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理科部冒険記 〜実験結果は異世界転移〜  作者: Taku-3
第1部 理科部冒険記NEXT
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第40幕・寒空

『なあ…⬛︎⬛︎…。』


『…最…に……だ……頼みがあるんだ…。』




『――ヘイリーを殺せ。』




暴風に打ち上げられたインフィニティは、樹海の上空を飛んでいた。

地平線まで届くような、巨大な樹海――インフィニティは木々の一本一本を見下ろしている。


 ――風向きが変わる。

それはインフィニティに向けて吹き付けるように――


「アッハハハハッハハ…!!! 何処見てるのかしら?私から席を奪うんなら、そんな隙見せる余裕なんて――」

ヘイリーは暴風に乗って宙を舞う。


パキパキと澄んだ音が鳴ると共に、ヘイリーの右腕には鎌のように湾曲した氷の刃が形成される。

腕を降ろせば足元にまで届くような、巨大な刃が……


「――無いわよねッ!!!」

ヘイリーは素早く刃を振りかざした。


インフィニティが頭を後方へ傾けると、刃はインフィニティの顔面に沿って空を切る。


同時に空振った刃の切っ先が輝き、光の刃が分裂し、放たれる。


光の刃は地上の樹木に直撃すると共に、爆発を起こした。


続いて白煙が巻き起こると、それは地響きと共に直線上に拡大していく。


まるで嵐の大海の波のような白煙は、乱立する木々を呑み込んでいった。


間もなくして煙が晴れる。

そこに残されたのは一瞬にして積もり積もった雪と、それにより形成された、地平線にまで及ぶ直線だった。


積雪は目測で木の高さを超え、まるで雪で作られた山脈…それが木々を覆い潰していた。


「…いいでしょ?この魔法。季節問わずに雪遊びが出来るし、何より――」

ヘイリーは地上を、そして風に煽られ続けるインフィニティを見た。


「――コレでぶった斬れば…アンタを確実にぶっ殺せるからねッ…!!!」

ヘイリーはインフィニティの頭上目掛けて、刃を振り下ろした。


インフィニティは身体を捩って回避を試みる。

が、暴風がインフィニティの身体を縛り付け、自由を奪っている。


 ――刃がインフィニティの右腕を掠めた。


「アハハハ!当たった!当たったわぁ!!!」

ヘイリーの笑い声が寒空へと響く。


…インフィニティは気付いた。

斬られた右腕が、凍り始めている。


「――貴女の再生能力はかなりの物らしいわね。でも…凍ってても再生できるのかしらッ!!!」

その瞬間、ヘイリーを取り巻くように風が吹き始めた。風は徐々に速度を増し、渦を形成する。

ヘイリーは右脚を突き出し、渦巻く風に身を任せ、全身を高速で回転させる。


回転の速度が乗った脚は、まるで弾丸のような蹴りに変わり、インフィニティの腹部に襲いかかった。



破壊的な蹴りを浴びたインフィニティは、まるで隕石のように高速で落下し、地上の山のような積雪へと叩きつけられた。


粉雪が噴き出すように巻き上がり、積雪には人型の穴が開く。


「決〜めたッ!!! これからアンタを氷像に変えて…城の私の部屋に飾ってやるわ〜ッ!!!」

ヘイリーは高笑いと共に、右腕の刃を突き出して積雪へと飛び込んでいく――



「"ランページ・インパルス"」

 ――積雪の中から呪文が響く。

直後、巨大な衝撃波が空へ向けて放たれた。


一帯の空気が歪み、積雪の山は一瞬にして粉々になる。散らばった雪は高く吹き飛ばされ、樹海に円を描くように降り落ちていく。


「ぐッ……!?」

ヘイリーは衝撃波に呑み込まれる。

右腕の刃には無数の亀裂が入り、粉々に砕け散った。


ヘイリーが怯み、不意に目を閉じた瞬間、空を切る音が響いた。


 ――インフィニティが、眼前まで迫っている。振りかぶられた拳には、黒い光球のような物が握られていた。光は僅かな色彩を含んでおり、身の毛がよだつような不気味さを持っている。

背中には悪魔のような翼が現れており、インフィニティがどうやって上空に居る自分に接近したか、ヘイリーは理解せざるを得なかった。


「…"氷河障壁(グレイス・バリア)"!!!」

ヘイリーは咄嗟に呪文を詠唱する。

二者を隔つように、何重にも重ねられた水晶のような氷の障壁が出現する。


「――"空間破壊ディメンション・ブレイク"。」

インフィニティの拳が、そして黒い光球が障壁に接触する。


拳は一切減速する事なく、障壁をすり抜けるように貫いていく。


「…嘘……2,000度の熱にも耐える私の障壁が……!」


インフィニティの拳を包み込む程に膨張した光球が、ヘイリーの眼前に迫る――



「…ッ…大量絶滅吹雪エクスティンクト・ブリザード!!!」

ヘイリーは再び、城内で放った魔法を発動する。

叩きつけるような極低温の暴風が、インフィニティ目掛けて吹き付ける。しかし――



 ――インフィニティは、翼を折り畳む。

翼の先から、拳の光球と同じ色をした光が筋となって流れると、インフィニティの身体は暴風に逆らって前進していく。


(…避けれな――)


ヘイリーは暴風に乗って、僅かに身体を逸らした。

…しかし拳は、既に零距離まで迫っている。


拳はヘイリーの左肩に命中した。

グシャリという音と共に、左肩は跡形もなく消滅する。

流れ落ちる青紫の血液が、ヘイリーの左半身を染め上げ、接続を失った左腕が重力に従って落下していく。


「ぁ゛ぁ゛ッ……!!!」

ヘイリーは激痛からか、言葉にならない叫び声を上げた。


流れる冷や汗は一瞬の内に凍結し、顔の下に氷柱が形成されていく。


顔に皺と苦悶の表情を浮かべるヘイリーは、頭から地上へと落下していく。



インフィニティは、ヘイリーを追うように地上へと飛び込んでいく。


その時視界に入った地上は、完全なる銀世界へと変わり果てていた。



To Be Continued

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