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理科部冒険記 〜実験結果は異世界転移〜  作者: Taku-3
第1部 理科部冒険記NEXT
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第32幕・再起

城の扉を抜けた先には、2体のモンスターが、衛兵として立っていた。


「…道を開けろ!"四大魔人"の皆様のご帰還だ!」

衛兵の片方が高らかに叫んだ。


「アビス様、ウェルダー様、並びにプロミネンス様のご帰還である!者共、通路を開けろ!」

もう片方の衛兵も続けて叫ぶ。


通路の脇には、モンスターの軍勢が鎮座している。人の様な姿の者、翼の生えた者、3mはあるであろう筋骨隆々とした者…


何者であれ、逆らう事の出来ない絶対的な存在…それを前にしたかのような様相で、モンスター達は跪いたままでいる。


「…アビス様、その…抱えている女は一体_」

痩せ細ったモンスターが、アビスが抱える"白い髪の女"に目線を向けて問い掛けた_


_次の瞬間、大気が針を纏ったかのように、辺りに鋭いプレッシャーが広がった。

モンスター達は、目を見開き、かつ跪き下を向いたまま、冷や汗を流して硬直する。


それは突然の出来事だったが、原因は明白だった。

…アビスの見て取れる程の怒りが、今この状況を引き起こしている事が…誰の目にも、明白だった。


アビスは黙ったまま、問い掛けてきたモンスターを睨みつける。


ビキィッ!!!


すると同時に、少し湿ったような音が響き、モンスターの肌に亀裂が入った。

亀裂からは黒い血液が噴出する。


モンスターはまるで、断頭台に掛けられたかのような、恐怖に満ちた表情で俯いている。


「も…申し訳ございません、アビス様!私めの監督不行き届きでございます!どうかお許しを…!」

少し背の高いモンスターが、2名の間に割り入ると共に、頭を垂れて叫んだ。


アビスは目線をそのモンスターに移す。

すると今度は、そのモンスターの体表が、沸騰した水面の如く揺らぎ、裂け始めた。


「…ぁ…っが……!!!」

モンスターが悲痛な叫びを上げ、苦悶の表情を浮かべたのを確認するなり、アビスは黙ったまま廊下の奥へと歩み出した。


ウェルダーは笑みを浮かべたまま、2名には見向きもせずに、プロミネンスは不機嫌そうな表情で2名を横目で見た後、アビスに追従するべく進み続けた。


「…えっ…?何っ、何で……どうして…」

やせ細ったモンスターは何が起きたのか分からない様子で、虚ろな眼を泳がせたまま呟いた。

「…馬鹿者…!何故話しかけた!貴様は本軍の規律を乱すつもりか!?」

背の高いモンスターが怒声を上げた時には既に、2名の身体は血と冷や汗に塗れ、醜悪に変わり果てていた。


・ ・ ・


「本軍では…戦場などを除き、自身より階級の高い者に話しかける事を禁じております。」

音も無く歩きながら、アビスが言った。

「…何故だ。それは魔王様のご意思か?」

プロミネンスが問う。


「…魔王様と繋がりの薄い雑兵共が、軍の指揮を行う我々に対し、魔王様のご意思に反する行動を教唆する事を防ぐ為の規律なのです。

無論、魔王様のご意思ですとも…。」

アビスは廊下の先を見つめたまま、返答する。

背後ではウェルダーが、どこに落ちていたのかも分からない小石を蹴飛ばしながら歩いている。


廊下を進むにつれ、跪くモンスターの姿は疎らになっていく。


「…軍の指揮は、常に魔王様のご意思の下で指揮されるべき物。何しろ魔王様は…誰よりも秩序を重んじる御方なのですから…。」

小石が転がる音だけが反響する中、アビスは呟く。


「…ご理解、頂けましたかな?」

アビスはプロミネンスの方を向いてそう言うと、再び廊下の先を見つめて口を噤んでしまった。


「………ああ、理解した。」

プロミネンスは少し間を置いて呟いたのを最後に、場は再び静寂に包まれた。


3名のモンスターは気づけば、入口の扉に劣らない程に巨大な扉を前にしていた。


入口の扉の時のようにアビスが手をかざすと、重金属が潰れるような音と共に扉が動き出した。


・ ・ ・



…朦朧とした意識の中、確かな感情がその姿を示す。


私は……帰らなくちゃ…。


帰らなくちゃ……いけないんだ…!


…そう頭で思い続ける内に、誰かの声が聞こえてきた。


『…なあ、お前。』


『そこに座ってるお前だよ。お前。』


その声には聞き覚えがあった。


『外は寒いだろ?早く家に帰りな。』


帰る…そうだ、私の帰る場所は……!








「 お前の帰る場所は、もう、無い。 」






「……!?」


深い闇の中、目が覚める。


背中に伝わる冷たい感覚。

(ここは……床…?何で…。)




寒い。


最初に感じたのはそれだった。


溺れてしまいそうな程に深く広い暗闇。


その中に見えた無数の紫色の炎は、闇を照らすどころか助長しているようにすら見える。


顔を上げると、綺麗なステンドグラスがあった。


そこから差す薄紫の光は、冷や汗が出る程に幻想的で、根源的な恐怖すら感じさせる…まるで、街を焼く大火災の炎に似通った光だった。



「…久しぶりだな。」


声がした。


それが人の声では無い事を、私は容易に確信した。


身体が震える。心臓を握られているかのように動悸がする。


恐怖を全力で押し殺して、声がした方を目線を向ける。



…目線の先には、ステンドグラスの逆光に照らされた"声の主"の姿があった――



「 …久しぶりだな。"インフィニティ"。 」



「……貴方が…魔王…ヴェンジェンス………!」



To Be Continued

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