ、実験開始の準備は済む__」


バチィッ!!!


「えっ?」


ボッ!


__何か聞き慣れない、それでいて明らかに危険そうな音が響いた。


…目線の先にあったバッテリーから…小さな火が上がっている…!


「うわっ!班長!バッテリーから火が!!!」

焦りのあまり僕はそう叫んだ!


「俺、消火器持ってくるっす!」

「…実験の工程では"全ての材料を加えた上で着火"と書いてあるわ。」

通谷先輩が部屋から飛び出すのを尻目に、班長は静かに呟いた。


僕の中で、班長の考えに予想がついた。

「は…班長…まさか…!」

「ええ…。…このまま放り込むわよぉ!」

「テロップゥゥゥゥゥ!!!」


【※良い子は真似しないでね】


ガシャリと音を立てて、バッテリーがボウルの中に落ちた。


………


………………。


バッテリーの火が、少しずつ大きくなり、メラメラと揺らいでいる。


「あれ…何も起きない…?」

火のように気持ちが揺らぎ、僕は不安からか、思わずそう呟いた。


「…このまま放置してたら火事になってしまう…残念だけど、通谷が戻ってきたら__」


バチィッ!!!


さっき聞いた、何かが弾けるような音が再び響く。

「消火を__」

班長が落胆を露わにしたその瞬間だった。



キィン___


耳を貫くような甲高い音と共に、激しい光が部室を埋め尽くした。


「うわぁぁっ!?」

班長の悲鳴が聞こえる。

「ま…眩しいっ!」

目を開けていられない程の強い光のせいで、班長の姿までは視認できない。


ボウルがあった場所から響く高音と共に、ドタドタと駆ける音が聞こえてくる。


「消火器持ってき…うわっ!何だコレ…眩しっ!」

「通谷先輩…丁度良い所に!」


「うわぁーっ!目がぁーっ!目がぁーっ!」

安心したのも束の間、扉の方向から通谷先輩の悲鳴が響いた。

「ジブリ映画のモノマネしてる場合じゃないわよ!!!

って…あッ…!?」


「班長……?」

僕は班長の声のした方を向いて、恐る恐る薄目を開いた。



…ボウルからは、まるで宝石のように、真夏日の清流のように、七色に煌めく光が溢れ出ていた。


「凄い……!」

僕は、思わずそう呟いていた。

「綺麗…まさか、こんな事が起こるなんて…。」

班長も続けて、光の中でそう言った。


「ちょっ…眩しい!マジで…何が見えてるんすか…!2人共!」

視界の端に、のたうち回る通谷先輩が居た気がしたけど、多分気のせいだろう。



「…何も見えないっすけど…何かバチバチ聞こえるし、焦げ臭いっすよ!多分ヤバいやつっす…!」

再び通谷先輩の声がした。

…次の瞬間、ボウルから青い稲妻のような物が飛び出し、天井を焦がし始めた。


「えぇぇっ!何コレぇ!?」

「コレはマズイわ…。

2人共、班長命令よ!逃げて!!!」

班長が叫んだ。


光がどんどん強くなる。


焦って立ち上がった時には既に、僕の視界は真っ白に閉ざされていた。



「_伏せてーーーーーッ!!!」



キィィィ___


ドカァァァァァァァァン!!!







・ ・ ・



「__りや……」


「通谷!大丈夫!?」



「は……班長…無事っす…。」

床に伏せていた通谷は、ゆっくりと起き上がりながら言った。


「髪型……アフロになってるけど…?」

「アッハッハ…そんな漫画みたいなァフロォォォォォ!?」

通谷は自身の髪に触れると共に、戦慄を露わにする。


「何なんすかコレ!凄い音したけど、ガチで爆発でもしたんす……」

通谷は困惑しつつも、目線を動かす。


「…か……………え…?」

「…ええ。ガチよ。

窓ガラスは全て吹き飛び、床板と天井は焼き過ぎたトーストみたいになっちゃったわ…。」

秋葉は遠い目をしながら言った。

「…そこに落ちてる木片は?」

「…さっきまで座ってた椅子よ。」


「……マジですか…。

コレ、俺達とんでもない大目玉喰らうんじゃないですか……?」

通谷の不安気な声に、秋葉は微笑を浮かべながら答える。

「…まあいいわ。あんな大爆発が起きても、班員が皆無事なら……」


「無事なら……」

秋葉の安堵の表情が徐々に曇る。



「…ヨシヒコ君は…どこ!?」


・ ・ ・


【理科部冒険記 〜実験結果は異世界転移〜】

Since2022


・ ・ ・



「う……うぅ……。」


一体何が起こったのだろう。

僕の頭はその事で一杯だった。


薄らと目を開くと、白い天井が視界に映る。

(保健室……それか病院…?

そうか…さっき爆発が起きて……それで…僕は……助かったのか……?)


(先輩達も一緒に居たはず…2人共…無事なのかな……)




「おっ、気が付いたようだな!」

視界の外から声がした。


男性…保健室の先生では無さそうだ…。

じゃあ病院の先生?それにしても随分フランクな口調だ…。


「おい君、大丈夫か!私の顔が見えるか?」

声の主らしき人が呼び掛けてきた。


ぼんやりとした視界が、徐々に明瞭になってくる。

「ああ…見えます……。」


「髪は金髪で……身長が高い……部屋着のようなラフな服装で…医療関係者じゃ無さそうな……」


「良かった、目は大丈夫そうだ。」

声の主、金髪の男性は言った。


「いえいえ…心配してくれてどうも…」


…ん?知り合いでも保健室の先生でも無くて、医療関係者にも見えないって……



「……だ……誰ですか………?」




To Be Continued

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